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傷跡(2) 診断(中学2年生3月)

直腸(肛門)診、浣腸の描写があります。

「こんばんは。その後、体調はどうですか?」

 ひどい下痢の状態から回復し、10日ぶりとなる受診だった。


「お腹は、壊していないんですけど、昨日から、少し張っているみたいで……」

「お通じどう? ちゃんと出ていますか?」

「…今朝、少し出たんですけど…出すときに……痛くて…。少し血も出てしまって…」

 優香は恥ずかしくて、言葉をぼかしながら相談した。


「まずお腹を診ますね、診察台に」

 診察台でお腹を出し、触診と聴診を受けた後で、

「ではお尻の状態を診ますね」

と、覚悟していた言葉が告げられて、優香はいつものように診察台の上に横向きになってお尻を出し、身体を丸めて直腸診の体勢となった。


「ちょっと冷たくなるよ」

 優香の肛門にゼリーを塗りながら、友井医師は言った。

「肛門が腫れてしまっているね。少し冷たいけど、痛くないからね。お尻の力を抜いて、口から息を吐いて」


 開いた口から吐息を漏らすと、お尻から指を挿れるいつもの触診ではなく、お尻の穴には、何か冷たい器具のようなものが入ってきた。


「…ヒッ…!」

 優香が堪えきれず、身体を強張らせて、かすかな悲鳴を漏らすと、友井医師は言った。

「怖くないからね。力を抜いて、じっとしていて……。肛門が、切れてしまっていますね」


 器具を入れられ、お尻の穴の状態をじっくりと観察して、指摘される恥ずかしさで、優香は顔を真っ赤にした。

「はい、少し息んで」

 排便するような感覚があって、肛門診の器具が抜かれると、ホッとする間もなく、今度は指を挿れて直腸診が行われる。

「もう一度力を抜いて、口から息を吐いて……。直腸に便が溜まって固くなっているので、浣腸して出してしまおうね」

 コンクールの前日から、約2週間ぶりとなる浣腸の宣告となった。


 トイレまで我慢することも出来ず、オムツに頼るほどのひどい下痢の状態から回復して、ようやく学校にも普通に通えるようになったと思ったら、今度はすぐに詰まってしまって浣腸が必要になるなんて…。

 恥ずかしさだけでなく、自分の身体が情けなくて悲しくなる。


 浣腸の宣告を受け、目に涙をにじませた優香に、友井医師は淡々と浣腸の処置を進めた。

「痛くないようにゼリーを塗るからね。ちょっと冷たくなるよ」

 改めてお尻の穴に潤滑剤が塗られる。


「では浣腸するので、お尻にノズルを入れますね。力を抜いて、口で呼吸をして」

 ぬるりとしたノズルの先端が肛門を押し広げ、息を吐くのに合わて、お尻の奥の方に挿入されていく。ストッパーがお尻の穴に触れるかすかな感触の後で、生暖かいグリセリン浣腸液が注入され、ゆっくりと直腸を満たしていった。


「はい、浣腸液が全部入ったよ。ノズルを抜きます。お尻を閉めて」

 浣腸器のノズルを優香のお尻から抜くと、友井医師はいつもより優しく、そっと押さえるようにして優香の肛門を拭った。

「気持ち悪くない?」

「はい…」

 ガーゼのようなものを肛門に当てられ、自分の手で押さえるように指示されて、お尻のタオルをかけ直してもらった。


 浣腸される前、潤滑剤で冷たかった肛門は、グリセリンの刺激で熱く疼くように痛んだ。

 痛みに耐えて必死で肛門をすぼめ、押し寄せる便意を数分間こらえ続けた後、優香はようやくトイレに行くことを許された。


「ガーゼはトイレに流さずに、ゴミ箱に捨ててね。お尻は強く拭わずに、血が大量についているようなら教えてください」


 よろよろとトイレに入った優香は、肛門の痛みに思わずうめき声をあげそうになるのをこらえながら、粘土と泥水が混ざったような、ドロドロの便を大量に放出した。うめき声をこらえる度、代わりに涙が溢れていった。


 10分ほどかかって、つらく長い排泄を終え、ようやくトイレから出て診察室に戻った優香に、友井医師は尋ねた。


「スッキリ出ましたか? 痛みや出血は大丈夫?」

「…はい」

「ひどい下痢が続いていたので、肛門が傷ついて、ただれてしまっています。そこに硬い便が通ったので、何箇所か切れてしまったのが、痛みと出血の原因です。いわゆる切れ痔ですね。それから肛門の内側にも大きな痔核があります」

