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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第二章:集結・天
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41:森そのものを相手取った脅威

 疾走する黒い影。それを追って振るった朝焼けの刃が割り込んだ魔獣を叩き切る!

 剣を受けた鹿に似た魔獣は角に帯びた雷を散らしながら、どう……と、地に伏す。


 群れ為して鋼魔にけしかけられたこの状況では、ラヒノスの時のように致命傷を避けるように気づかってとは行かない。

 戦う相手に遠慮するあまり、共に立つ仲間や背負った命を危険に晒しては本末転倒!


 ここは虐殺をやらせている頭、鋼魔のクァールズを打ち破るのが第一。それが出来れば残るは生き物。死ぬまで戦うのを望むものはほぼいなくなる!


 そう思って素早く駆け回る黒い影を追ってプラズマショット。村人を救助中の仲間に近づくのを牽制。

 そのまま連射して、射線にあった鹿と猪の魔獣の頭を揺さぶり昏倒させておく。


 瞬間、私の目の前にブラックメタルな豹の顔が迫ったのでとっさに剣を。しかしロルフカリバーは空と、その先にあった家を焼く火を切り裂くに終わる。


「なんてスピードだ!」


 影にすら届かせない彼のスピードに、私は完全に翻弄されてしまっている形だ。

 人命救助中の味方も近いのでマックスへ合体ライズアップはできないが、これではその隙さえ作れるかどうか。


「マキシローラー! マキシローリーッ!」


 しかしマキシビークルはコール。

 だが合体の機会をこじ開けるためではない。魔獣や、全焼状態の家や植物を踏み潰させて被害拡大を防止。その上でビブリオたちが逃げ込める盾とするための呼び出しだ。


 落着点から動いて並んで停車したその間にまずホリィが負傷者を担ぎ込んで。

 そこへ尾っぽの燃えた大猿が獲物だと躍りかかる。が、ガイアベアのラヒノスの張り手がそれを許さない!

 巨体の猿が宙を舞った間に、追加の怪我人を担いだビッグスとウェッジがビークルの影に滑り込み、そのままコンビの片割れは即席野戦病院の警護に、もう一方が救急搬送に飛び出す形を作る。


 私の意思を汲んだこの素早い対応は感動ものだ。が、感極まってクァールズを自由にさせてはいけないので、偏差撃ちにブレードウェーブ!


 本命相手には牽制にしかなっていないが、魔獣と炎を吹き飛ばせているので成果ゼロではない。


「しかしどうにか抑えられてはいるが……」


 同時に私もまたクァールズの対応に手を取られて、魔獣を巻き込み蹴散らすことしか出来ていない。

 いわゆる膠着状態であるから、こちら側へ流れを呼び込む一手を先に打たなくては!


 だがこんな私の焦りとは裏腹に、燃える村を囲う樹木がざわめき始める。


 これに私は反射的にプラズマショット。


 しかし額から放ったエネルギー弾はぺしっとばかりに叩き落されてしまう。

 しかし、それをやったのは腕ではない。細く長くてよくしなった、鞭のようなものが払ったのだ。


 蛇か何かか。

 頭か尾が複数に枝分かれした大蛇型の魔獣を予想して身構えた私の見ている先で、森が動く。

 飛び出してきたのは丸太だった!


