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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第六章:災いの源
154/168

154:人間をなめるな!

 バカでっかい鉄のヘビの上。そこで強い風がぶつかってくるのをボクは魔法でこらえてる。

 それもこれも――


「あはははッ! いいよいいよー! 派手に潰しあいなよー!」


 邪神から姉ちゃんを取り戻さなくちゃならないからだ。

 今はライブリンガーと復活ネガティオンの戦いを見下ろして笑ってて、ボクがすぐ後ろにまで来てるのにも気づいてない。

 今が姉ちゃんを取り戻すチャンスなんだ!

 だからすぐにでも飛びつきたいけれど、駆け込む間に気づかれちゃったらおしまいだ。だからもっと、少しでも近づかないと。あせるけれどガマンして、ツルツルした冷たい鉄のヘビをはって進むんだ。


「邪神め! ホリィを生け贄に復活などさせんぞ!」


「きゃー! 精霊の手下のケダモノー! そんな大きな斧振り回してこわーい!」


 そんなボクの上をミクスドセントハーモニーが通り過ぎて斬りかかるけれど、ヘビの頭のひとつが攻撃を受けて落ちる間に別のヘビが口からの魔力砲を浴びせるんだ。

 防御したミクスドセントが吹っ飛ぶくらいのパワーが起こす風がボクの体を押さえつけてくる。だけどヘビの頭はまるでボクに気づかないで、ミクスドセントを追いかけてく。

 ダメ押しって続いた攻撃は墜落しそうなミクスドセントを襲ったけれど、撃たれた四聖獣合体の巨人は燃える木の葉と溶ける雪に変わって消える。


「すまんな、ミラージュハイド!」


「なんの! 目玉引っかき回すのは任せてください! 俺には打撃を与える手が足りんので!」


 短く言葉を交わした二体の大勇士は、また降ってきた光線をよけて、ボクらの乗った怪物に攻撃をしかけてく。

 その時に、二人ともボクの居場所が分かってたみたいで、こっちにチラッとチカチカッて目を光らせておいて。


「あーもう! チョロチョロしてくれてめんどくさいわね!」


 邪神は飛び回って攻撃と牽制を繰り返す大勇士二人にヘビの頭をけしかけてく。

 ボクが姉ちゃんを助けに行くのを、ライブリンガーもみんなも助けてくれてるんだ。だからできるだけ早く取り返して、みんなが全力を出せるようにしなくちゃだよ!

 暴れるヘビに振り回されながら、ボクは少しずつ。だけれど確実に邪神の背中に近づいてく。

 それでようやく、外しようがないトコにまで間合いを詰められた。


「精霊神、ご加護をッ!!」


「うええッ!?」


 勢いづけに叫びながら、ボクは邪神のスキだらけな小さな背中に魔法をぶつけてやる!

 雷のフクロウに水の竜、炎の獅子に影の猟犬。それに狼の剣の形にした魔法は、グルグルって巻きつくみたいに邪神にからまってヘビの背中から転がし落としたんだ。


「姉ちゃん!」


 それでこじ開けた道を貫いて、石のベッドに寝かされた姉ちゃんに飛びつく。

 だけどそんなボクの首を、何かがつかんできた。


「……う、あッ!? な、んで……姉、ちゃん……ッ!?」


 どうして、なんで姉ちゃんがボクの首をしめるんだ? ワケが分からなくって聞くけれど、そうしたら姉ちゃんの口がニヤって感じにゆるむんだ。


「なんでって、こっちにあたしがいるからに決まってるじゃないの」


「じゃしん、の……ッ!?」


「正解。いやー痛かったわー。あんな小さな女の子に容赦ゼロなんだもの、こわーい! まあお見通しだったんだけどね? ここは私の手の上なんだもの」


 その姉ちゃんの顔と、口から出てきた声は、さっきぶっとばしたはずの邪神のだ。

 もう姉ちゃんに乗り移ってただなんて。間に合わなかったってことなの?

 それが悲しくて、姉ちゃんがもうやられちゃってたんだっていうのが辛くて、目の前がにじんでくる。取り返せなくてごめん。ごめんよ、姉ちゃん……!


「……って、うえ! 気持ち悪いって思ったら、アンタもそれ持ってたのよね……!」


 だけど邪神に乗っ取られた姉ちゃんが、力をこめてきたのをいきなりに引く。それはボクが自然に伸ばしてた手、それに着いてるライブブレスのおかげだ。

 でも邪神に乗っ取られたはずで、いま朝焼け色の石を嫌がったはずの姉ちゃんは、ボクのブレスを着けた手を握り返してきたんだ!

