遭遇(中学2年生3月)
排泄の描写があります
あの日。部室裏のベンチで話したときから、優香と莉緒は一層親密になり、お互いに、ちゃん付けではなく名前で呼び合うようになった。
終業式の日、学校は午前中で終了するので、優香は保健室に行かない予定だったが、莉緒と一緒に帰る約束をしていた。
普段、全く教室に行っていない莉緒は、この日はクラスのホームルームが終わってから、担任の先生と面談をして通知表を受け取る必要があるらしく、優香は、あの部室裏のベンチで莉緒の面談が終わるのを待つことになっていた。
優香は、莉緒が来るのを待つ間、周辺を散歩してみることにした。
ベンチの脇には木立があり、その奥は、運動部の部員以外は滅多に行かないが、トイレや倉庫がある。
優香は時間もあることだし、トイレに行こうかと、木立の方に向かった。
その時、木立の向こうから、誰かが足早に、こちらに向かって来るのが見えた。
木立から抜け、顔が見えると、それは立川くんだった。
優香の姿に立川くんは少し驚いたようだったが、二人は知り合いではないので、特に言葉を交わすこともなくすれ違った。
木立を抜けると、男子トイレと女子トイレの入口が、隣り合って並んでいる。
公園などの屋外トイレによくあるように、それぞれのトイレの入口にドアはなく、個室が並ぶトイレの奥への視線を遮るように、入口の前にはコンクリートの壁が設けられている。
壁の奥に進もうとして、優香は唖然とした。
壁のすぐ後ろには、トイレを目前に力尽きたのか、一人の女生徒が泣きながら地面にしゃがみこんでいた。
今日は体操着ではなく制服姿で、顔は苦痛で歪んでいるが、優香はそれが、以前にベンチで泣いていた恵理菜だとわかった。
漂う匂いと、短いスカートの周りに広がるシミと汚物で、トイレが間に合わなかったのは明らかだった。
「どうしたの!? 具合が悪いの? 保健の先生を」
と言いかけて、優香は、恵理菜の横に、あのイチジク浣腸の空き箱とピンクの容器が二つ、転がっているのに気づいた。
容器は二つともキャップが外され、チューブの先端のふくらみが少し汚れて、一目で使用済みだとわかる、生々しい状態だった。
優香の脳裏を、先ほど足早に立ち去って行った、立川くんの姿がかすめた。
優香は恵理菜に近づき、
「立てる?」と声をかけて、腕をとって肩を支え、恵理菜が立ち上がるのを手伝った。
恵理菜がゆっくりと立ち上がると、ベチャッという音がして、ショーツから漏れ出した軟便が、恵理菜の脚を汚しながら、地面に飛び散った。
優香は肩を貸しながら、恵理菜をどうにか個室まで運び、和式便器を跨ぐように立たせると、
「下ろすね」と言って、恵理菜のスカートをまくり、ショーツを下ろした。
ショーツはずっしりと重く、足首まで下ろすと、太く長い便が形を失わずにのっていた。
優香は悪臭に吐きそうになりながらも、健康的な便の様子に思わず目を奪われた。
自分が便秘や下痢に苦しんで、浣腸で出すのとは明らかに違う便の様子に、優香は恵理菜が、便秘や腹痛を解消するのとは違う目的で浣腸を使ったのではないかと感じた。
便器の傍にしゃがみこみ、
「片足ずつ上げて」と恵理菜に声をかけて、汚れたショーツを脱がせると、優香は一旦個室から出て手を洗った。
そして、自分のカバンから取り出したお尻ふきのシートを、
「よかったら使って」と恵理菜に手渡すと、「保健室で替えの下着を借りて来るから、ここで待ってて」
と声をかけて、保健室に急いだ。
優香が保健室から戻ると、恵理菜は幸い汚れていなかった制服姿で、個室から出て所在無げに立っていた。
靴下は汚れてしまったのか、裸足になっている。
「これ着替え。あと、しばらくはお腹が渋ったり、残った薬が出ちゃうときもあるから、よかったらこれも使って」
と生理用ナプキンも一緒に手渡した。
「すみません…。ありがとうございます」
「一人で大丈夫? 何か手伝おうか?」
「ありがとうございます。もう、大丈夫なので…」
「ねえ…、もしかして、浣腸したの?」
黙ったままの恵理菜に、
「無理やり浣腸されたんじゃないの? もしそうなら先生か、場合によっては警察に」
優香がそう言いかけると、
「大丈夫です、無理やりじゃないんで」
恵理菜はきっぱりと言い、優香は心配に思いつつも、トイレを後にした。
優香がベンチに戻ると、そこには莉緒の姿があった。
「あれ、なんでそっちから来るの、トイレ?」
「うん、ちょっと…。さっきトイレに行ったら、この前見た恵理菜ちゃんがいて…」
「恵理菜が?」
「うん。入口の所で、倒れてて。多分だけど、恵理菜ちゃん、浣腸したんじゃないかな…。それで、もしかすると、自分でしたんじゃなくて、立川くんにされたのかもしれない…」
優香が目にしたことを話すと、莉緒の表情が硬くなった。
「恵理菜はまだいるの?」
「いると思う」
莉緒は立ち上がってトイレに向かい、優香も後を追った。
壁を抜けると、そこには地面に散乱した、浣腸の容器やキャップ、空き箱を拾って片付けている恵理菜の姿があった。
「大丈夫?」と莉緒が声をかけると、
「はい。大丈夫なので、放っておいてください」
恵理菜は顔を上げずに言ったが、声は涙声だった。
「好きでしていることなら、口を出すつもりはないけど…」
「はい。私たちが好きでしていることなので、誰にも言わずに、放っておいてほしいんです」
莉緒の言葉を遮るように恵理菜は言った。
「好きでしてるなら、どうして泣いてるの? 浣腸するだけして、苦しんでるのも、汚したものを片付けるのも知らん顔でほったらかしって、そんなのおかしくない? それに、必要ないのにしょっちゅう浣腸してたら、身体に悪いよ。浣腸しないと、出なくなっちゃうかもしれないのよ」
「彼に毎日してもらうので大丈夫です。本当に、放っておいてください」
恵理菜はそう言いきり、
「そう。なら、余計なお世話だったわね。もう何も言わないわ」
莉緒は言って、トイレを後にした。