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合宿(2) 下痢と貧血(中学3年生4月)

排泄の描写があります

お腹も落ち着き、再びうとうとしていた優香は、部屋のみんなが戻ってきたざわめきで目が覚めた。


「優香寝てるのかな…」

襖を開けながら、誰かが言う声に、優香は布団から起き上がり、

「ちょっと寝たら元気になったよ」と答えた。


「ごめん、騒がしかったから目が覚めたよね」

茉莉果が優香を気遣って言った。

「ううん、もう大丈夫」

「起きてて大丈夫? 優香が明日の練習出れないと、木下先生も心配するよ」

どこか含みのある彩奈の言い方に、優香が問い返すように彩奈に視線を向けると、

「木下先生、優香のこと気に入ってるから、優香がまた部活に出るようになって嬉しいんじゃない。今日も優香にべったりだったでしょ」

「気に入ってるんじゃなくて、心配してるだけだと思うよ…。去年、体調悪くなって倒れちゃったから…」

あまり触れたくない話題だったが、話の成り行き上、優香は言った。


みんなの前で、また坐薬の話をされたらどうしよう…、できるだけ知られたくないし、自分でももう思い出したくないのに…。

優香の願いが通じたのか、彩奈は去年のことは蒸し返さず、

「明日は練習出られそう?」

とだけ聞いた。

「うん、もう大丈夫。ありがとう」



 翌日。

 練習には参加したものの、優香は早朝からの練習がこたえて、やはり夕方には疲れてしまい、夕食のとんかつにはほぼ箸をつけず、夕食後の打ち上げにも参加せずに、早めに部屋で休むことにした。


 一人、布団に横になっていると、部屋のドアが開く音がした。


 まだ打ち上げが始まったばかりのはずなのに。

 優香が不審に思っていると。襖が開き、部屋に戻ってきたのは未央だった。


「どうしたの?」

 優香が起き上がりながら言うと、

「あ、具合悪かったら寝ててね。私もちょっとお腹が痛いから、切り上げてきたの」

「お腹? 大丈夫?」

「うん…。原因はわかってるんだー。一昨日から便秘で、出てないから…」

「そうなの…。お薬は?」

「合宿中は飲めないよー。効き出すと何回もトイレに通うことになるもん。本当は金曜日の夜に飲みたかったんだけど、バスの中で効いてきて、トイレ行きたくなると困ると思って飲めなかったんだ。こっちに来てから出たらいいな、と思ってたけど、やっぱり合宿とか旅行中って、便秘が酷くなるね…。あー早く家に帰って、薬飲んでスッキリしたい!」

 未央はスウェットの上から下腹をさすりながら言った。


「そっか…あと1日の辛抱だね」

「優香はそんなことないの?」

 不意に自分のことを聞かれ、優香は戸惑った。


 もともと、排泄に関する話題が恥ずかしくて苦手なことに加え、彩奈と仲が良い未央に、自分の体調を話すと話が広がってしまうかもしれない。以前は、莉緒が病院で浣腸された話や、優香が合宿で熱を出して坐薬を使った話を大声でしていたし…。


 優香が戸惑った様子で黙ってしまったのを見て、

「あ、優香はこんな話、しないタイプだったよね。私とは違って、おしとやかだもんね」

 特に嫌味な様子でもなく、笑いながら言った未央に、優香も少し心を許して、

「おしとやかというか……体調の話って、なんか恥ずかしくて…。でも、私も時々…便秘になるから、辛さはわかるよ」

と言った。

「優香も薬飲んだりして出してるの?」

 未央の問いかけに、優香は浣腸をしているとは言い出せず、

「うん…。ひどい時は病院でお薬を出してもらってる…」

と曖昧に答えた。

「そうなんだ。病院行くって、結構ひどい便秘なんだね。私はいつも市販の薬で治してるよ」


 これ以上、詳しい話はしたくない…。


 優香がそう思った時、ちょうどお腹が下るギュルギュルという音が鳴った。

 思いがけず大きな音が鳴り、恥ずかしかったが、話を切り上げるのにはちょうどよかった。


「ごめん、ちょっとトイレに行ってくるね…」

 優香はカバンから注入軟膏の入ったポーチを取り出すと、部屋の外のトイレに行くために、スリッパを履いた。

襖の向こうから、未央が

「気にせず部屋のトイレを使ったらいいのに」

と言うのが聞こえたが、お腹の具合から、音も臭いもひどいことは明らかなので、部屋でするわけにはいかない。


 優香は、未央に返事をする余裕もなくドアを閉めると、廊下の隅、非常階段横のトイレの表示を目指して、駆け出した。


 冷や汗をかきながら、小走りでトイレにたどり着き、入口に並べられたサンダルのようなスリッパに履き替えて個室のドアを開けると、3つ並ぶ個室は全て、優香の苦手な和式だった。

