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合宿(7) 拒絶(中学3年生5月)

 優香の傍にしゃがんで、小さな背中に手を添えて身体を支え、もう片手で白く柔らかな頬を濡らしていく涙を拭ってやりながら、

「ひどく痛む…?」

と、真斗は優香に声をかけた。


 優香は泣きながら、首を横に振った。

 しばらくお湯に浸かったことで、血行が良くなったのか、肛門の痛みはやわらぎ、冷たかった手足にも血が通いつつあった。

「もう少し浸かる?」

「…もう、大丈夫」


 優香は、真斗に抱え上げてもらって、バスタブの縁に寄りかかり、下半身をバスタオルで拭ってもらった。


「軟膏を塗るね」

 背後から声をかけられ、お尻がぐっと開かれて、お尻の穴に軟膏が塗られていく。

「痛い?」

 優香がまた首を横に振ると、

「内側にも軟膏を入れるから、動かずに楽にしていて」

 真斗は注入容器の先端を優香の肛門に挿し、容器を潰して薬を注入した。



 着替えを終えた優香が再びベッドに運ばれたのは、夕食の時間も過ぎ、9時をまわった頃だった。

 食事をする気力もなく、優香はそのまま眠りについた。


 翌朝、ようやく自力で起き上がって歩けるまで回復した優香は、朝はおかゆ、昼は煮込んだうどんを、ゆっくりと時間をかけて食べた。

 昼食を食べてしばらくすると、軽い腹痛と便意があり、肛門の痛みを恐れた優香は、急いで座浴の用意をして、お尻を温め、軟膏も注入してからトイレに入った。


 念入りに排泄の準備をした肛門から噴き出した便はゆるく、今の優香にとっては、むしろちょうど良い状態だった。

 下痢気味ではあるものの、壊れた蛇口から吹き出す、止めようのない水のような激しい下痢は治まっていた。むしろ、適度にゆるいのが幸いして、恐れていたようなひどい排便痛もなかった。

 優香は安堵して、シャワートイレでお尻をきれいに流し、トイレットペーパーを押し当てて、丁寧に水分を拭き取ると、軟膏を使った。


 GWの休暇中は、これくらいのゆるい状態が続いたらいいのに、と優香は思った。

 学校がなければ、何度も便意に襲われてもすぐにトイレに行けるし、シャワートイレや浴室をゆっくり使うこともできるので、排便前後のケアも丁寧にできる。

 浣腸しなくても排便できる分、下痢気味の方がむしろ都合が良いように思えた。


 保健室登校で莉緒と出会って悩みを共有してから、浣腸に対する抵抗感が少し薄らいでいた優香だったが、昨日、浣腸後の激しい排泄で気を失ってしまったことで、浣腸への羞恥と嫌悪感を、改めて強く意識せずにいられなかった。


 以前も、浣腸して我慢が出来ずに廊下で少し漏らしてしまったり、看護師さんの前で排泄してしまったことがある優香は、それが浣腸の最も恥ずかしい体験だと思っていたが、今回、気を失ってしまったのはそれ以上にショックで、恥ずかしいだけでなく、浣腸という行為が恐ろしく、強い拒絶感を抱くようになってしまった。


 優香は、自分が気を失っていたのがどれくらいの時間なのか、一体いつから気を失ってしまったのか、はっきりと思い出すことができなかった。


 合宿から帰宅し、腹痛とガスの膨満感を一刻も早く解消したくて、自分からお願いして浣腸してもらったことは覚えている。

 下痢をしていたので、浣腸液を注入されているときから、お腹がゴロゴロ鳴って、我慢しながら何度も意識を失いそうだった…。

 その後、どうなったのだろう。

 自分で歩いてトイレに行けたような気がするが、その後襲ってきた便意はいつも以上に激しく、肛門の内側から便が押し寄せるだけでなく、まるで外側からも無理やり何かを突き立てられているかのように、自分の意思とは関係なく、肛門が強く押し広げられ、何かに蹂躙されるような苦痛に襲われて、何度も強く息むうちに意識が遠のいていって…。


 優香は改めて、浣腸について思いを巡らせた。


 浣腸。かんちょう…。カンチョー…。


 必要な治療だから、と説明されても、口にするのも恥ずかしく、浣腸されている所を見られるのはもちろん、使っていることも誰にも知られたくない秘密の薬。


 本来は外に排泄する器官であるお尻の穴から、反対向きに薬を注入する、浣腸という異様な行為…。


 その恥ずかしさは、お尻の穴を人前に晒さなくてはいけないことが一番の理由だと、今まで思っていたけれど、そうではなく、その行為の、自然の摂理に反する異常性や、それによって、排便のコントロール、ひどいときは意識自体を失ってしまうことの方が大きいのだと、思い至った。


 恥ずかしい姿を晒して、人の手を汚させてお尻の穴に薬を注入してもらった上に、自分の意思で制御できずに糞便を放出して、激しい排泄で気を失って、汚したお尻の後始末さえできずに処理してもらって…。


 もう浣腸なんてしたくない…。


 二度と浣腸で失神するような恥ずかしい目に会いたくないし、自分の排泄ぐらい自分でコントロールしたい。

赤ちゃんだってできていることなのだから…。


 それに、10日ほど後には3泊4日の修学旅行が迫っていた。

 少なくとも、修学旅行中は浣腸なんてできないのだから、浣腸に頼らず過ごせるようにしないと…。


 今まで、お腹を壊さないことも考えて、便秘に良いとされる食べ物ばかりを撮るのは避けていたが、これからはたとえ下痢をすることになっても、浣腸を使わず自力で排便できるようにしよう、と優香は心に決めた。





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