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莉緒(1) 打明け話(中学3年生4月)

春休みも残り数日となったある日、優香は莉緒の家に招かれ、今度は莉緒の家で一緒に宿題をすることになった。


莉緒の部屋で宿題をしていると、莉緒の母親が、オレンジジュースとお菓子を運んできてくれた。


「ゆっくりしていってね」


莉緒の母が優雅に微笑んで部屋を出て行くと、優香は言った。

「お母さんもすごい美人だね」

「そう? よく、似てるとは言われるけど」

莉緒はあまり関心なさそうに言った。


「莉緒のママって、いつも家の中でもあんなに綺麗にしてるの?」

「うん、だいたいあんな感じ。暇なのよ。友達と喋ったり、張り合うくらいしかすることないんだもん」

莉緒は冷ややかに言った。


オレンジジュースを飲みながら、なんとなく莉緒の部屋を眺めていた優香は、ふと本棚の一角に目を止めた。


「ああ。そこは私の薬箱」

優香の視線に気づいて、莉緒が答えた。

そこにはサプリメントや、優香が痔を患った時に処方された液体の下剤、坐剤と表示された見たことのないパッケージの薬、そしてイチジク浣腸の大箱が、整然と並べられていた。


「ちゃんと自分で管理してるんだね」

優香が言うと、

「自分の部屋以外に置いてると、ママに怒られるからね。特に浣腸なんて家族の目につくところにおいてたら、そんな薬、見えるところに置かないでって。浣腸なんてみっともなくて恥ずかしい薬だと思ってるから…。自分は娘がそんなみっともない治療をした話を、ママ友に言いふらしたくせにね」

莉緒は辛辣な口調で言った。


確かに、その後噂が広がり、通学に支障をきたすほどになってしまったのだから、無理もないことではある。


「新学期になったら、クラスも変わるし、また普通に登校してみたら?」

「うーん、そうしたいけど、噂のせいだけじゃなくて、体調も不安があるから、難しいかな…」

「お腹、しょっちゅう痛くなるの?」

「うん…。また浣腸の話になっちゃうんだけど…。私、2、3日に1回、朝から浣腸してるのね。そのあとは半日くらいお腹が渋って何度もトイレに通うことになったり、トイレからなかなか出れなくて遅刻する時もあるし…。それに、急に冷や汗が出るくらいお腹が痛くなることがあって、こっそり学校のトイレで浣腸することもあるの…。保健室登校だから、必要な時にすぐトイレに駆けこめるけど、普通に登校するとそれも難しいし…」

「私もお腹のことで悩んでるけど、莉緒も結構ひどいんだね…」

「うん……。どんどん酷くなってるみたい…。飲み薬と坐薬を使っても、最近は結局浣腸しないとほとんど出ないことが多いし…。これ以上酷くなったら、どうなっちゃうんだろう……」

普段はクールで達観している様子の莉緒が、珍しく弱気に言った。


「通院してるんだよね? 病院の先生は何て言ってるの?」

「今の病院は、通院というか、自分でどうしようもなくなった時に駆け込んで、大きな浣腸をしてもらって出すだけなの。その時は出てスッキリしても、またすぐに自分では出せなくなって駆け込んで……その繰り返し。本格的に治療したくて、排便外来がある病院に予約をしてるんだけど、予約も1年待ちなの」

「そうなんだ…」

「優香はどんな病院に通ってるの?」

「私は家の近所の友井クリニックってところにお世話になってるよ。時間外にも診療してくれたり、親切だよ…」

優香はそう言いながら、莉緒の「大きな浣腸」という言葉に反応してしまい、また、あの光景を思い浮かべていた。


美しい顔を苦痛に歪め、高くあげた白いお尻に、大きな注射器のような浣腸器を突き立てられた莉緒の姿。


優香は、自分が執拗にその光景を思い浮かべてしまうのは、その姿に興奮しているからではないかと思い至った。

動揺する優香の脳裏に、「そっち系の趣味に目覚めた」という莉緒の言葉が蘇った。


優香を現実に引き戻したのは、莉緒の声だった。


「優香はどんな治療してるの?」

「えーと…、私は便秘だけじゃなくてお腹を壊したり、熱を出すことも多いから、いつも便秘の治療ってわけじゃないんだけど…。治療は…、浣腸…が多いかな、病院でしてもらったり、家で使う分を処方してもらったり」

莉緒の前では自分の浣腸治療について、口にすることの抵抗が少なくなってきた優香だったが、お尻に指を入れて硬くなった便を掻き出してもらった摘便や、肛門鏡を挿れて診察を受けた切れ痔については、口にする勇気がなかった。

そして、自分では浣腸することができず、家では真斗にしてもらっていることも、何となく言い出せず、曖昧に答えた。


「便秘じゃない時も浣腸されることあるの?」

「うん…。熱も坐薬で急に下げるより、浣腸の方がいいとか…。あと、お腹を壊した時にも浣腸されたことあるよ…」

優香はそう言ってから、不意に

「先生が浣腸好きだから、すぐ浣腸されるらしい」

という彩奈の言葉を思い出し、

「最初はびっくりしたけど、でも治るのが早いから、私には合ってる治療なんだと思う…。それに誰でも浣腸の処置になるわけじゃなくて、友達は便秘で受診したけど、重症じゃないかったから飲み薬も選べたみたいだし…」

と、半分は自分に言い聞かせるように、慌てて付け足した。





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