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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第一章:邂逅
19/168

19:踏みつぶしちゃいけないから!

「プラズマショットッ!」


 メレテ王都を囲む城壁。城の防壁から跳び跳びに移ったその上を走りながら、私は空に向けて額からのエネルギー弾を連射!


 天へ駆け上がった光の弾丸は、小さく固めた電撃と衝突して弾け散る。

 そうして町に被害を出さぬようにと、花火に変えて来ているのだが、しかしこれは……この電弾丸の狙いは――!


「はじめましてだな、ライブリンガーッ! 招待を受けてくれて嬉しいぞ」


「やはり私を誘い出すためだったか!?」


 翼で風切り急降下に迫ったフルメタルのグリフォンに私は身構える。


「ハハハ!? 察した上でか。ますます嬉しいな。まずは名乗らせていただこう、私はグリフィーヌ! 鋼魔の天空騎士、グリフィーヌとお見知りいただこう!」


 艶のある声で堂々と名乗るグリフォンの女騎士に、私もまた構えのまま礼を返す。


「すでに知っているようだが、こちらからも改めて。私はライブリンガー。人々の盾、鋼魔の敵だッ!!」


 名乗り返した私に、グリフィーヌは鋼鉄の鷲の顔に喜色を浮かべる。


「こちらの手荒な挨拶にも関わらず、丁寧な返礼痛み入る。力ばかりでなく礼にも通じた戦士とは、ますます気に入ったぞ!?」


「ということは、ここまで攻め込んできた目的はッ!?」


「無論貴公ただ一人ッ! いざ勝負ッ!!」


 宣言するなりに突き出されるグリフィーヌの爪に、私はとっさに身を振りつつスパイクシューター。


 しかしグリフィーヌもスパイクをすんでにかわして逆の爪。これを危うく凌いだ私の反撃に返しの嘴が!


「ハハハ! やるやる。見込みどおりだな! だがそちらもそうだが、こちらもまだまだ小手調べだぞッ!?」


 まったくご機嫌に爪や嘴を振り回してくれる。

 こちらはもう手一杯だというのに!


 いや、確かに彼女が言う通り、私にはマックス形態という全力の巨大戦闘形態がある。

 だがここではダメだ。

 もしここであの力を振り回せば……いや走り回るだけでも、今逃げ回っている人々を巻き込んでしまう。

 それはできない。絶対に!


 だがそれは、夢の中でマックス形態の戦闘を見てなお面白そうだと評していた彼女を相手にノーマルの私で相手をしなくてはならないと言うことだ。

 夢の中の様子と今話した限り、グリフィーヌ一人だけを見れば彼女を失望させるだけで済むだろう。

 だがそれは同時に、鋼魔全体を再び勢いづかせる結果にもなる。

 つまりはビブリオたちを、友人たちを再び危機に陥らせることになるのだ。


 これは負けられない。

 だが、考えてみれば条件はこれまでと同じだ。マックス形態をアンロックするまでの戦いと何一つ変わりはしない!


「投石機、撃てェーッ!!」


 そう自身を奮い立たせ、いざ鋭い反撃をというところで、私たちの方に岩が飛んで来る。


 当たれば私たちにも効くだろうそれはしかし、直撃コースには乗らずに城壁の外で重々しい音を立てる。

 しかしその一発だけでは終わらず、二つ三つ四つとヘタな鉄砲も数を撃てば当たるとばかりに、次々に放たれる。


 面制圧を目的とした岩飛礫に、私とグリフィーヌは格闘を中断して分散。それぞれに飛んでくる大質量の回避に入った。


 しかしいくら効果があるだろうとはいえ、乱戦状態に打ち込むものか?

 いや、それだけ私がキチンと味方と見なされていないと、それだけのことか。


「おのれ! 力の無いものがウロチョロと! 無駄な殺生をさせたいかッ!?」


 まずい!?

 私との戦いに水を差された苛立ちに、グリフィーヌがカタパルトに狙いを向けている!


「サンダー・クローッ!!」


「危ないッ!?」


 これに私はとっさに体を割り込ませ、グリフィーヌの爪が放った雷の刃を背で止める。


「……ッグ! 逃げて、下さい……!」


 電撃のダメージに膝をつきながら、私は投石機を使う兵士さんたちに避難するように願った。


「チィッ!? 中途半端な手出しをして戦いに水を差すくらいならば、黙って見ていろッ! さもなくば命を落とすぞッ!?」


 そんな私の願いを後押しする形で、これ以上の横槍と無益な殺生を嫌ったグリフィーヌが威嚇の声をぶつけて散らす。


 傍観か。死か。などと酷い脅かし方をすることもないとは思うが、それで人々が安全圏にまで退いてくれたなら結果オーライというもの。

 ここはグリフィーヌに感謝を告げるべきか。


「物騒な文句だが、驚かすだけで実際に手をかけずに済ませてくれたことはありがたい。感謝しますよ」


「フン! 自慢にもならぬ輩にウロチョロされるのが気に入らない、それだけよ!」


 感謝を告げつつ構える私に対して、グリフィーヌは鼻を鳴らして羽ばたき高さを上げる。


「横入りした弱兵を庇って手傷を負ったようだが、それも貴公の選択と武運! 手心は加えぬぞッ!!」


 轟ッ!

