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傷跡(5) 心配(中学2年生3月)

浣腸の描写があります。

 優香が教室に着いたのは、ちょうどホームルームが終わる頃で、1限目の授業にはギリギリ間に合うことができた。


 午前中の授業を終え、給食を食べても、腹痛がぶり返すこともなく、優香は安心した。

 食間の便秘薬と軟膏は生理用品を入れるポーチに忍ばせて持ってきていたが、また朝のような強烈な便意に、学校で襲われたらどうしようと思うと恐ろしく、到底、学校で薬を飲む気にはなれなかった。


 帰宅してすぐ、便秘薬を飲んだものの、夕食後も便意は来ないまま、お風呂上がりに軟膏を注入して、緩下剤を飲んだ。

 コンクールの日、寝ている間に下痢を漏らしてしまったことが頭をよぎり、また寝ているときに突然下してトイレに間に合わないことを恐れて、優香はぐっすりと眠ることができずに、夜中に何度も目を覚ましたが、結局一晩中、便意に襲われることはなかった。


 翌朝、優香は食間の便秘薬を飲むかどうか少し迷ったが、やはり昨日のような目に会うことが恐ろしく、薬は飲めなかった。いつもより長い時間トイレで頑張ってみたが、結局お通じはなく、諦めて学校に向かった。

 昼食後もやはり便意はもよおさず、学校で便秘薬を飲む勇気もないまま、優香は帰宅したのだった。


 帰宅後、すぐ便秘薬を飲み、夕食後には緩下剤も飲んで、しばらくトイレにこもって頑張ってみたけれど、やはり便意はなく、全く出そうにない。

 便器に腰掛けたまま下腹に触れると、硬く張って下腹に詰まっているのがわかる。

「うーーーん! ううっ!」

 思い切って強く息んだ瞬間、肛門が裂けそうな鋭い痛みが走り、優香は苦痛で顔を歪めた。


「溜めてしまうと便の水分が失われて、どんどん硬くなるからね。痛くて出すのももっと辛くなるし、硬い便で切れて肛門の状態が悪化してしまって、いつまでも治らないよ」

 友井医師の言葉が蘇り、優香は不安に襲われた。

 毎食後排便するように言われていたのに、昨日の朝、下剤で失敗して以降、一度も排便できていない。


 これ以上硬くなる前に、早く出さないと…。

 優香は覚悟を決めて、浣腸を使うことにした。

 浣腸で出口の詰まりを解消しないと、もう自力では出せそうにない。このままでは、どんどん詰まってもっと硬くなってしまう…。

 前に処方されたグリセリン浣腸が、リビングに置いてあったはず。あれを使ってみよう。


 決意してリビングに向かい、透明の袋に包まれたグリセリン浣腸を手に取った優香だったが、いざその大きな容器と長いチューブを改めて目にすると、注入軟膏とは比べ物にならず、とても自力で注入できそうになかった。


 お兄ちゃんに頼るしかない…。

 覚悟を決めた優香は、グリセリン浣腸をひとつ手にとると、真斗の部屋をノックした。

「お兄ちゃん、お願いがあるんだけど…」

 怪訝な顔でドアを開けた真斗に、優香はグリセリン浣腸を差し出しながら言った。

「お腹が、張っちゃって……。…浣腸、してほしい」

「…いいよ。お腹痛い? 準備するから、ちょっと待って」


 真斗はいつものように、トイレの前の廊下にバスタオルを敷き、洗面器にお湯を張って浣腸容器を温め、手際よく浣腸の準備を整えながら、怪訝に思っていた。

 優香が体調を崩すたび、今まで何度も浣腸を施してきたが、優香が自ら浣腸をしてほしいと頼んできたのは、今日が初めてだった。

 いつも、優香の心理的な負担を減らすため「浣腸は病気を治すのに必要な治療で、恥ずかしいことではない」と繰り返し言い聞かせてはきたが、思春期の女の子にとって、それが恥ずかしくないわけがないことは、理解しているつもりだ。