 その瞬間、ボクは分かったんだ。まだ終わってなんかないって、姉ちゃんは助けられるんだって!


「うえッ!? なにして……てぇえッ!?」


 だからボクは、邪神の混乱を顔に浮かべた姉ちゃんの胸にライブシンボルを返したんだ。ありったけの魔力と、姉ちゃんを好きだってボクの気持ちを込めて!


「いやぁあああッ!? キモイ、キモイィイッ!? ピュア過ぎ、熱すぎぃいッ!?」


 すると邪神は姉ちゃんにボクの首を手放させて逃げようとする。けど逃がすもんか! 姉ちゃんの顔でそんなこと言われるのは辛いけれど。思った通りに!


「ライブシンボルを壊さないで捨てただけでいたのも! 姉ちゃんをこの時まで乗っ取らずにいたのも! それで姉ちゃんに逆らわれたのも! ボクのことに気づいてたって言っといてほったらかしにしてたのも!! バースストーンの力を怖がってるからだ!! そして、怖がってる自分から目をそらしてるからッ!!」


 姉ちゃんの中に残ってたバースストーンの力があったから完全じゃないし、そんな姉ちゃんの体を使ってボクをしめようとしたんだ!


「お前だって、姉ちゃんを利用しようとするくらいに完全じゃないんだからッ!!」


「……この、なまいきな……ッ! 人間のチビスケがッ!!」


「姉ちゃんを返せ! 姉ちゃんから出て行けッ!!」


 姉ちゃんごしにボクのことを睨む邪神に、ボクのライブブレス、姉ちゃんのライブシンボルも合わせた二重増幅の魔力を流し込んでく。

 直流しの夜明けの光に、邪神はじたばたしながら濁ったモヤをボクに構える。

 そんなのに怖がるもんか! これしきのことで、姉ちゃんを諦めたりなんかするもんか!!


 ここで取り戻すんだって、追い出すのが早いかどうかの勝負をかけるボクに、でも邪神は姉ちゃんの顔にニヤリと笑わせるんだ。


「これで、お前がいなくなれば、この娘の心もへし折れるわよね!」


 その言葉に合わせて濁ったオーラの波がボクに放たれる。姉ちゃんが頑張っておさえてくれて、タメも半端な濁り波はボクをなぐり付けてもそれだけ。でも、それだけでいいんだ。刺さるまでするどくするまでもないから、アイツはこれで撃ったんだ。

 だって押し流されたボクの体は、足場なヘビの体に空いた穴に落とされたんだから。


「うあッ!?」


 つかまらなきゃ。って思うけれど、そうやってのばした指先が切られてしまう。

 その痛みで思わず手を引いちゃったけれど、そんな場合じゃないだろって、歯を食いしばって次の出っ張りを握りしめたんだ。掴んだ手のひらがすりむけたけど、そんなの構うもんか。けれど必死の思いでつかんだそれは、細い金属のヘビだったんだ。

 それはボクの手にかみついてこようとするけれど、その前にボクの手がしびれて緩んじゃう!

 さっきの、あの傷から毒が……!?

 力が入らない体をそれでもって魔力を通して動かそうとするけれど、ボクがぶら下がってる奴も噛みついて毒を足そうとしてくる。

 だけどそれよりも早く壁から生えたヘビは根元から焼き切られるんだ。

 それからボクの体は固いものに包まれて上に。

 その固いの。全身をマントで隠した大男はボクを抱えたまま壁を蹴って上に上に。

 これって王子を乗っ取ってたウィバーンを倒してくれた……っていうことはディーラバン!?

 どういうつもりか分からないけれど、自由の効かないボクを穴の上にまで連れてってくれる。


「……解毒は出来たな?」


 え? そりゃあやってたけれど? 覚えのある声でそう聞かれたボクは、返事をする間もなく投げ飛ばされた!


「なに!?」


 正面には一つの体でライブシンボルを放させようとする邪神と、握りしめて抵抗する姉ちゃんが!


「今だビブリオ! 行けえッ!?」


「ぐあッ!? 精霊のケダモノどもッ!?」


 そこへ邪神の力を封じる力をミクスドセントハーモニーかかけてくれる。


「ここまで助けてもらったならさあッ!?」


 やるしかないだろって、ボクはいま出せる魔力の全部をライブブレスにこめて姉ちゃんに浴びせたんだ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ビブリオー! そこだぁー根性見せろぉー! 姉ちゃん絶対助けて見せろぉー!!
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