 そんな風音を聞いたかと思いきや、すでにグリフィーヌの、人型モードの顔が私の目の前に!?

 同時に私の腹部に電撃が斬り込まれる!


 この斬擊と風圧とで私が吹き飛ぶのに、グリフィーヌはすでにこの横をすり抜けていた。

 それもグリフォン形態へチェンジしながらに。


 城壁から叩き落とされ、大の字に広場へ落ちた私も、変形からの急発進で離脱。

 その直後に私の形にめり込んだ石畳をサンダークローが切り刻んだ。


「遠近両用、それでいて恐ろしいまでの切れ味とはッ!?」


 ボディに刻まれたダメージを見ながら、私はその使い勝手と威力に戦慄する。


「両断されずにいる貴公に言われてもなッ!!」


 さらに降ってくる電光の刃に、私はとっさに片輪上げに家々の隙間へ逃げる。


 だがグリフィーヌがいるのは空。

 どこから出るのか見下ろして、待ってましたと切り込んでくることだろう。

 ならば。と、私は壁を駆け上がりその勢いで跳ぶ!


 その正面には狭い路地を見下ろしていたグリフィーヌが。

 地を駆ける私が見せるには思いがけぬ動きだったか、驚きに目を瞬かせる彼女を目掛けて私はチェンジ。スパイクシューターをセット、プラズマショットを連射しながら飛び込む!


「いい手いい動きだがしかーしッ!!」


 だがグリフィーヌは一羽ばたきにバレルロール。渾身の突撃はかわされてしまう。

 ただ避けられるだけで終わらせるものかと、レッグスパイクも発射。が、狙いもつけずのものがまぐれ当たりにとは行くわけもなく、翼を翻した彼女の蹴りが私を吹き飛ばす。


 蹴り飛ばされた私は放物線を描きながら地面に激突!

 地に磔られ、ダメージに軋む体を起こせば、ここは城を支える丘だ。

 せっかく距離が取れたというのに、ここまで戻されてしまったか!?


「どうした? なぜ合体しない? 貴公はもうすでに追い詰められているのだぞ?」


 グリフィーヌに言われなくても、そんなことは私自身がよく分かっている。

 彼女は強い。マックス形態で立ち向かわなくては勝ち目は薄いだろう。

 だがそれはやってはいけない。あの力は、撤退する鋼魔族と魔獣たちの大半を薙ぎ払ったあの力は、都には大きすぎる。


「何を考えているのか知らないが……使わなければ死ぬだけだぞッ!?」


 そんな力を封じ込める私の思惑など知らぬとばかりに、グリフィーヌは再び高度を取る。


 おそらく、私がマックス形態へのライズアップをせざるを得ない状況にまで追い込むつもりなのだろう。


 だがあいにくと、ここで彼女の願いに応える訳にも、彼女の武勲になってしまう訳にもいかないのだ!


 合体を始めるでもなく構えを解かない私を見下ろして、グリフィーヌは仕方が無いとばかりに頭を振り、急降下態勢に入った!


「ならば望み通りもう一太刀浴びせて……ッ!!」


 降下の勢いを上乗せにした稲妻の刃を叩き込もうと迫ったグリフィーヌだが、その行く手に割り込んだ塊とぶつかる。


「んなッ!? 網!? それも鎖のッ!?」


 じゃらりと音を立てて広がった鎖網。それが重く絡んだことでグリフィーヌの勢いが鈍り、軌道が狂う。


「よっしゃあ! チュンチュン投網作戦大当たりだッ!!」


「今だよ、ライブリンガーッ!!」


「任せてくれぇえッ!!」


 どうやって調達したものかはともかく、マッシュが、ビブリオが、皆が作ってくれたこのチャンス。逃すわけにはいかないと私は背中と足のスラスターを全開にジャンプ!

 上昇する私自身の推力、そしてバランスを失したグリフィーヌの落下。

 この二つの勢いが重なる瞬間ジャストに鉄拳とスパイクシューターッ!!


「おぐわぁあッ!?」


 突き出したスパイクの威力に、グリフィーヌは苦悶の声を尾と引きながら吹き飛んでいく。


 私が膝をつく一方、彼女は絡みついた鎖網を切り裂き断ち切る。

 自由を取り戻したグリフィーヌは、空高くから私を見下ろす。が、すぐに私のスパイクを受けた翼と腕の中間地点をにらみつける。


「勝負は預けるぞライブリンガー! 次こそは本気の姿を引きずり出してやるッ!!」


 そして無視できないダメージから彼女は撤退を決断。痛むだろう翼をぎこちなく動かして空の彼方へ飛び去って行く。


 ここは逃げる彼女の言う通りにするしかない。

 私の方にも戦い続けるだけの、追撃を仕掛けるだけの余力は残っていない。

 それにここは、私だけを狙ってきた相手を撃退できた。それだけで充分なのだから。

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