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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第五章:邪神、暗躍
143/168

143:激突! 復活の飛竜参謀!

「色々恨みつらみはあるが、まずは目障りなネガティオンを倒してくれてありがとうよ!!」


 感謝の気持ちは入っていない声と共にボール状の電撃が、グランデとなった私と仲間たちの頭上に落とされる。


「ダブルドリルッ!!」


 そのサイズから威力を察した私はとっさにジャンプ。そこからスラスターを全開に空を駆け登りながら対回転をするドリルアームを突き出す!

 コンパクトなフュージョンスパイラルでもって落ちてくる破壊力を打ち砕く。だがその余勢でもっての突撃は巨大な翼の羽ばたきによってかわされてしまう。


「受け取ってくれても良かっただろうによ! 俺の感謝と怨み辛みを込めたのをよッ!!」


「戦っていた以上は自然なことだろうけれどもッ!?」


 受け取ってやるわけにはいかないと、私を狙った烈風弾や雷撃を打ち落とす。しかし大気を歪めた風の弾丸を殴り落とした瞬間、射撃を目眩ましに迫ってきたウィバーンの尾が私の機体を撃つ。

 とっさに腕を盾に挟んだものの、宙ぶらりんでスラスターのみでは踏ん張れるはずもなく私は地上へ叩き落とされてしまう。


「頼む! クッションをッ!?」


 私の頼みを受けて、仲間たちが水や空気のクッションで落下の衝撃を軽減してくれる。

 その上で受け身もとった私は、転がる勢いのままに上空を見上げてプラズマバスター!


「ハハハッ! やるやる! だが飛べなきゃあその程度だよなぁッ!?」


 しかしウィバーンは悠々とビームを避けてみせると、自分の土俵から私たちを見下ろして高らかに笑い声を降らせてくる。

 悔しいが、マキシマムウイングでない私では空中戦は厳しい。

 しかしマキシローラーとローリーが直っていて合体できたとしても、今グリフィーヌの負っているダメージでは……。

 そしてこの場には、セージオウルたち飛行可能な戦力はいない。


「お前らを高みから一方的に殴れる……いい気分だぞ! 俺の体を奪ったお前らをなあッ!?」


「それで人間の体を奪って生き延びて、復讐の機会を狙っていたと言うわけかッ!? その上で世界を支配しようという野心を叶えるためにッ!?」


「違うね!」


 ビブリオたちに寄り添われたグリフィーヌの叫びに、しかしウィバーンは翼を大きく広げてこれを否定する。


「俺は神に選ばれたんだよッ! この世界を創造した真なる神に、ここで死ぬ運命さだめではないと、俺こそが新たな導き手に選ばれたのだとなッ!?」


 その一声と共にウィバーンは急降下!

 ビブリオらと彼らが守る避難民を踏み潰しにくるそれを、私は自分を盾に支える。


「だから俺は神に体を捧げ、その祝福を受けたイルネスメタルを用いた機兵を手土産に、軍師としてあの野心家の王太子に取り入ったのさ!! あとはお前らも知っての通りだろうッ!?」


 私が返す刀で振るったグラップルアーム。だがウィバーンがこれに踏みつけた足を伸ばしての宙返りしたことで、空を掴まされてしまう。

 同時のサンダーボールはプラズマバスターで切り裂いたものの、やはりどうしても決め手に欠く。鋭い光線も怨念の障壁に鈍らされて、大飛竜の装甲を貫くには至らない。

 距離とバリア。この二つの壁を纏ったウィバーンは悠々と羽ばたいて私たちを見下ろす目を瞬かせる。


「やれやれ。無駄だと分かっているだろうに随分とあがくじゃないか。ええ?」


「当たり前だ! 人々を……いや、自分以外のすべての命を見下し、弄ぶつもりのお前の行い、見過ごしてなどおけるものかッ!!」


 対して私は拳を突き上げ、断固として抵抗する意思をぶつける。

 だがウィバーンは呆れたように首を振って返してくる。


「やれやれ。これでも俺は人間の抹殺にしか頭の無かったネガティオンと違って、人間どもの利用価値くらいは認めてるんだぞ?」


「何を言うのかッ!? 言うに事欠いて利用価値だなどとッ!?」


「まあ聞けって。お前らの事も、さんざん煮え湯を飲まされた恨みはあるが、それだけの力があることも知ってる。そこでどうだ、俺の手下になるのなら命まではとらないでいてやるぞ?」


「ふざけるなッ!? 誰がお前の手下になんてなるもんかッ!?」


 私たちを代表してビブリオが誘いの言葉を叩き落とす。しかし当のウィバーンにはまるで動じた様子はない。


「おいおい。俺は大真面目だぞ? 俺は人間の殺戮になんぞ興味は無いんだ。俺の導きに従うなら大事に扱うさ。お前らとの戦いの結果もお前らの力の現れだって水に流してやろうって言うんだ。お前らにとっても悪い話じゃないと思うがね?」


「なるほど。それでみなが助かると言うのなら、確かに悪い話では無いだろうね……」


「ライブリンガーッ!?」


 私がウィバーンの言葉を認めるのに、仲間たちからがく然とした顔が向けられる。

 まあ驚くのは分かるけれども、どうか最後まで聞いていて欲しい。


「……だが、その言葉が誠意をもって出たものならばだ。グリフィーヌに対する仕打ちに、今現在も無用だろう非戦闘員の虐殺……これまでの行いから悪いようにはしないだなどという言葉をどう信じろとッ!?」


 私たちが友への人質に、友が私たち対策の人質に。そんなことはもうごめんだ!

