表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第二章:集結・天
45/168

45:奪われた!?

 森にそびえる異様なまでの巨木。

 それを軸にした大規模なツリーハウス。

 これがキゴッソの王城だ。


「セージオウルッ! 大丈夫かッ!? 返事をッ!!」


 その根本を覆う壁のうちへ踏み込みながら、私は潜入役として潜り込んでいる参謀の無事を尋ねて叫ぶ。


 雷撃の衝突を見た私は軍勢を突き破り、城の周りにたむろさせられていた魔獣たちを蹴散らして、一番槍に踏み込んだのだ。

 もちろん自由にさせては危険なクレタオスは、バスタートルネードを帯びた拳で殴り飛ばしておいてある。文字通りに、はるか彼方にまで。

 そして後は任せろとのマッシュたちの言葉に背を押されて、集団と軍勢のぶつかり合いを後にして突撃を図り、今に至る。


 しかしそうして乗り込んだ私を迎えたのは、セージオウルの声ではなく、物言わぬ石像の集団だ。


 竜と獅子とフクロウ。


 個々の出来栄えに差はあるが、象ったモデルが一目で分かる。そんな石像たちが元は中庭だっただろう場所に整然と並べられていた。

 途中でセージオウルが見つかった報告があったからだろうか、フクロウ像は他の物に比べて少ない。


「……しかし、だとしたらどうして少ないだけなんだ?」


 セージオウル復活の報せは、鋼魔の斥候役を自称しているクァールズから行っているはず。

 だからもう鋼魔にとってフクロウ像は用済みだろう。集めたものをすべて壊している方が自然ではないか?


「いや、そのことよりも第一はセージオウル本人の安否だ」


 引っ掛かりは横においておいて、私は改めて潜入している本物の姿を求めて視線を動かす。

 合流して調査の結果を受け取ったらば、それに応じて動かなくては。


 そう考えてセージオウルを探す私の頭上で稲光が閃く。

 これに反射的に顔を上げた私は、翼ある機影二つが互いに電撃を放ちながら飛び交うのを見つける。


「ウィバーンかッ!?」


 賢者風の人型にチェンジしたセージオウルと天属性魔法を撃ち合っていたのは、緑色の飛竜策士。鋼魔の参謀ウィバーンだ。

 しかし彼はたしかネガティオンの命令で、出撃禁止令を出されてたはずだが?

 恐らくは隠れて出てきていた、ということだろう。


「ライブリンガーッ!? もうこんなところまで!? ならクレタオスのヤツはやられたってことか!? せっかくの策とイルネスメタルを無駄にしやがってッ!?」


 舌打ちしたウィバーンは、稲妻の投網をかわしつつ私へ渦巻く烈風弾を降らす。

 が、飛び退いたその先に待ち構えていた別のサンダーウェブにぶつかり、スパークする!