 なんと、と驚きつつも剣で殴り落とした私に、次々と丸太が放たれる。

 それもへし折りギザついたモノではなく、鋭利な杭に整えたモノがだ。


 それらをプラズマショットと剣で迎え撃ち、かわしていきながら、私は丸太を投げつけてきている長細いモノが何なのかを解析する。


「まさかつる草ッ!?」


 その結果に、私は飛んできた丸太を薪割りに叩き切りながら叫んでしまった。


 私のボディを凹ませられそうなサイズと勢いの丸太投げをやっているのが、青々としたつる草だと分かれば声も出るだろう。

 しかし私の目は同時に、そのつる草に走った毒々しい緑色の光も捉えていた。


 イルネスメタルの影響、鋼魔らの言う尖兵化が確認できた瞬間、森を突き上げて山が生える。


「んなぁッ!? なんだいありゃあッ!?」


「オイオイオイ!? ハデ過ぎやしないかい参謀殿よッ!?」


 これにはマッシュばかりか、味方を得たはずのクァールズまでもが見上げて大口を開けてしまう。

 無理もない。森を乗せた大地その物が起き上がっているのだから。


 大量の土の絡んだ根っこと根っこがひとつの意志で束ねられているかのように互いに絡まり束ねられていく。

 さらに枝と枝。幹と幹までうねりねじれて、一つの形を組む。


 太い八足で大木の上に持ち上がったのは、巨大なアーモンド形の塊だ。

 絡み合った幹と枝。その隙間から葉っぱと金属光沢をのぞかせた巨体は、軋むような音を立てて割れていく。


 口のような大きな裂け目を中心に、鈍い緑の光をともした放射状の小さな割れ目を無数に開いた巨体は、地響きを鳴らしながら支えである八つの足を動かす。


「ホリィ、みんな! ケガした人たちを移して!」


 ぶつからずとも分かる質量の暴力。

 戦場になっているこの村を、我々も鋼魔もお構いなしに押しつぶしかねない迫力に、私はマックス形態への合体を決断する。


 クァールズも同感だったのか、すでに撤退しているようで姿が見えない。

 抑え続けるべき相手がすでにいない。ならば、大惨事を起こすだろう大物に集中しなくては!


 そんな私の判断に、ホリィとビブリオ、エアンナの救護班は魔法を全開にマキシビークルの間から離脱。

 それを受けて、私はマキシローラーとローリーを二台揃って森の怪物、フォレストバンガードへ突撃させる。


 地ならししながら突撃する大ビークルに続いて、私もロルフカリバーをその場に突き立て駆け出す。


 剣から地面を切り裂くように広がったバースストーンの輝きは、そこから高々と立ち上がり光の壁を成す。

 それに遅れて、フォレストバンガードが大小無数の裂け目から光弾を発射。

 村を飲み込む勢いで降り注ぐエネルギー弾だが、剣を軸にした結界が受け止め阻みきる。

 できるとは思っていたが、ぶっつけ本番で思い通りにいってくれてよかった。


 私が光弾の雨を掻い潜りながら内心胸を撫で下ろす一方、森の塊は毒々しい緑を強め、大きく息を吸うように溜める。


 いい具合に結界を破ろうとムキになってくれたこの間に、マキシビークルが円の軌道を描いて合体用のフィールドを展開。ロルフカリバーの結界と合わせて、村への豪雨となったエネルギー弾を防ぐ。


「ライズアップッ!!」


 その間に私はローリーのマックス下半身とローラーが変形したマックス上半身に格納、ドッキング。ライブリンガーマックスを完成させる。


「ダブルバスター……トルネードォオッ!!」


 そしてすぐさまに両腕のローラーを揃って左回転。渦巻く破壊エネルギーを二本の大竜巻にして放った!

 遠慮無しの先制打はフォレストバンガードの巨体を大きく削り、足として支える気根じみた部位もろともに吹き飛ばす。


 しかしえぐれた部位が毒緑に脈打ち輝いたかと思いきや、青々した蔓かケーブルか。そんなものが伸びては絡んで瞬く間に元の形を取り戻す。


「なんと森林らしからぬ再生速度か!」


 森林というのは、内包する生命力こそ大きいが、再生回復のスピードは遅いものだ。

 それがどうか、ほんの瞬きの間にほぼ全快にまで修復してしまっている。

 これは先代鋼魔参謀のバルフォットの合成機械獣形態の回復力を凌ぐのではないか。


 しかし驚異の自己再生能力があるとはいえ、いや凄まじい回復力であるからこそ、必要になるエネルギーは多いはず。

 今の調子で再生を繰り返せば、いずれ破綻も見えてくる。

 それよりも早くに森を暴れさせているコアに届くのならばなお良し。

 出し惜しみする理由などない!


 もう一度、さらにもう一度と私は再生を繰り返すフォレストバンガードと、奴の放つエネルギー弾を破壊竜巻で削り、抉る!


 こうして私が鋼魔の超大型尖兵と対峙し、マッシュ隊が負傷者とその手当てを担当するホリィチームを魔獣から守る形に分担する。

 しかしマッシュ隊も優秀だが、私を援護する形でなく、ラヒノスと共に彼ら自身も矢面に立つ形になれば負傷は避けられない。


 実際、傷つけられたウェッジに、ビブリオが治癒魔法をかけて手当てしている。


「みんな、ボク行ってくる!」


「行くって、ビブリオどこへ!?」


「もちろんこんだけ近くで騒いでるのに寝こけてるフクロウの聖獣を叩き起こしにさ! もう一人、せめてラヒノスと同じくらいに強い味方がいれば!」


「だとしても、一人でなんて無茶よッ!?」


 叫ぶやビブリオはグラウ・クラウを抱えて、制止の声も振り切り森の奥へ駆けて行ってしまった。

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