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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第五章:邪神、暗躍
123/168

123:力の合体! 新たなる巨大形態! ※挿絵アリ

河合ゆき氏より頂いたライブリンガーグランデのイラストを挿絵として使用させていただきました

「バカなッ!? ここで、ここへ来て新たな勇者に転生したというのかッ!? 撃て! 撃ちまくれッ!!」


 新生ラヒノスことマキシアームの登場に、仮面軍師は足元が焦げ付いたかのような勢いで攻撃を指示。

 これに機兵達だけでなく、投げ飛ばされて転がったバンガードも体勢を立て直して攻撃に。

 しかし同時に、マキシアームがその両腕を地面に突き立てる。

 重々しい音を立てて大地を波立たせるようなこの振動は、機体の周囲に光の壁を作り上げ、向けられた攻撃の出鼻をくじく。


 そして地面に突き立てたアームを支えにして、マキシアームはその巨体を立ち上げ、展開する。

 起き上がって露になった雄々しいベアヘッド。その両脇には、アームの基部を裏にした分厚い肩と、そこから伸びる力強い腕が。

 それを押し上げる形で続くのはクローラー部だ。基部を腿、四つの大クローラーの二つを一組に重ねたものを重々しく強靭な下腿として完成した脚部が大地を踏みしめるのだ。

 そうして完成した巨体はベアヘッドの突き出した胸部を展開。中に納めていた頭を持ち上げ、空洞を露に。

 この空洞に何が収まるべきかは言わずもがな。カーモードにチェンジした私はその勢いのままに跳ね、招かれるまま巨体の空隙に機体を納める。

 重々しい音を立てて機体が閉ざされるや、私の意識はマックスになる時と同じく、大きく拡がっていく。

 合わせて、コアとなった私に代わって表に出たバトルヘッドの眼が輝き、額にバースストーンが現れる!


「ライズアップッ!!」


 これが第三のマキシビークルとひとつになって生まれた新たな私の巨大戦闘形態!

 その名は――!


「ライブリンガー……グランデッ!!」


挿絵(By みてみん)


 私が地鳴りを響かせての名乗りを受けてか、近くに倒れていたビブリオが、微かなうめき声を上げて目を覚ましてくれる。


「な、なにがライブリンガーグランデかッ!? 所詮は急場凌ぎの間に合せだッ!!」


 しかし安心してもいられない。私はその場に膝を突いて、ビブリオをマックス以上に分厚く広くなった掌に保護。同時に肩から伸びるもう一対の腕を振るう。

 先端がショベルクローになったパワーアームが空間を一薙ぎにすれば、迫っていた魔法弾が削り取られたように消え失せる。


「プラズマ、バスターッ!!」


 続けて首を巡らせながら額から放った光線が、別方向からも迫っていた光弾幕を一方的に吹き飛ばす。


「う、わっほぅいッ!? ライブリンガー! ライブリンガーなんだね!?」


「ああ。ラヒノスがくれた新しい姿、グランデだ」


 意識のハッキリしたビブリオの驚きの声に、私は目を瞬かせてうなずく。

 しかしそこで友との語らいに影が差す。

 これにビブリオをかばえば、馬頭鬼バンガードの拳が私の腕との間で鈍い音を立てる。

 しかし受けた私の方は多少響きはしたもののそこまで。逆に殴り付けてきたバンガードの拳が潰れることになった。

 思いがけぬダメージにたたらを踏むバンガードだが、潰れていない手は私の踏み込みを牽制すべく伸びてきている。

 しかしこれは私のパワーアームが弾いてさばく。

 叩きつけ、振り上げ、横薙ぎ、袈裟懸けと、四つの鋼の腕が縦横無尽に迫る。

 だが私はこのことごとくを、ビブリオを抱えたのとは逆の腕ひとつで受け、ふたつのパワーアームで叩き、払ってさばいていく。

 見るからに武骨で堅牢。反して素早さしなやかさに欠く印象のツインパワーアームであるが、その動作は実際のところ機敏だ。

 そもそもが一本のアームのとは違う、器用な運用を目指して作られたのが双腕仕様機。それを模して生まれ変わったこのパワーアームが鈍重なはずもない!


「グラップルッ!!」


 そして私の掛け声に応じてアーム先端のショベルバケットが瞬間換装。物を掴むのに適したモノへ。

 そして伸びてきた腕のひとつをキャッチ。逆側の浅く開いたグラップルクローを人質の兵士さんを浮かせたところへ突き込む。

 これで引き抜けば、果たしてその先端には人質にされていた兵士さんの姿が。

 この力づくな人質救出に動転した馬頭鬼の胴体を、私は空いた手で掴み、吊り上げる。


「頼むよビブリオ」


「わっほい、任せてよ!」


 救出した兵士さんをビブリオのいる手にひょいと送って、両のパワーアームを自由に。そうして始めるのは吊り上げたバンガードの解体だ。

 ふたつのパワーアームが、機兵でできた鋼の巨体をまるであぶった毛をむしるように引き千切り、その奥に閉じ込められていた兵士達をつまみ出す。

 絶え間なく硬く鈍い音を響かせて、グランデの私と並べるほどだったバンガードの機体はみるみる内に小さくなっていく。

 そしてほどなく、歪で毒々しい緑色の結晶体近くに捕らわれていた人も救出。あとは核そのものになっているのだろうピエトロを残すのみ。

 しかしそこで、結晶体はまるで用済みだとばかりに機体から離脱。羽根でも生えたかのように一直線にある方向を目指す。

 その方向とはロルフカリバーの護衛を受けたホリィだ!?