 痔になってしまったことも、その説明も恥ずかしく、優香は顔を赤らめて頷いた。


「塗り薬を出すので、排便の後と、お風呂上がりに肛門に使ってください。それから、傷が治るまで、しばらくは便を柔らかくするために緩下剤と食間の便秘薬を出します。お腹がゆるくなりすぎると、下痢のようになってしまうので、まずは毎晩、寝る前に緩下剤と、食事の前に便秘薬を飲んでみて、ゆるくなりすぎるようなら量を減らして調整しましょう。毎食後、水のようではなくて、柔らかいけれど形がある便が出るくらいが、ちょうどいい量です」

 毎食後、と聞いて、優香は学校で排便しなくてはいけないことに気づいた。


「あの…、お昼ご飯の後、学校でもすぐに出さないとダメですか?」

「溜めてしまうと便の水分が失われて、どんどん硬くなるからね。怖がらせたくはないけど、痛くて出すのももっと辛くなるし、硬い便で切れて肛門の状態が悪化してしまって、いつまでも治らないよ。お尻の状態が良くなるまでは、溜めずに出しましょう」

 優香はショックで黙り込んだ。


「学校でトイレに行きにくいようなら、しばらくは、午後の授業だけでも保健室登校にしてもらうのがいいかもしれないね。排便後はシャワートイレでしっかり綺麗にして、トイレットペーパーはこすらずに、お尻に当てて水分をしっかり拭き取って。学校のトイレは、シャワートイレがついていないと思うので、トイレに流せるお尻ふきのシートを持ち歩いて、いつも清潔にするようにしてください。便がついたままにしていると、炎症がひどくなるからね。それから塗り薬の使い方は」

 友井医師は、透明な袋で個包装された、ミニチュアの浣腸のような、クリーム色の容器を取り出して袋を開け、

「今ひとつ使いながら説明するからね。和式トイレを使う時のようにしゃがみます。まずキャップを取って、少しずつ指先に出して肛門に塗るか、トイレットペーパーにこれくらい出して」

と、言いながらティッシュに容器から薬を絞り出した。

「これをペタンと肛門にあてて押さえるようにして塗ります。それから容器の細いところを肛門に入れて」

 容器の丸い膨らみを指差しながら、

「ここで止まるからね。そこで薬の半分くらいを注入したら、残り半分は容器を引き抜きながら注入します。これでお尻の中から出口まで薬が塗れます。簡単だから自分でできるね?」

「はい…」

 優香は恥ずかしさで顔を赤らめ、不安げに頷いた。


 自分でお尻に容器を入れるのは怖いけれど、学校でも使う必要があるなら、毎回お兄ちゃんに頼むことも出来ないし、自分で使えるようになるしかない…。それに浣腸に比べれば、容器はずっと小さくて注入する量はほんの少しだし、チューブも短くて少し挿すだけなので、自分でもなんとか出来そうに思えた。


「じゃあ、トイレに入って使ってみて。少し足を開いてしゃがむと、自然と肛門がゆるんで塗りやすいからね」


 早速ここで使わなくてはいけない…。


 優香は恥ずかしさを堪えて、小さな浣腸のような容器を一つ受け取り、トイレに入った。

 そして教わった通り、洋式便器の脇でショーツを下ろし、和式トイレにまたがる格好でしゃがむと、確かにお尻の穴が少し開くのがわかった。誰かに見られているわけでもないのに恥ずかしくなり、自分でも赤くなっているのがわかるほど、顔が熱くなっていく。

 教わった通りに容器のキャップを外し、折りたたんだトイレットペーパーに軟膏を少し出し、ペタンとお尻の穴にあてる。


 小学校の頃にしたギョウ虫検査みたい…。

 そう気づくと、余計に恥ずかしくなる。

 優香は色白な顔を耳まで赤く染めながら、軟膏を塗ったトイレットペーパーを肛門にペタペタと押し当て、軟膏を塗り広げていった。

 十分に塗った後で、容器の先端を肛門にあると、少しのためらいののち、勇気を出して少し押し込んだ。


 んーー…。

 軽い痛みと異物感はあるものの、浣腸に比べればずっと楽に、容器の先端が優香のお尻に入った。

 優香は少し安堵して、指先で容器の膨らみを潰し、軟膏をお尻の中にチュッと注入した。





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