147:超聖獣合体! そして決着の大太刀!
「グリフィーヌッ!!」
地形の変化と合わせて空へ舞い上がったウィバーンに吹き飛ばされた彼女を追って、私は走る!
そしてあわや地面に激突というところで伸ばしたグラップルアームでキャッチ。腕の中に抱える。
「す、すまないライブリンガー。私としたことが迂闊な……」
「いや、気にしないでいいさ。無事で良かった」
大きく吹き飛ばされていたが、その割には彼女の機体に目に見える大きなダメージはない。自分からも飛ばされる方向に飛ぶことでとっさにダメージを抑えたのだろう。さすがはグリフィーヌだ。
「殿ッ! 上を!!」
しかし安堵したのもつかの間。グリフィーヌに預けていたロルフカリバーからの警告に、私は反射で狼の剣を掴んで振り返る!
するとグランデの巨体を包んであまりある太さのエネルギー流が、分厚い刃とぶつかり裂けるのだ。
「ぐ、おおッ!?」
「ライブリンガーッ!?」
「大丈夫、任せてくれッ!」
抱えたグリフィーヌの心配の声に返しながら、私はパワーアームでもロルフカリバーを支えてエネルギーの重みをこらえる。
「ハッハハハハッ! 矮小、脆弱ッ!! そんな小さな体で創生の力を受け止められるものかよッ!?」
ウィバーンが声高に嘲る通り、グランデのボディはギシギシと軋んでしまっている。
仲間たちの援護も、浮き上がって動き回る大地に阻まれて空高くに上がったウィバーン城にまでは届いていない。
だが諦めるにはまだ早い!
「グリフィーヌ、合体してくれッ!!」
「構わんが、しかしグランデとの合体では逆に腕の動きに、それにここから空というのも……」
「心配する事はない。私に任せて、力を貸してくれッ!!」
合体で打開できるビジョンが見えなかったのか、グリフィーヌがらしくない躊躇を見せる。
その不安、私が力を尽くしてこじ開ける!
「……分かった! 私の力、預けるぞッ!!」
重ねての私の誘いにグリフィーヌは私の腕から飛び立ち変形。グランデボディの背面にドッキングする。
翼を折りたたんだ形で繋がった彼女との共鳴でみなぎる力。それをウィバーンと競り合うロルフカリバーへ。
私とマキシビークルとグリフィーヌ。そしてロルフカリバー自身。このいくつものバースストーンの共鳴はロルフカリバーを巨大化させる。
「う、お、おおおッ!? 拙者の体が、漲りぃああああッ!!」
グランデとなった私の手に余ってもなお勢い止まぬ柄を腕全体で抱え、グラップルのパワーアームも使って固定。そうしてグランデの体全体で支えれば、巨大化した刃からは稲妻の刃が重なり伸びる!
強大な質量とエネルギーの塊となったロルフカリバーはのし掛かる力を跳ね返し始める。
「バカなッ!? こっちは、俺は神の力を使ってるんだぞッ!? それがなんで噛み合わない合体に押し返されるッ!?!」
何をそんなに混乱する事があるのか。
グリフィーヌが私の翼であろうと、力になろうとしてくれていることは知っている。今は体をひとつにしているのだからなおさらだ。
だが飛行能力を備えさせることだけが合体の意義では無し!
そして、マキシアームであるラヒノスも、ロルフカリバーもまたグリフィーヌと心を同じくし、私もまた彼女の誇れる力でありたいと願っている。
そんな私たちが、たかが機体の相性ひとつ、乗り越えられないワケがない!!
「これで終わりだウィバーンッ!!」
程なく超巨大剣となったロルフカリバーを振り上げ、ウィバーン城をその放つ光線もろともに叩き斬りに。
これにウィバーンは私たちへの攻撃を止めて羽ばたき逃れようとする。
だが私たちの剣はその翼を掠めただけで消し飛ばしたのだ!
「グオッ!? だがそんな大振りが何度もなぁッ!?」
翼を無くしたウィバーン城は墜落しながら人型へチェンジ。その巨大な足で大地を踏みしめる。
「脅かしやがって……もう許さんッ!! こうなったら先にお前らが守ろうとしてる人間どもを消し飛ばして贄にしてやる!」
踏みしめた足から、力が大地を引き裂き走る。
その一部は私もまた地面に流した力で打ち消す。しかしそれと仲間たち全員で相殺に動いても、なお打ち消しきれぬものが人々へ伸びる。
ダメだッ!
