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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第六章:災いの源
155/168

155:現れたものは

 夜明けが来たかのような輝きが五首の大蛇の上で起こる。


「やったかビブリオッ!?」


 友の勝利を象徴するかのようなその輝きに私は一瞬見入ってしまう。だが眩しさに溢れた洗浄液で目が濡れるよりも早く、鋭く迫る殺気にロルフカリバーを叩きつけに行く!


「ふははは! 浮かれてはいても、我の存在を忘れるほどではなかったか」


 ビットクローを打ち返した私の注意力散漫を皮肉りながらネガティオンはアームカノンを発射。

 私はそれを跳びすさってかわし、プラズマバスターを放つも、続く全身からのエナジーミサイルに襲われる。


「うぐおッ?! これしきの事でッ!!」


 全身を抉られるようなダメージの連続、であるが私はこれを無視。グランデの耐久力任せに間合いを詰める!


「ほう? 近付いてくるか。近接においても力の差は見せつけたというのに、性懲りも無く踏み込んでくるか?」


「近付かねばお前を斬れないのでなッ!」


 言い返すと同時のプラズマバスター。だがこれは悠々たるネガティオンを狙ったものではない。魔王の後ろに回り込んだグリフィーヌ。彼女を追うビットクローとミサイルの数を減らすためのものだ。


「その体、もう一度断ち切って見せるッ!!」


 間近なモノが弾けた爆発を追風に加速したグリフィーヌは残存のミサイルを振り切りつつネガティオンへ。合わせて私も対回転ダブルドリルとロルフカリバーを叩き込みに跳ぶ!

 だがネオネガティオンは全身を覆うバリアでもって私たちの上下からの挟み撃ちを滑らせ、その場でのスピンで私たちを吹き飛ばすのだ。

 放出したバリアエネルギー。私のフュージョンスパイラルと同質ながら、微量の余波程度のエネルギーに私たちはまるで木の葉のように吹き飛ばされてしまう。

 初見のグランデで通じないとなれば、ここはもう機動力とレンジの広さで対応する他無いか!


「グリフィーヌッ!! もう一度マキシマムウイングだッ!!」


「待っていたぞッ!!」


 吹き飛ばされながらも力強く応じてくれる声を受けて、私はマキシアームから分離。呼び出したマキシローラーとローリーとの合体を果たす。

 それと同時に私はビブリオたちの乗っているはずの五首の大蛇がこちらへ墜落してきているのに気づく。


「ミクスドセント、ミラージュハイド! ビブリオたちは!?」


「迎えに行っているのは聖獣殿らが!」


「問題ない! 二人ともこちらの手の中だ!」


「ボクらの事なら大丈夫だから!!」


 ホリィからの応答は無い。だが構わずにやってくれとの声を受けて、私は墜ちてくる巨体に向けてジャンプ!

 そこへグリフィーヌがドッキングして加速! 臨界にまで高めていた右ローラーの左回転、左ローラーの右回転に稲妻を迸らせたものを前に機体ごと叩きつけてやる!

 名付けて、フュージョンスパイラルストライク!

 即興の必殺技ながら、その絶大な破壊力は山のような巨体をその隅々まで余すところなく粉砕して見せた。


「わっほい! ライブリンガーッ!!」


 そうしてヒラヒラと破片が舞う中、私は合体四聖獣の手のひらにいる友の声に手を振り返す。

 これで邪神の魂はビブリオが討ち、肉体は私が砕いた。そしてホリィも救出できたワケだが、まだ終わった訳ではない。


「後はネガティオン、お前だけだッ!」


 呼び寄せたロルフカリバーを突きつけた先。そこには悠然と構えた我が半身にして宿敵の姿が。この魔王を討ち果たさなければ、人々に平穏は訪れないのだから!

 だが決戦に構える我々に対して、ネオネガティオンは叩き潰してやるとくるでもなく、静かに宙に浮かんでいるばかり。


「後は我だけ……果たして本当にそうかな?」


 バトルマスク奥のニヤケ顔が透けて見えるその声。この意味を問うまでもなく、答えは明らかになった。

 突如地面から伸びた金属の柱。蔦を絡めあうかのように伸びたそれに巻き込まれてしまったからだ!


