体育祭(3) 帰り道(中学1年生10月)
今回のエピソードは、排泄や浣腸の描写はありません。
薬局での羞恥体験は優香のトラウマとなりました。
整腸剤の処方箋を手に、友井クリニックを出た真斗は、向かいの薬局の看板がまだ灯っているのを確認した。
「薬局で薬を受け取って行こう」
真斗が言うと、優香は首を横に振った。
「あの薬局は絶対嫌! この前、お薬をもらいに行ったら、意地悪なおばさんがいて……。便秘してることも、病院で浣腸されたことも、店中の人に聞こえるような大きな声で言われたのよ! その後も、みんなが見てる前で大声で浣腸のやり方説明されて、みんなにジロジロ見られて…」
思い出して、優香は目に涙を浮かべた。
恥ずかしく惨めだったあの日の記憶が蘇り、勢いで、普段なら口にしないような「浣腸」という言葉を、思わず大声で言ってしまったことに気づいて、優香の顔は耳まで赤くなっていた。
「今日は浣腸じゃなく整腸剤だし、大丈夫だよ」
「わからないよ。お腹の具合とか、いちいち詳しく聞かれて……また便秘してるとか、下痢してるとか、大声で店中に言いふらされるかも」
赤い顔のまま、目に涙を溜めて優香は訴えた。
「じゃあ、一回家に帰ろう。あとで俺が一人で取りに行くから」
真斗はそう言って、優香をなだめた。
この後、真斗は無事に薬を受け取りました。勤務時間の関係なのか、優香の言っていた中年女性は店に見当たらず、若い男性の薬剤師さんが対応してくたのでした。