 しかし、別のトイレに移動する余裕もない。

 優香は和式便器にしゃがみ込むと同時に、お尻から水のような便が勢いよく飛び出した。


 ピューーーーー、ブチュビチュビちゅーーーブリュっ。ブボッ…ブボッ…ブリュリュリュリューーー。


 水のような便がひとしきり続いた後は、熱い泥状の便が溢れるように出てくる。


「うぅ…うーーん……はぁはぁはぁ…」

 優香は息を荒らげ、苦痛で歪めた顔に脂汗を浮かべながら、下し続けた。


 便が止んでも、下腹からお尻にかけての痛みと肛門の灼熱感が治まらず、痔を患って以来、強く息むことを禁じられていた優香だったが、早く出し切って苦痛から解放されたい一心で、何度も息んでしまった。

 

 ブリュッ…ブリュッブリュッ……


 溢れ出すような下痢は止まったと思っても、強く息む度に、まだ少し軟便がこぼれ出る。


 優香がどうにか排泄を終えてお尻を拭い、注入軟膏を使って、立ち上がることができたのは、トイレに駆け込んでから、10分以上が経ってからだった。

 激しく下したのと、長くしゃがみこんでいたせいで、優香は立ち上がった途端軽い貧血に襲われ、しばらくトイレの壁にもたれかかるように手をついて、肩で息をしながら、歩けるようになるのを待たねばならなかった。


 少し血の気が戻った優香が、手を洗ってトイレから出ると、ちょうど向こうから廊下を歩いてきた木下先生と出くわした。


 憔悴した様子で、フラフラとトイレから出てきた優香に、木下先生は

「佐伯…。大丈夫か? 顔色が悪いようだけど…」

と声をかけた。


 思いがけず、木下先生と出くわし、動揺した優香は

「大丈夫です」

と答えたが、その時、手にしていたポーチを落としてしまった。


 ポーチのファスナーが閉まりきっていなかったらしく、中から注入軟膏の容器が飛び出し、廊下のカーペット一面に散らばった。

「!」

 優香は慌ててしゃがみ込み、一つ一つ透明の袋に個別包装された、小さな浣腸のような注入軟膏の容器を拾い集めようとした。


 優香が集め終わる前に、木下先生もしゃがんで、遠くに散らばった容器をいくつか拾い集め、優香に手渡してくれた。

「ありがとうございます…」

 優香は恥ずかしさでうつむき、目をそらしたまま、お礼を言った。


 木下先生は、痔の薬だと分かってしまっただろうか…。


 恥ずかしさで、とにかく急いでこの場から立ち去ろうとした優香は、急に立ち上がろうとしてまた貧血に襲われ、足元がぐらりとよろめいた。


「大丈夫か!?」

 木下先生が慌てて優香の身体を支えてくれた。


 優香はしばらく木下先生に抱きかかえられるようにして、胸元にもたれかかっていたが、頭に少し血の気が戻ると、

「すみません、もう大丈夫です」

と言って、身体を離した。


「貧血? もし出血がひどいなら…」

 木下先生の言葉に、優香は酷い痔の出血を疑われたことを知り、慌てて、

「そうじゃないんです…。しゃがんでて急に立ち上がったから、立ちくらみになっただけで…」

と訴えた。


「部屋まで一人で戻れるか?」

はい、と答えようとして、優香はまた腹痛に襲われ、

「すみません、もう一度トイレに…」

と言い残して、トイレへと駆け戻った。


 トイレ用のサンダルで、床に敷かれたタイルの上を走る硬い足音、余裕なく個室のドアをバタンと閉める音に続き、


 ブリュッ、ブリュリュリュリューーー


 我慢できず、勢いよく噴出させた下痢の音が、廊下まで響き渡った。










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