 そんな思いで私が誘いの言葉を断固と振り払えば、ウィバーンの目にザラリとしたノイズが走る。


「……へえ、グランガルトを連れてるあたり、大甘の甘ちゃんかと思っていたが、さすがにそこまでじゃあないか……せいぜいいいように使ってやろうと思っていたのによおッ!?」


 ばれていたならしょうがないと、本心も露にウィバーンは全力のサンダーボールを落としてくる。

 死者の怨念も込めた紫電の塊はそのサイズも先ほどまでの比ではない。

 避けてしまうことは出来なくも無いだろう。だがそれをやってしまえば仲間たちは、そしてラヒーノの生き残りたちは無事ではすまない!


「そんなものを落とさせてたまるものかッ!!」


 だから私はスラスターを全開にジャンプ! ラヒノスクローとダブルドリルのパワーアームの四つ腕でもって受け止める!


「そう来るだろうなぁ!? お前ならそうすると思っていたよライブリンガー!? 勇者のつらーい役目にも喜んで飛び込むお前だもんなぁ? だが創造主から授かった力も込めたこれをさっきみたいにいけるだなんて思うなよ?」


 ウィバーンが余裕たっぷりに言うだけあって、グランデのボディであっても押し潰されそうな圧がある。

 具体的には削りに行ったドリルが逆に削られ、触れた装甲も抉られてしまうほどに。


 だがそれでいい。


「ウィバーン、覚悟ッ!!」


「バカなッ!? グリフィーヌ、いつの間にッ!?」


「お前が我が勇者を嬲りものにしている間に、決まっているだろうがぁあッ!!」


 ビブリオとホリィによるエネルギーの回復と、それによる急速修復。

 戦線復帰を急ぐその努力を知れば、あとは信じるだけだ。

 その結果が上空に回り込んだグリフィーヌによるウィバーンの右翼切断なのだ!


「グアッ!? チクショウが! 俺の翼がぁあああッ!?」


 口汚くわめいて墜落し始めるウィバーンであるが、グリフィーヌの断った翼は既に断面から再生をはじめている。

 しかしその再生修復をおとなしく待つほど私は甘くないぞ!


「サークルソー!!」


 パワーアームの先端をすり減ったドリルから回転ノコへ。コントロールの乱れた特大のサンダーボールを切り裂いてその中へ。

 そして爆散するエネルギーを背に受けて高く、高く! 落ちてきたウィバーンとぶつかるまで!


「なんだとッ!?」


「野望の終わりだ、ウィバーンッ!!」


 鋼を食い破り抉る回転ノコと、ラヒノスクロー。そこからさらにグランデボディに残ったエネルギーを叩き込む!


「誰がこんな、こんなところで終わってたまるか! 俺は創造主に選ばれたんだよぉおおおおッ!!」


 これにウィバーンは崩壊を始めた機体を躊躇無く自爆させてきた。

 この威力に地上へと落とされる中、私は自爆から飛んでいく毒々しい緑の破片を見た。


「逃がすと思うのかッ!!」


 だがそんな手はお見通しだと、グリフィーヌが離脱しつつあるイルネスメタルを切り裂いた!

 その間に私はスラスターに加え、両足のショックアブソーバーを全開に着地。片膝立ちに仲間たちのいる地上へ帰還する。

 すると、地上から二度も爆発に巻かれたのを見ていたのだろう。仲間たちがあわてて駆けよって来てくれる。


「大丈夫なの、ライブリンガー!?」


「ああ。任せてくれよ。グランデのボディは頑丈なんだから」


 そうして大事無いと心配そうな仲間たちに答えていると、グリフィーヌもまた空から降りてくる。


「すまない、ライブリンガー……軍師にさせられていた男は、救えなかった……」


 そうして差し出された手のひらには、干からびて小さくなってしまった人の遺体がある。


「グリフィーヌひとりが背負うことではないさ。私もウィバーンを倒れたものと野放しにしてしまっていた。せめて敵討ちはできたと思おう」


 そうだとも。出し抜かれて取り零してしまった掛け替えないもののことを、ただ悔やんでいても仕方がない。これからどれだけ減らせるのかが私のすべきことだろう。

 犠牲者を悼み、決意を新たにする私たちの周囲では、砕け散った鋼の飛竜の残骸が溶けて消えていくのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] やはり「我が勇者」のふりがなは「マイダーリン」なのでしょうか。
[一言] ようやく軍師だったウィバーンとの決着ですが…… 創造主とは一体何者なのやら……
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