 よほど具合が悪いのか……。

 昨日の朝は、トイレに間に合わず漏らしてしまうほど、ひどい下痢をしていたけれど。

 真斗の脳裏には、玄関で震えながら水のような下痢を噴射させた、昨日の優香の可哀想な姿がよみがえった。


 昨日の下痢は、ひどい便秘によって引き起こされたもので、出しきれていない膨満感で苦しんでいるのだろうか。

 それとも、初めて友井クリニックを受診した時のように、お腹をひどく壊しているせいで、腸内にガスが異常発生して、張りや腹痛が起こっているのか。

 どちらにせよ、よほどつらく、我慢できない状態なのだろう。

 かわいそうに…。


「準備できたよ。浣腸するから、お尻をこっちに向けて、横向きに寝転んで」

 そう声をかけて、浣腸をするため、いつものようにバスタオルに横たわった優香の背後で跪き、その白く柔らかなお尻を開いて、真斗は驚いた。

 優香の肛門は赤く腫れ上がった痛々しい状態で、肛門の周辺も、ひどくただれてしまっていた。


「お尻…こんなに腫れてしまって……」

「この前……お腹こわした時に…荒れちゃったみたい…」

 優香は、痔になってしまったと言うのが恥ずかしくて、言葉を濁した。

「下痢がひどかったからかな…。ちゃんとクリニックで相談して、診てもらった?」

「うん…診てもらってるから、大丈夫」

「痛む? 浣腸して大丈夫かな…」

「そんなに痛くないから大丈夫。お腹が張っちゃって……苦しいから、早く出したいの…」


 目に涙をためて訴える優香の切実な様子に、真斗は浣腸することを決めた。

 優香の肛門に念入りにワセリンを塗って、ほぐすために指先で軽くマッサージしようとした。


「…!」

 腫れ上がって炎症を起こしている肛門に触れられ、優香は痛みで思わず身体を強張らせ、悲鳴をこらえて大きく息を飲んだ。

「痛い!?」

「大丈夫…」

 優香は震える声で答えたが、その顔には苦痛と恐怖でゆがんでいた。


 マッサージを諦めて、痛々しい肛門に浣腸器のノズルを軽く当てると、優香はビクンと身体を震わせた。

「浣腸のノズルを入れるからね」

 黙って頷いた優香の額には脂汗が浮かび、ひどく痛むのか、痛みへの不安のせいか、ギュッとお尻に力を入れているので、ノズルの先端は何度も固く閉じた肛門に弾き返された。

「力を入れていると浣腸できないから、お尻の力を抜いて…。すぐ済むからね」

 励ますように声をかけながら、どうにかノズルの先端を肛門に挿し、容器の膨らみをゆっくりと潰して、直腸へと浣腸液を注入した。


「出ちゃいそう…」

 注入が浅かったせいか、肛門の痛みのせいか、グリセリンの注入を終えてチューブを抜くと、優香はほとんど我慢できず、すぐにトイレに行きたがった。

 肛門が傷んでいるので、強く押さえて我慢させることもできず、真斗が起き上がるのを手伝うと、優香はそのままトイレに駆け込んだ。


 プシューーーーっ!

 優香は便器に腰掛けて息んだが、ズキズキと熱いお尻からは、浣腸液が勢いよく吹き出しただけで、肝心の便は全く出ない。

 グルグルと疼く下腹をさすりながら、肛門が裂けそうな痛みをこらえて、何度も繰り返し息んでも何も出ない。

 優香は絶望してトイレから出た。


 げっそりとした様子でトイレから出てきた優香に、片付けを終えた真斗が声をかけた。

「出た?」

 優香は泣きそうな顔で首を横に振る。

「そうか…。明日友井先生のところに行って、お尻を診てもって、浣腸もしてもらおう」

 真斗の言葉に、優香は力なく頷いた。


 明け方、優香は高熱を出した。



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