125:追われる人たちにパワフルな救いの手を!
ボク、ビブリオは今、クルマになったライブリンガーの中でいっしょにかけつけにいってる。
姉ちゃんとグリフィーヌから機兵に追われてる馬車を見つけたって知らせを聞いたからだ。
「ライブリンガー、まだなのッ!?」
「もう少しだ! いつでも出せるように魔法を構えておいてくれ!」
「いつでも行けるようにしてるって!」
ライブリンガーの言うように、地図の姉ちゃんだってマークはどんどん近づいてる。
その証拠だって言うみたいに、グリフィーヌが剣を使った時の、雷が落ちたみたいな音だってすぐ近くに。
けどもっと早く、ほんの少しでも早くって思ってると、ボクの乗ったライブリンガーの目の前に馬が飛び出してきた!
「行くよ! チェーンジッ!!」
これにライブリンガーは鋭い合図から変身! 馬車との正面衝突を、人型に変わりながら飛び越えよけて、魔法障壁を張ったボクを抱えて前に。
あれが追われてた馬車だっていうならもう目の前に……って思ったボクのすぐ目の前で雷の光が!
「うわっほい! 目がチカチカする……」
はずみで目は閉じたけど、それでも痛いくらいな目をボクは急いで癒しの水で洗う。
そんなボクをいきなりな揺れがふらつかせる。
「ビブリオ、大丈夫かい!? 堪えてくれよ!?」
「う、うん! ボクの事は気にしないで!」
ライブリンガーがしっかり持っててくれてるからボクは平気だった。だけどボクを心配したその声は重さをこらえてるみたいで、ボクを気にしてよけれる攻撃をよけれなかった感じだ。
すぐにでも邪魔になるんじゃなくって手伝うんだ。そんな気持ちで目を直したボクが見たのは、見上げなきゃいけない鋼の巨人だ。
そりゃ鋼の巨人なんだから、ボクからしたら見上げなきゃいけないのは当たり前なんだけども。それがライブリンガーの手の中からでもって言ったらおかしいよ!
「わっほい、機兵バンガードッ!?」
ピエトロがイルネスメタルになって取りついたのとそっくりな鋼の巨人が、その重みに任せてのし掛かってくるのに、ライブリンガーは重みをそらしながらバックステップ。
けれど重みから逃れたライブリンガーをめがけて、巨大な剣が追っかけてくる。
「ビブリオ、目を閉じろッ!!」
けれど警告からすぐあとに、雷と金属のおれる音が続いてひびいて。
ちょっと間を置いて目を開けたら、根元から斬られてクルクルって飛んだ剣と、グリフォンになって飛んでくグリフィーヌが見えた。
この間にライブリンガーが間合いを開けると、ボクの隣にホリィ姉ちゃんがふわって降りてくる。
そうか、間合いを取ったのは姉ちゃんを受け止めるためでもか!
「ありがとうライブリンガー!」
「なんの! バンガード相手に無事で良かった!」
「こっちを見つけるなりに合体して来たんだけど、グリフィーヌのおかげでね。どっちかと言うと戦うグリフィーヌに掴まってる方のが大変だったけれどね」
そう言ってため息を吐きながら体をほぐして見せてるあたり、ホントに大丈夫みたい。
姉ちゃんは姿を見て安心したボクにうなずくと、ふたりで手を握ってライブリンガーの手から飛び下りる。
それで着地からすぐに、ふたり分の魔力と二つの朝焼けの輝石を合わせた天の魔法を鋼の怪物に浴びせて目つぶしにする。
「がんばって、ライブリンガーッ!!」
「援護ありがとう! 来てくれマキシアームッ!!」
ボクらの応援にうなずいてからの、三番目のマキシビークルへのコール。
これに地面から光の門が開いて、大きな鋼の二本腕が出てくる。
ぶあついハサミみたいな爪がバンガードの足首をつかむと、ひょいと振り上げては地面に叩きつける。
そのままドッシンドッシンって振り回して放り投げると、自由になった爪を地面に突き立てて結界を張る。
結界の中で重たい体を立ち上げるみたいに変形してく熊のマシン。
カッコいい熊の顔の出た胸が開いて頭が出ると、その空洞にライブリンガーは力強いかけ声を上げて飛び込むんだ。
「ライブリンガー、グランデッ!!」
わっほい! パワフルーッ!!
ボクらが飛びはねちゃうくらいに強く地面をふみならしたライブリンガーグランデはグルンて振り返ってアームを振り回す。すると立ち直って飛びかかってきてた機兵バンガードの剣と激突だ!
