146:飛竜城攻略戦!
「なん……だと! 城が、メレテの城が?」
「城が、鋼魔に!?」
救護班のボクとホリィ姉ちゃんのまわりに固まった人たちがざわついてる。
そりゃあそうだよ。だってメレテの城っていうか、都がウィバーンになっちゃったんだから!
「あ、あれウィバーンだけじゃないぞー!」
怯えながらグランガルトが言うとおり。ウィバーン城が踏みつけにしてる土台のところ。牛やヒョウの顔が浮かんでるあれって、クレタオスとクァールズだよ!
抜け殻みたいになってた二人を見つけてたって、そんな話は最前線のライブリンガーから話が来てた。けど、まさかあんな……完全にウィバーンに取り込まれちゃってるじゃないか!
「あんな惨い……ライブリンガーが助けるって言ってなかったら、グランガルトとラケルもあの中に入れられていたってこと? ディーラバンに利用された時みたいに」
「それは……改めて勇者様に感謝だわね。あの様子、近衛様の時みたいに解放されたら分離できるって状態じゃなさそうだもの!」
「そ、そうだそうだー! ありがとうだぞライブリンガー!」
姉ちゃんの最悪の予想図に、ラケルとグランガルトはお互いに鋼の体を寄せあって震えてる。
ホントに良かったよ。グランガルトが助けてって言ってきた時は正直、虫が良すぎるってムカついた。けど、今となったらあんなんになってほしいだなんて思わない。もしもここで取り込まれてるのを見ちゃったりしたら、きっとボクも後悔したと思う。
だからボクたちも、またライブリンガーに助けられちゃったんだ。
「さあて、これからが本番だぞ? せっかく我が神への生け贄を大量に用意してくれたんだからなぁ!?」
城ウィバーンが叫んだら、その体からなにか羽虫が飛び立つみたいに小さいものが離れる。
いや、虫って言っても、それはウィバーン城と比べたからで、ホントはそんなに小さいものじゃない。
だってあれ、前で飛んでるグリフィーヌと正面から斬り合いができてるんだよ!?
「飛べる機兵ッ!?」
グランデのライブリンガーやミクスドセント、ミラージュハイドもみんなでぶつかってくる端からやっつけてる。けれど、倒しても倒しても新しいのが出てきてるから、こんなのどうしたって数が違いすぎるよ!
だから大技のすき間から、ボクらのところにまで飛んでくるのも出る。
「ウィバーン……?」
飛んできたのは、鉄巨人になったウィバーンに良く似てる。
羽があって、風を切りやすいように鋭く細い形をした人型だ。飛び出した元が城になったウィバーンだから、子どもだっていうのかな?
「ハハハッ!! 言っただろうが、機兵全てが俺を元にしてる!」
「逆に言えば、機兵全部が俺そのものってことなんだよッ!!」
つまり、ウィバーンの思い描いた通りに、オトリと本命みたいな連係ができるってことか。
そんな城と兵隊とで大笑いにタネ明かしするウィバーンに合わせて、ボクらの前の飛竜機兵たちが雷の玉を握った手をボクらに向けてくる。
「おまえならこわくなんかないぞー!!」
だけどそれは、グランガルトとラケルが出した鉄砲水が押し流してくれる。
「ありがとうふたりとも!」
「いいのよ。ライブリンガーには、もっと誠実にならなきゃな恩もあるって分かっちゃったものね」
ラケルはおっきな水がめから金属のタコ足をゆらゆらさせながら、冗談っぽく返事をしてくる。
その先っぽからダメ押しって感じで飛竜機兵に水鉄砲を浴びせる。
「オイオイオイ。鋼魔だけじゃなく人間まで導こうってこの俺に逆らうとは、いい度胸じゃないかよ」
「以前は同胞だった仲だ。まとめて俺に取り込んで、高みへ導いてやるから心配するなって」
でも、これで転がってく飛竜機兵がいても、また別のが代わりにって前に出てくるんだ。
「ふざけるなよ! お前なんかぜったい認めないし、グランガルトたちだって渡すもんかッ!!」
だからボクは飛んでくる連中を冥の魔法で地面に叩きつけてやる!
ついでに舞い上がった土くれで埋めてしばりつけるおまけつきだ!