「グッ!? ネガティオン、何をッ!?」


 マキシマムウイングからサンダーブレードを放出。それで絡み付いたのを振り払って宿敵を睨めば、しかしネガティオンもまた金属の蔦に襲われているところであった。

 とは言っても、魔王の白い巨体に触れるよりも早くに蒼白い炎によって切り裂かれているのだが。

 それを為したのは二頭立ての戦馬車チャリオット。御者が飛び立ち丸まって出来た頭部に馬と馬車が変形した体が組み合わさって完成したのは鋼魔近衛騎士ディーラバンだ。

 倒れていないとは聞かされていたが、やはりネガティオンに付き従っていたか。火山での決戦の時にも、おそらくはやられたフリをしていただけでネガティオンを救出していたのだろう。


「おのれ……忌々しい! ネガティオン、お前がライブリンガーを叩き潰していたなら、もっとあっさりと復活できていたものを……ッ!?」


「この声はッ!?」


 苛立ちも露にネガティオンとその側近を睨み付けるのは、私たちを襲ったものと同じ巨大な柱に埋まった女性だ。

 船首像のように仕立てられたその容貌は、蠢く柱と対照的に恐ろしいほど整っている。だがそれは見せかけに過ぎない。女性の像も含めてあれらすべてが無数の金属のヘビが絡まりあった集合体になのだ。


「邪神、インバルティア……!?」


 異形の金属生命体。真の姿を現した邪神に構える私たちに対して、ネガティオンはまるで動じた様子もなく対峙している。


「フンッ! 全能の創造主を自称しておきながら、我が宿敵を倒しきれぬと読めなかったと? 筋書きを書いたものは案外そこまで考えてない、と言うのは言い得て妙だな」


 堂々と挑発を返すネガティオンに、邪神はその身を構成するヘビをざわめかせる。


「……まあいいわ。こうなった以上はもはやどう転ぼうと同じこと……」


 努めて冷静さを装いながら、邪神は翼を為したヘビを蠢かせて、くるりと私たちの方へ振り返る。


「その忌々しい石を砕いて、再びこの世界をあるべき場所に、作り手の手の内に取り戻すまで!!」


「いかん! クロスブレイドッ!!」


 グニャリと女性の像を崩して現れた砲口。そこから放たれた虹色の光に、私は破壊と守りのエネルギーを帯びた剣を叩きつける。

 私とロルフカリバーを分水嶺に割れたエネルギーの奔流が辺り一帯を光の中に包む。

 やがて夜が戻れば、虹の光を断ち切った私の背後以外の景色は惨い有り様になっていた。

 木々はとろけて土は朽ち、川も枯れてしまっている。こんな力が無差別に振るわれてしまったのなら、この大陸ばかりか、星そのものが朽ち果ててしまうことだろう。


「そんなことはさせるものかッ!! させてたまるものかッ!!」


 そうなればビブリオとホリィは、二人と共に出会ってきた人々は、皆運命を共にすることになってしまう。断じて許せんとの思いから私は再びクロスブレイドの構えを。

 そんな私の周囲を、同じく構えたマキシマムウイングの私が取り囲む。

 これはミラージュハイドの幻影か!? 狙いを定めにくくする援護をしてくれているか。

 見れば私と同じく空にあるミクスドセントハーモニーもまた、抱えたビブリオらと共に分身した上で大斧を構えている。


「邪神め! ここはもう貴様が支配する世界ではない! 退けッ!!」


 四つの聖なる力を束ねた邪神封じの法。それが巨大な金属の柱を取り囲み、重圧をかける。


「ライブリンガー! トドメをさして!!」


 いまだと必殺を促すビブリオに、私はネガティオンを一瞥する。

 だが魔王もその側近も、高みの見物とばかりに、まるで動く様子がない。

 その不気味は解せない。だが、邪神を斬らない理由もない!

 だから私は全力をこめて剣を振りかぶって――


「これで終わりのつもりか?」


 上から降ってきた塊に押し潰されたのだ。

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[一言] ぎゃあ~~~~強敵に次ぐ強敵! 早くなんとかなって――――!!
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