もっと力を、邪神の糧にさせたりなんてしたくない。犠牲を出さない力をッ!
いかん、ライブリンガー! これ以上はグランデのボディさえもたないぞッ!!
頭脳に走るアラートとグリフィーヌの警告が、私自身の出す力に機体が負けつつあると告げてくる。
だが、そんな限界などこじ開けてしまえば……ッ!!
その気持ちで振り絞った力に、私の視界に亀裂が走る。
「あまり無理をするな……遅くなった俺が言うのもなんだがな」
だがその瞬間、馴染みの無い声が響くや、人々を目指して大地を走っていた力がねじまがる。
黒い光に染まり直したその輝きは、ビブリオの得意とする死霊返しの魔法陣を描く。だがその門は死霊を迎えるためのものではなく、送り出すためのものであった。
「ゲートベロスッ!?」
冥府との門を通じて現れた三首の援軍は、全ての目を輝かせて私にうなずくや、声を揃えて吠える。
その共鳴する遠吠えに、巨大ウィバーンの纏う瘴気が濁った色を薄くする。
「なんだと!? 贄を捧げて得た力が!? 何をしているッ!?」
巨体を支え損ねて膝を着いた巨大ウィバーンは、その手をゲートベロスへと伸ばす。
これにゲートベロスは黒の神官へとチェンジ。その手に握った刃付きの砲を、壁と迫るモノに向ける。
「邪悪に囚われた魂よ。安息の地へ向かうがいい」
遠吠えにも似た銃声が連なり響くと、巨大ウィバーンはたまらずに身もだえを。その勢いでゲートベロスを狙っていた腕が朽ち崩れる。
巨大ウィバーンに利用されていた死者の魂。それらが解放されて導かれたからか。まさに今のウィバーンに対する特効の力を持つ援軍だと言うわけか。
「さあ。精霊神より地上に遣わされた同胞よ。私もまたお前たちとひとつになろう!」
「なんとッ!?」
ウィバーンの動きを封じたゲートベロスの申し出に、私のみならずミクスドセントからも驚きの声が。しかしゲートベロスは構わずに飛び上がると漆黒の輝きに機体を包んで、三聖獣の集った巨体へ突っ込んだ!
「おおおおおッ!?」
青、白、赤、黒。四つの色に巡る輝きから驚きと戸惑い、そして喜びの声が上がる。程なく繭を作っていた光が解かれれば、そこには姿を変えたミクスドセントの姿が。
翼を生やした頭と、体を繋ぐ首元。右肩のライオンヘッドと対を為す左肩。そして腰鎧。
この三ヶ所を主に番犬の頭を象ったアーマーを追加。そして武器である大斧には刃付きの砲を組み込んで。
「超・聖獣合体ッ!! ミクスドセント・ハーモニーッ!!」
高らかに名乗りをあげた新生の……いや、これが本来のミクスドセントか!
四聖獣の束なった鋼の巨人は、その武器をウィバーンへ向けて構える。
「な、何がハーモニーだッ!? たかが一匹足しただけで、何が変わるッ!?」
これにウィバーン城はまだ健在な逆の腕で握り潰しにかかる。だがミクスドセント・ハーモニーは構えた大斧を一振りする。
「テトラフォース・シール!」
斧から飛んだ四色の光はウィバーンの手とぶつかるや、たちまちにほどけて絡みついていく。そしてミクスドセントに触れる前に、その巨体は完全に縛り上げられていた。
「バカなッ! バカなッ!? こんな、こんな程度の力でなぜ身動きが取れなくなるッ!?」
「さあ、勇者よ。その剣、まだまだ振るえるだろう?」
「なんだと!? よせ、やめろ!? そうだ、俺もお前たちの味方をしよう! 俺はいずれ神を越えてシンなる世界の導き手になるつもりだったのだ!! だから……」
いまさらそんな見え透いたウソに騙されるものか! ここまで味方にお膳立てされて、ためらうはずもないだろうが!
そんなグリフィーヌの気合も受けて、私は重い重いロルフカリバーをもう一度振り下ろす!
「やめ、やめろぉおおおおおッ!?!」
この絶叫を最後に、超巨大ウィバーンは稲妻ほとばしる刃で両断されるのであった。