「うごがががッ!?」


 クモの巣にかかった羽虫のように、空中磔に悶える飛竜の策士。

 こうして敵が身動きを取れなくなったところで、セージオウルはヤレヤレと杖で肩を叩きながら降りてくる。


「無事で何よりだセージオウル」


「うむ。しかしいいタイミングだったぞライブリンガー。邪魔してくれたやっこさんの目を逸らすのに、もう一手欲しかった。こう思ってたところだったのでな」


 言いながら身ぶりに疲労を訴える余裕のあるセージオウルに、私は無事を確信してマックスボディの内側で苦笑する。


「それはなにより。ところで聖獣像は? 集められていたものの中に本物は混じっていたのか?」


「ホッホウ、あったぞ。空からアレを見つけて、いざ確保と言うところで、隠れていたあの飛竜の妨害を受けてな……」


 まったくたまらんわい。と言って、セージオウルが杖で指すのは、一体の竜の像だ。


 セージオウルが堆積物を落としたのだろうその姿は、ウィバーンに似通った四足有翼のドラゴンだ。

 しかし直線的なパーツで構成された竜の体躯は、飛竜のウィバーンよりも数段にガッチリ型で、翼があっても飛行向きではないように見える。

 そしてその分厚くたくましい胸部の中央。そこにはやはり、三分の一ほどを欠いた生命の石が輝いている。


「やれやれ、強行して正解だった。悪い予感と言うものは当たるものよ。まあおかげで我らがあくせくと探し回る面倒は消えてなくなってくれたわけだが……」


「それで、彼はすぐに復活可能なのか? 魂を、キミで言うグラウ・クラウを探す必要は?」


「ホッホウ。幸運なことにこのガードドラゴの場合はそちらも必要なさそうだぞ。これで欠けた分を補ってやれば目覚めるだろう」


 言いながらセージオウルはバースストーンを取り出す。

 これは私が、本物がいれば復活に必要になるだろうからと、言われて作戦前に出した物だ。


「コレを目覚めの一杯にくれてやろうと言うところでアイツに割り込まれてな。まったく空気の読めん輩よ」


 ぶつくさと呟きながらセージオウルは石化して眠り続けるガードドラゴへ一歩踏み出す。

 だがその瞬間、唸りをあげて近づく風切り音が私の聴覚に届く。


「ライブリンガーッ!?」


「この声はッ!?」


 私の名を叫ぶ女性の声。

 正々堂々勇猛果敢なこれに、私は反射的にシールドストームを帯びた剣を振り上げる。

 すると猛烈な稲光の槍が守りの刃とぶつかり弾ける。

 轟く音と共に飛び散った稲妻は、辺りの石像を無差別に穿ち砕く。

 爆発じみた落雷が収まったかと思いきや、私へ斬りかかるものが!

 スパークする雷光の刃を受けてみれば案の定。その持ち主は鋼魔の女騎士グリフィーヌだった。

 急降下に斬りかかってきた彼女は、ぶつけ合った刃もろともに私へ飛び込もうと押しつつ、そのバイザー状の目を軽やかに瞬かせる。


「嬉しいぞ、ライブリンガーッ! まさか懲罰仕事の最中に貴公と巡り合うとはなッ!? 不測の遭遇戦でなら堂々と切り結ぼうがおとがめ無しと言うものだ!」


「……ああ。強敵にかける言葉ではないだろうが、元気そうで私も嬉しい」


「んなッ!?」


 私の返した言葉に、喜色を露にしていたグリフィーヌはその目を当惑のリズムに明滅させる。


「うぐぉおッ!?」


 しかし私が正々堂々の挑戦を受け止めた一方で、セージオウルからは苦悶の声が。

 見れば石像の集団に突っ込まされて、瓦礫を含んだ竜巻の結界に囚われている。

 そしてそれをやったのだろう飛竜の策士は、未だ眠ったままのガードドラゴの石像を掴んでいる。


「いいぞグリフィーヌ! そのままライブリンガーを抑えておけよ!?」


「なに!? ウィバーンッ!?」


 グリフィーヌは思いがけぬ声を聞いたと、驚きの声を上げる。

 彼女には悪いが、この隙にはね除けさせてもらう。

 ウィバーンに聖獣像を渡すわけにはいかないのだ!

 そうしてウィバーンへロルフカリバーを投げつける。だがターゲットへ一直線の刃は、横合いからの衝突に弾き飛ばされてしまう。


 ウィバーンを援護した謎の影。この正体を確かめようと目で追えば、それは一羽の巨大なフクロウであった。


 金属質な巨大フクロウに、まさかとセージオウルを見る。

 しかし彼は瓦礫竜巻に封じられたまま。操られたりはしていない。


 この間にウィバーンはガードドラゴ像を掴んで飛翔する。


「持ち逃げなどされては!?」


 これの牽制に私はプラズマショットを撃つが、体当たりを受けて中断させられてしまう。

 ぶつかったまま組みついたのは二匹の獣。

 石の地肌を金属で覆いつつある竜と獅子だ。


「バンガード化させたのか!? 聖獣像をッ!?」


 イルネスメタルを植え付けられたことで動き出した石像たち。

 私のマックスボディに爪と牙とで組みつくこれらを急ぎ振り払うも、この間にウィバーンは本物のガードドラゴ像と共にすでに上空へ逃れていた。


「あばよー! ライブリンガー! せいぜい動き出した石像と戯れてくれよー!」


「逃がすものかよッ!!」


 勝利宣言を残して去っていこうとするウィバーン。セージオウルはこれを追って、急ぎ結界を破り飛び立つ。

 しかしその追跡の手を、三体のバンガード聖獣像がブロック。振り切ろうとするセージオウルを、まるで一個の意思で結ばれているかのごとき連携で阻み続ける。


 ここは私がその連携を崩すべきなのだろう。だが私の方もまた別の聖獣像たちに取り囲まれてしまっている。それも一組ではなく三組。合わせて九体ものバンガード聖獣像にだ。


 こうして思うように身動きできずにいる内に、ウィバーンはまんまとガードドラゴ像を持ち逃げに撤収。


 完全にしてやられた。

 聖獣像の奪い合いについては、今回は私たちの敗けだと認めるしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