 これまで巨体を操ってきたエネルギー全てを込めたのだろうその飛翔は恐ろしく鋭く、ホリィを貫きに――。


「それを許すと思うのかッ!?」


 しかしそれはグリフィーヌが叩き落とす。

 追う手から解放された彼女が見逃すはずもない!


「わっほい! ありがとうグリフィーヌ!!」


「さすがだ!」


 ビブリオと共に喝采を上げつつ、私はパワーアームでバンガードのコアを捕まえる。

 グラップルクローに摘ままれて、毒々しい緑の結晶体は芋虫が身悶えするように蠢く。

 それを私はしっかりと捕まえたまま、グリフィーヌにホリィを任せて飛んできたロルフカリバーをキャッチ。切っ先を暴れる結晶体に突きつける。

 そしてグランデのボディと(ロルフカリバー)の共鳴で高まったバースストーンのエネルギーを浴びせる。

 すると緑の結晶体が砕けて、ピエトロの姿に戻る。

 いや、戻ると言うのは正確ではないか。身に付けているものから、ピエトロ本人には間違いないのだろうが……。


「うわ……髪が真っ白で、体もガリガリ……」


 ビブリオが声を震わせて呟いたとおり、イルネスメタルから解放されたピエトロ・ファトマは、丸々としていた全てが枯れ木のように痩せ細っていた。

 その弱り方は掌に乗せても、自分で体を支えることもできないくらいで、まるで生命力を搾られ切ってしまったとしか思えないほどだ。


 服の重みでさえ折れてしまいそうなその弱々しさに、私は先に救出した人に支えてもらって、地面に下ろすのだった。

 直後、固めた魔力が迫る。が、振り下ろしたショベルバケットで手元を守る。

 弾いたその凶弾を辿れば、こちらに手を向けた仮面軍師の姿があった。


「おやおやおや。自分の敵を庇い立てするとは、勇者殿はお優しい事で」


「お前!! 味方を撃つとか、なに考えてるんだッ!?」


 鼻で嗤う仮面軍師に、ビブリオが我々の気持ちを代弁して叫ぶ。しかし軍師はこの怒りの声に、軽く肩をすくめて返してくる。


「ふん。そんな鋼魔に呪われる程度の輩が我らの味方だなどと、とんでもない誤解だ。それではまるで我々こそが鋼魔の後釜であるように聞こえるぞ、勇者御一行?」


「ほざけぇッ!? 出涸らしになったあの男が持っていた杖、アレに使われていたのは紛れもなく鋼魔のイルネスメタルで、それを使わせていたのはお前だろうがッ!?」


「おおっと、これはさすがに元鋼魔の裏切り者! 自分の古巣の事、色変わりを起こした心臓代わりのことはお詳しいなッ!?」


 グリフィーヌの追求にも、仮面軍師は彼女の出自をえぐり出して切り返す。

 このあんまりな物言いに、私は取り込まれた人たちだけでなく、グリフィーヌも守るため、一歩踏み出して仮面軍師の視線を遮る。


「そちらがそのつもりなら、彼らはこちらで安全なところまで護送します。この場は撤退していただきたい」


「なるほどなるほど。さすがは勇者殿。親切な申し出はありがたい。交戦したばかりの相手であってもそんなに丁重に扱ってくれるとは、いやはや!」


 皮肉のつもりだろうか。ことさらに私の申し出が甘すぎるほどに甘いと強調してくる。

 しかしなんと言われようと、さっきの躊躇ない攻撃を見たからには、もう彼に引き渡すつもりにはとてもなれない。

 そうして一歩も譲らずに向かい合う私たちに、重たい足音が割り込む。


「いや、軍師殿。ここは勇者様の親切に甘えさせてもらいましょうや。我々ももうバテてて、それこそ伯爵家の後継ぎ様みたいに枯れてしまいそうで」


 機兵の乗り手を代表したこの言葉に、軍師は自分の率いる巨体を見やる。

 これに機兵たちはとたんに武器や肩を落としたり、その場に膝をついたりと疲労を主張し始める。

 このあからさまなまでに代表者の言葉の裏づけに入った機兵たちに、軍師はため息混じりに頭を振る。


「……正直、今は我々ももう付き合いきれんのですわ。何を今さらと思うかもですが、どうかご勘弁を……」


 隊長格の機兵がグランデボディの脚にこっそりと声をかけるのに、私はうなずいて返す。

 立場が違えば呑み込まなくてはならないこともある。それでも出来る時に出来る限りを尽くしてくれているのだから、今さらなどと思うはずもない。

 こうしてすっかり士気が底をついたのを受けて、仮面の軍師はそれはそれは深いため息を吐く。


「戦闘不能とあっては是非もなしか。この場は退かせてもらうとしよう」


 この引き上げの指示を受けて、機兵たちはズンズンと重たげな足音と共にこの場を退いて行ってくれる。

 そして私たちもまた迎えに来てくれたイコーメの御隠居らと合流して、脱出に向けて案内を受けるのであった。

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[一言] 苦楽を共にした仲間との合体が、急場凌ぎの間に合わせなものか! グランデの威力を受けてみよ!! 新合体おめでとうライブリンガー!!
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