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新学期(2)(中学3年生4月)

「佐伯さん、大丈夫ですか?」


浣腸の力を借りて直腸の詰まりを放出し終えた後も、お腹の蠕動と腹痛が治まらず、優香は便器に腰掛けたまま、上半身を低くしてうずくまっていた。

看護師さんの声に、お腹をさすりながら身体を起こし、軽く息んで、もう直腸内に出そうなものがないことを確かめると、優香はお尻を拭って、ゆっくりと立ち上がり、身支度を整えてトイレから出た。


「お尻を消毒して、お薬塗りますね。お尻を出して、こちらに横向きに寝てください」

看護師さんに再び診察台に案内された優香は、上げたばかりのショーツを再び腿に下ろして、もう一度お尻を出すと、浣腸の時と同じ左側臥位になった。


「ちょっと冷たくなりますよ」

背後で看護師さんの声が聞こえ、肛門にスプレーの消毒液が噴霧され、丁寧に拭われていく。

「はい、きれいになりました。では、注入軟膏しますね」


ゴム手袋をつけた手で、肛門のひだから穴の内側まで、軽くマッサージするように、ポンポンと少しずつ軟膏が伸ばされ、肛門内にチューッと軟膏を注入された。と思うと、もうチューブは抜き取られ、ペーパーで軽くお尻を押さえてもらっていた。

もう肛門の傷はほぼ治っているのか、浣腸に比べると、軟膏の塗布と注入は、特に苦痛もなくあっけないものだった。


服装を整えた優香が診察デスクのところに戻り、丸イスに腰掛けると、

「お尻は、もう痛みはないですか?」

友井医師はデスクから顔を上げ、優香に向き直って聞いた。

「はい…」

お尻の具合を聞かれる恥ずかしさで、優香は頬を赤らめて、伏し目がちに返事をした。


「お腹の調子を整えるために整腸剤を出すので、3日間飲んでください。それから、痔は良くなってきているけど、便秘や下痢ですぐに悪化してしまう部分なので、排便後は、もうしばらく注入軟膏を使いましょう。痛みがあるときは、排便前や、お風呂上がりにも使ってください。多めに処方しておくからね。浣腸は、まだありますか?」

「確か、あと2つくらい…」

「では、5回分出しますね。浣腸を使って、3日に1回は排便するようにして、また来週診せに来てください」

「はい…」


いつまで浣腸を続けないといけないんだろう…。

返事はしたものの、優香は不安になって聞いた。


「先週は、全然出ない便秘か、お腹を壊すかで、ちょうどいい時が全然なくて……。どうしたら良くなるんですか…?」

言いながら、惨めさとつらさがこみ上げ、涙ぐんでしまった優香に、

「胃腸が弱くて、疲れるとお腹を壊してしまう体質は、すぐには改善できないし、何より考えすぎるストレスも良くないから、あまり思い詰めずに気楽にするようにね。適度に運動をして、疲れた時には、脂っこいものを食べないとか、消化に良いものをよく噛んで食べて、ゆっくり寝るとか、できることをしていきましょう。便秘は、少し直腸にたまる癖がついてしまっているから、これ以上酷くならないように、自力で出すことにこだわらず、浣腸を使ってもいいから3日に1回は出して、お腹が張って苦しかったり、お尻が切れてしまうことがなければ大丈夫、と今は考えましょう。無理せずに浣腸を使って。張ったり詰まっている感じがしたり、スッキリ出なくて苦しい時は、毎日でも使ってもいいからね」

と、友井医師は優しく言った。


優香は、しばらくは何度も浣腸を使うことになりそうな現実を受け入れるしかなかった。


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