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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第六章:災いの源
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163:無限の争いに幕を閉じるには

「……グランガルトもラケルも、来てくれたんだね」


 来るだろうことは分かっていたが、ずいぶんと気を持たせてくれたものだ。


 そう言ってやらないでくれ。彼らも勇気を振り絞っての決断だっただろうから。

 ビブリオらから伝えられた雲を隔てた洋上の様子に、私は機体の内側でグリフィーヌと揃って胸を撫で下ろす。

 私ももちろん、二人ならきっと勇気を持ってネガティオンへの恐怖を乗り越えてくれると信じていた。だがやはり本当に来てくれたと聞けば安心すると言うものだ。

 私はそんな気持ちを抱えつつ、バスタースラッシュでエネルギーミサイルとカノンを切り払い、白き魔王の刃をパワーアームのサークルソーで受ける。


「ほう。グランガルトとラケルが? 構わん。アレが従えてきた魔獣どももろともに叩きのめしてやれ」


 切り結んだネガティオンもまた、海上での戦闘の報告を受けて返信を。


「その内容はいただけないなッ!!」


 怒りに吠えながら振るった逆のパワーアームに、ネガティオンはアッサリと体ごとに刃を引いて回避。そこへ私は追撃の追尾サンダークロー!


「彼らは、邪神にそそのかされたウィバーンの手から逃れるために私たちに助けを求め、また私たちも助けたのだ! お前に責められる謂れなどない!!」


 切り裂きに追いかける稲妻の爪を引き連れて飛ぶネガティオンに、私はプラズマブラスターを発射しながらにスラスターを全開。破壊竜巻を帯びたロルフカリバーを右手に斬りかかる!


「お前が討たれたと信じて、彼らなりに生き延びようと足掻いた結果がこの陣営だ! 動けずにいたお前が、今更主君顔で言うことか!」


「奴らを我が下からかっさらって人間の味方にさせたお前がそれを言うか!? こうなった以上は、奴らに人間狩りをやらせるわけにもいくまい! 相容れぬならば、消してやるのも慈悲と言うものだろうが!?」


 これを刃で捌いてビットクローを繰り出すネガティオンへ、私は左のシールドストームでバッシュ!


「どうしてそんな、ふざけたことが言えるんだッ!?」


「ふざけているのはどちらだッ!?」


 言い争いを続けながら、私とネガティオンはさらに剣を、爪を、光線を叩きつけあう。


「この分からずやがぁッ!!」


 そして互いに声を揃えて拳を同時に胸へ叩き込む!

 この機体の軋む一撃に、私もヤツも共にバトルマスクの奥から苦悶の声を洩らして離れる。そして開けた間合いを埋めるようにブラスターとカノンをぶつけ合うのだ。

 そして激突で生じた爆発が収まれば、そこにはアームカノンをこちらへ向けたネガティオンの姿が。


「ふん……やはり、我とお前ではどこまでもぶつかるしかないな……ここまで並び立つほどに力量を高めてきたのは、さすが我が半身と言う他ないが」


 くくくとマスク奥から笑みをこぼすネガティオンだが、私へ向けたアームカノンを下げようとしない。

 無論、間合いを開けて対峙したままの私もロルフカリバーの構えを緩めない。


「そうかもしれない。お前が一度討たれてなお人を滅ぼすために生きるのを改めない限り、私はどこまでも強くなってやるとも!」


「言うではないか。ならば、ここで我に討たれても蘇って来てみせるとでも言うか?」


「……恐らくはできるだろうね。お前に出来たように……」


 私のこの答えに、ネガティオンは構えを崩さずにほほうと愉快げな声をこぼす。

 ああそうだ。

 ネイキッドになった上半身と下半身を泣き別れにして討ち取ったというのに、力を増して蘇ってきたネガティオン。それが出来たのは、おそらく私が健在であったからだ。

 主君の蘇生のために尽力したのだろう、忠臣ディーラバンの献身を否定はしない。だが鋼魔王の一部である私の存在が、ヤツの命を繋ぎ続けてしまっていたのだろう。


「どれだけ否定しようとも、私とお前は元は一つ。その命が本当に終わる時には私も、お前も……どちらもが共にこの世界から消えるのだろう」


「なるほど……では試してみるか? 本当に決着の末に我もお前も消えてなくなるのかを」


「それは最後の手段だなッ!!」


 構えたままのアームカノンを放ってくるネガティオンへ私はバスタースラッシュ!