ソーっていう回転するノコギリになってたアームの先っぽはギャリギャリって火花を散らして剣を切る。
機兵バンガードがまた壊れた武器を直しながら後ずさりするけれど、ライブリンガーは逃がさない。逆のアームを伸ばして手首を掴まえると、剣を断ち切った回転ノコギリの腕をまたバンガードに。
だけどバンガードは取り込んでた兵士を盾にするために体の表面に出してくる。
「グラップルッ!!」
でもライブリンガーは、一度見せられた卑怯な手なんてお見通しだ。ノコを当たる前に取りかえると、人質にされてる機兵乗りをバンガードから奪い取ったんだ!
「任せてライブリンガー!」
「ああ! どんどん助けていくからね!」
救出成功した兵士が手放されて飛んでくるのを、ボクと姉ちゃんは空気と水のクッションでキャッチ。バースストーンのエネルギーもこもってるから、イルネスメタルの影響だってちょっとしたのなら治せちゃうよ!
そんなワケで、ボクたちさあ来いってかまえてたけど、それは空振りさせられちゃう。
機兵バンガードが攻撃に合わせて人質を出してくるつもりで仕掛けたライブリンガーに対して、敵は逆に人質を出さずにその攻撃を受けたんだ!
そのまま構わずに踏み込んで、クローのめり込んだ腕と、捕まった手首を千切りながらライブリンガーの胴体にぶちかましを!
「まさか、人質を盾にするんじゃなくて、吸い取りきるつもりなの!?」
姉ちゃんの心配を大正解だって言うみたいに、機兵バンガードは激突の固くて重たい音がひびいてる間に、もげた腕を再生回復。その勢いで機体全体をブクブクって膨らませて背中から火を噴いた!
これって、人の命を吸い上げて作った大きさと重さで、ライブリンガーグランデをボクごと押し潰すつもり!?
でもダメ。
だってライブリンガーグランデはすごいパワーで押し込まれてるはずなのに、その場からぜんっぜんに動いてない。びくともしてないんだから!
押し潰そうとしてるのに、まるきり押し込めてもないことに気づいたバンガードはグランデボディを抱えた腕で、でたらめにパワフルなメタルボディを殴りつける。
それでもライブリンガーグランデはぜんぜん堪えないでタックルとパンチを受け止めてる。
「救出を急ぎたいが、ドコに固められているのかが正確に分からないことには……!」
「それならまかせて!」
「時間かせぎもついでに!!」
反撃を食らわせてやるポイントを探すライブリンガーのつぶやきに、ボクと姉ちゃんは構えっぱなしだったふたりがけの回復魔法を全力全開で。でもかける相手はライブリンガーだけじゃない。むしろボクラのドでかい勇士を押し潰そうとするバンガードがメインだ!
天と水を合わせた清らかな癒しの雨は組み合った鋼の巨体だけじゃなく、かたっぽのエネルギー源にされてる人たちも元気にする。
この回復エネルギーは、バケモノ機兵の胸の中であったかいオレンジ色の光を放つんだ。
「ありがとう二人とも! ラヒノスクローッ!!」
目印のお礼に続けて、爪をおこしたパンチがバンガードの体を突き破る。そして引き抜いたなら、グランデの力強い手の中にはイルネスメタルの塊がしっかりと握られてたんだ。
「グリフィーヌ、任せたッ!!」
「おうともさッ!!」
まだ金属っぽい筋の繋がったメタルを引っ張りながら、ライブリンガーは二本のパワーアームでバケモノ機兵の機体を放り投げた!
空に舞い上がった金属の塊に、ダメ押しだってチェーンハンマーにチェンジしたアームを叩きつけてもっと高くに。それを空で待ち構えてたグリフィーヌが十文字に切り裂いて爆発させたんだ!
「わっほい! さっすがライブリンガーとグリフィーヌッ!!」
「ビブリオ待って! 勝ちは勝ちだけど、このままじゃせっかく助けた人たちが!」
そうだった怪物退治の成功に飛びはねてる場合じゃなかった!
ライブリンガーの手のひらでバースストーンの光に清められてるイルネスメタルだけど、このままじゃ前みたいにしおしおになっちゃう!
だからボクと姉ちゃんも治癒の魔法を注いで、結晶体にさせられた人たちを回復させる。
その効果があったのかな? 割れた金属結晶の中から出てきた人たちは、ちょっと痩せてた感じはあったけど、髪が真っ白のしわしわになったりはしてなかった。もしかしたら鍛え方の違いかもしれないけど。
「じゃあ戻ろうか。ご隠居様も心配してるだろうし、追われていた人たちにももう大丈夫だって知らせておかないと」
ずいぶんマシな状態で助けられたことに、ライブリンガーが柔らかく眼を輝かせるのにうなずいて、ボクたちは逃げてった馬車を追いかけに行くんだ。




