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悩み(中学3年生4月)

4月も後半になり、優香の頭を悩ませる二つの問題があった。


一つは、4月の終わり、GWに実施される吹奏楽部の練習合宿だった。

去年同様、2泊3日の合宿は、特別な理由がない限り、2年生と3年生の部員は参加する決まりになっている。


優香も参加したい気持ちはあるものの、去年、高熱を出してしまい、坐薬を使ったことがトラウマとなっていた。

それに、合宿で体調を崩し、その後、何日間も練習を休むことになったので、先生や他の部員にかける迷惑を考えると、合宿に参加して体調が悪くなるくらいなら、最初から参加しないほうが良いような気がする。


問題は茉莉果だった。

前野くんと付き合っている茉莉果の邪魔になるのが嫌で、優香は以前と比べて茉莉果と距離を置くようにしていたが、茉莉果の方では、そんな優香を気にかけているようだった。

優香が合宿に行かないと言ったら、いくら体調に不安があることが理由だと説明しても、茉莉果は優香が自分だちに気を遣っているのだと思って、考え直して参加するように誘ったり、合宿中もできるだけ優香と一緒に過ごすようにするだろう…。


そして、もう一つの悩みは、5月の修学旅行だった。

修学旅行は3泊4日の北海道旅行で、楽しみではあるものの、合宿以上に体調が不安だった。

4日に渡ってお通じがないと、気分が悪くなったり、腹痛で倒れてしまうかもしれない。

かといって、自分で浣腸することもできないし、できたとしても、みんなと同じ大部屋で、こっそりと浣腸を使うような時間も方法もないだろう…。


日曜日。

優香と莉緒は勉強の名目で、毎週お互いの家で過ごすようになっていた。

今週は優香の家に遊びにきた莉緒に、優香は聞いた。


「莉緒は修学旅行行かないの?」

「うん。集団行動でお腹が痛くなるのが怖いし、新しいクラスに友達もいないし」

「そっか…。私も行かないことに決めてしまえたら、気が楽なんだけどな…」

「行かないと、家族や友達が心配する?」

「そうなの…。修学旅行だけじゃなくて、その前に部活の合宿もあって。2泊3日なんだけど、去年は2日目の夜に熱が出て、みんなの前で吐いちゃったの…。その後、病院に行って坐薬を処方されて。それで彩奈には、木下先生に坐薬を入れてもらったんじゃないかって誤解されて、噂話されるし…」

「彩奈は、そういう噂話好きだからね…」

「今年も体調悪くなったらどうしよう、と思うと心配だし、憂鬱で…」

「無理しないように気をつけながら、とりあえず合宿は参加してみたら? それで大丈夫だったら、修学旅行も行ける自信がつくんじゃない? 合宿で無理そうって思ったら、修学旅行はやめたっていいんだし」

「うん…。修学旅行は4日間だから、お腹が不安だけど…」

「便秘?」

「うーん、普段は便秘なんだけど、疲れると大抵お腹を壊すから、旅行中はどうだろ…」

「どっちも対応できるように、両方の薬を少しずつ持って行ったら?」

「便秘の治療に良くないから、下痢を止めるような薬は控えるように言われてるの。前に飲んだ時、便秘が悪化しちゃって…。便秘も、医療用の浣腸を使わないと対処できないし…」


摘便のことまでは言えなかったが、体質や浣腸のことをこんなにも相談できるのは莉緒だけで、優香は莉緒の存在をありがたく思いながら、不安な気持ちを吐き出した。


「医療用の浣腸って、病院でするような大きくてチューブが長いやつ? 自分でしてるの?」

「…自分ではできなくて…病院か、家では…してもらってる…」

「お兄さんに?」

「うん…」

「そっか。そしたら、お兄さんは、優香が行くって言っても、行かないって言っても心配するね、きっと。だから、優香のしたいようにしたらいいと思うよ。…自分は行かないのに無責任かもしれないけど、行けそうなら、思い切って行ってみたらいいんじゃないかな、思い出にもなるしね」

莉緒は優香を元気付けるように言った。





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