 真っ二つのエネルギー砲弾の間を抜けて左シールドストームを突き出す。


「最後の? まだ他に取り得る手があるとでもいうのか?」


 ビットを弾き飛ばしたシールドを切り裂いて迫るアームブレード。これを私はパワーアームのサークルソーでそらし、ロルフカリバーを突き出す。


「確信があって挑むわけではない! だが、友のためにも、体を共にするグリフィーヌ達のためにも、挑まずに諦めるわけにはいかん!」


「ふん。見上げた心意気ではないか。どんな手を取るつもりだ?」


「お前と私を、もう一度ひとつとする!」


 私の突きを避けたネガティオンへ立て続けのパワーアームのドリルと共に答えを。

 この私の考えに虚を突かれたのか、ネガティオンはドリルをかわしながらも目を点滅させる。そこへ回し蹴りを叩き込み、立て続けのバスタースラッシュを伸ばす!


「フハッ!? また大きく出たなッ!? この我と……ぶつかり合うしかない我々を再びひとつにするだなどと、出来ると思ったのかッ!?」


 これをネガティオンはアームブレードで打ち払い、立て続けの刃をかわしてお返しとばかりにカノン。


「出来る出来ないではない!」


 私もまた砲撃を避けての誘導サンダークロー。これはネガティオンのエネルギーミサイルと相殺しあい、その爆発の中で私たちは互いに袈裟がけの刃をぶつけ合う。


「かつては共鳴し、同じ景色を見た我とお前だが、もはやそれ以上に反発するのみ! そんな我らが仮に融合を果たしたとて、どうなることか!? ほどなく分離するのがオチだ!?」


 無理だ無駄だとの言葉に合わせての左右の刃、そしてビットクローを駆使した縦横無尽の連撃。

 上からくるものは撃ち落とし、右からのものは剣、左からのは盾の拳、下からくるものはパワーアームで捌いて。


「そんなことは、ない!」


 そして大きく振った隙に、ロルフカリバーを握った右拳での破壊竜巻鉄拳を見舞う!

 これでわずかに後ずさったネガティオンへ、すかさずスラスターを全開に踏み込む!


「お前が本気で人への憎しみに捕らわれていたと言うのなら、もっと多くが犠牲になっていたはず。私の友たちのことも、何度そのチャンスを与えてしまったか……」


「それは邪神を打ち倒す機を狙ってのこと! それまではただ死霊を増やしてヤツの力を必要以上に高める必要は無いと判断したまでのことだ!」


 斬り込む私を受け止めたネガティオンは、逆の腕の刃を私に突き刺そうと。だが、私は逆噴射からのマキシマムウイングの巧みな動きによって宙返りに回避。


「そんな誤魔化しが、お前自身に通じるものか!!」


 そしてネガティオンの言い訳を、ヤツの繰り出したブレードもろともに切り落とす!

 そうだ。ネガティオンが本気で人間を根絶やしにしたいのならば、もっともらしい理由を持ったところで止まれるものか。特に私の友二人のことなど誤差でしかないはずだ。つまりは――


「お前が私という形で切り捨てたという甘さ……いや、人に奪われた愛しいものもまた人だったという心は、今もなお、ネガティオン自身の中に存在するのだ!」


 ロルフカリバーを突きつけたこの私の言葉に、ネガティオンは折れたブレードを眺める目を明滅させる。


「フン……それはまるで、お前自身もまた人への怒りを抱えているように聞こえるぞ?」


 試すようなこの問いかけに、私は誤魔化すことなくはっきりとうなずいた。


「私が出会ってきた人のすべてが、良い人だったわけではないからね」


「ほう? それでもなお人を守るために戦うというか?」


「当然だ。それでも愛すべき、尊敬できる者がいる……そんな一面も持っているのが人なのだから」


 この私の答えに、ネガティオンはかすかな笑いをこぼすと、まっすぐにその緑の目を私に向けてくる。


「良いだろう。試して見るがいい。お前の甘さで我の憎悪に打ち勝てるかどうか。我がさらなる力を得るだけに終わるだけだろうがな」


 人を……友を脅かすさらなる強大な魔王の誕生。その可能性は否定できない。そちらに至った後の悲劇を思えば、バースストーンも冷たくなる。


 案ずるなライブリンガー。私が翼としてついているのだぞ?


 ありがとうグリフィーヌ。恐れに冷え強張っていた機体を暖めてくれる励ましを受けて、私はネガティオンへ。

 だがそんな私たちを、どこからともなく射した光が捕えるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] どちらかが生きている限り必ず蘇る二人…… 再び1つにならない限り、その繰り返しを終わらせるすべはない……! 善が残るか悪が残るか、乾坤一擲の大博打ですね。 一部の悪人のために、大勢の良い人…
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