傷跡(4) 始末(中学2年生3月)
優香は、真斗に抱きかかえられ、お風呂場に運ばれた。
汚れた下着と靴下を脱いでシャワーで汚れを洗い落とすと、またこみ上げる便意に、バスタオルを巻いてトイレに走った。
飛び込んだトイレで、前屈みになってバスタオルをはだけ、とめどなく溢れ出すドロドロの軟便を便器へと下し続ける優香の頬には、涙が伝っていた。
間に合わなかった、中学生にもなって…。
以前にトイレが間に合わなかった時は、浣腸をしたせいだったり、高熱で下痢に襲われたせいだから、と必死で自分に言い聞かせていたが、今回は体調が悪いわけでもなかったのに。
ようやくお腹の中のものを出し切った後も、しばらくの間ショックで呆然としていた優香だったが、下痢で汚れたお尻のむずがゆさと、ヒリヒリとした痛みで我に返り、お尻を洗い流すために、シャワートイレのボタンを押した。
「…ヒッ……うぅー」
水の刺激が肛門にしみて、優香は思わず悲鳴をあげたが、「便がついていると、炎症がひどくなる」という友井医師の言葉を思い出して、痛みをこらえてお尻を丁寧に洗い流し、分厚く重ねたトイレットペーパーを何度も当てて、十分に水分を拭き取った。
優香がバスタオルを巻き直してトイレから出て脱衣所に戻ると、脱ぎ捨てた下着と靴下は処分するためにゴミ袋に入れられ、汚したお風呂場を真斗が洗い流している音が聞こえてきた。
ドアを少し開けると悪臭が漂ってくる。
「ごめん……自分で片付ける」
「お腹は大丈夫? 具合が悪いの?」
「ううん…もう落ち着いたから大丈夫…」
「いいから、着替えて休んでたらいいよ。こっちはもうほとんど片付いているから」
「でも…」
「風邪を引くから、早く着替えておいで」
「ごめんね……ありがとう」
優香はとりあえず、新しい下着をつけて、幸い汚れていなかった制服を着た。
玄関に戻って確かめると、靴も汚れをまぬがれたようだった。
「お腹は落ち着いた? 学校に行けそう?」
「うん…」
お腹を壊した時の下痢とは違って、便を出し切ってしまえば腹痛も治まり、体調は落ち着いている。
「じゃあ今なら1時間目に間に合うから、行っておいで」
真斗に見送られて家を出た優香は、排便後の軟膏を注入し忘れたことに気づいたが、そのために戻ることはもう諦めて、そのまま学校へと急いだ。