「みんな退いてッ!! このままじゃライブリンガーたちが思い切り戦えないッ!!」
それといっしょに姉ちゃんがまわりの人たちに逃げるようにって。それを受けて軍隊が動き出すのに合わせて、ボクと姉ちゃんはラケルを背負ったグランガルトに乗っかって地面の上を滑ってく。
「いい挨拶してくれるじゃないかよ小僧!」
「だが、そう言うのが得意技なクァールズは俺の中にいるんだぜ!?」
そんなボクらの追いかけて、大地の縄をあっさりほどいたのや、まだ空にいた機兵たちが飛んでくる。
通じないかもとは思ってたけど、ここまで効かないってちょっと自信無くすな。
でも本命は魔法で叩きのめしてやることじゃないんだ。ボクらを追っかけて来てるならそれでいい!
味方が逃げるために立て直す時間をかせぐんだから。
「ほらほら! 空から追っかけて来てて掴まえられないなんて、遊びが過ぎるんじゃなくて、元・参謀さん?」
「やーいやーいノロマー!」
回り込んできてるのや追いかけてきてるの。そいつらを煽りながらグランガルトやラケルが水鉄砲を浴びせたのに、ボクと姉ちゃんが水の冷凍魔法をかけて凍らせる。
もちろんそれで倒せるほど甘いことはないよ。それでもクレタオスパワーで溶かすのが間に合わなくって地面に墜落することもあるんだから十分さ!
「言うじゃないかよ! そのガキ臭い挑発、あえて乗ってやるッ!!」
このボクたちの抵抗がきいたみたいで、ムカついた飛竜機兵たちが、どんどんボクら狙いに切り替えてくる。
だけどボクらが反撃する距離にまで来れるヤツは全然増えてない。
「ビブリオたちのところへは行かせるものかッ!!」
ボクらに向かうヤツらを狙った、みんなの攻撃が叩き落としてるからだ。
バラけた動きが減ったせいで、鋼の勇士のみんなからはまとめて吹き飛ばしやすくなってるってわけだ。
コレにはセージオウルが頭をやってるミクスドセントからもいい一手だって!
「どうしたのさ! 鋼魔で参謀やってたわりには、ぜんぜんボクらを詰みまで持ってけて無いじゃないか!」
雷の狼に食いつかれたヤツを通してウィバーンにそう言ってやったら、飛竜城の側からうめき声が響いてくる。
「……フンッ! チョイとばかり遊んでやっていただけだ!」
中央尖塔にある顔は負け惜しみに叫ぶと、その口に三色に移り変わる光が生まれる。
濁ったそれは天と火、それに冥の力をひとつにしたヤツだ。でも巡らせてまとめたようなのじゃなくて、もう一個別の力で無理矢理に閉じ込めてる感じの!
そんな世界の巡りを歪めた力は、ボクたちとその後ろにいる人たちをまとめて吹き飛ばしてやるって……ッ!
「やらせないといったぞッ!!」
そんなウィバーン城の顔面に岩の塊が飛んでいく。ライブリンガーが投げてくれたヤツだ!
「そんなものが効くか!」
それはウィバーン城が角から出した光線で砕かれちゃう。けどさ!
「それだけで止めるつもりなわけがないだろうがッ!!」
「グワーッ!? グリフィーヌ、キッサマがぁーッ!?」
岩に隠れて近づいたグリフィーヌが、ロルフカリバーを目玉に叩き込んだんだ!
目から流れ込んだ電撃にウィバーン城がたまらずって感じに体を振り回す。けれど、グリフィーヌはとっくに羽根を振って離れてる。
そのままグリフィーヌを追いかけようとするウィバーンの口に、ライブリンガーの投げた二つ目の岩が飛び込むんだ。
「そこへダメ押しの、トライフォース・スマッシャーッ!!」
「サークルブレードスロワーッ!!」
口に溜めたエネルギーが暴発したところへミクスドセントとミラージュハイドがたたみかけてく。
この強烈なダメージに、山みたいに大きくなったウィバーンも悲鳴を上げて暴れるんだ。
「……ッこの! こっちが余裕を持って相手してやりゃあつけ上がりやがってッ!!」
「ほう? だったらその本気とやら、見せてみたらどうだッ!?」
ムカつき気分のまんまにわめくウィバーンの負け惜しみに、グリフィーヌは今度こそトドメだって斬りかかる。
「ああ望み通りにしてやる! これが神から授かった天地創造の力だッ!!」
けれどひと羽ばたきに飛び上がったウィバーン城と、それを追いかけるみたいに飛び出した地面が逆にグリフィーヌを吹き飛ばしたんだ!!




