傷跡(1) 発端(中学2年生3月)
排泄の描写があります。
登校できるようになった翌週。
優香はようやく、ひどかった下痢がおさまって、給食も食べられるようになり、部活動にも復帰して、また充実した毎日を送り始めていた。
火曜日。
朝食後、お腹の張りと便意を感じた優香はトイレに入った。
悪夢のようなひどい下痢の状態から回復してからも、日に何度か、特に夕食後にはトイレにこもらなくてはならない日が続き、完全に下痢から解放されたのは2、3日前のことだった。
下さないことばかり気にかけていたが、下痢が止まってからは全く排便がなく、便意でトイレに向かうのは久しぶりだった。
便器に腰掛け、軽くいきんだ瞬間、お尻の穴にピリッとした鋭い痛みが走り、
「…ん……痛!」
優香は思わず息むのをやめて、悲鳴をあげた。
その後、恐る恐る何度かいきんでみたが、その度にピリピリとした鋭い痛みがお尻に走り、何度も繰り返していると、お尻が裂けそうなだけでなく、頭まで痛くなってきた。
その上、うめき声をあげそうなほどの痛みに耐えて何度も息んでいるのに、肝心の便は全く出そうにない。
2週間にわたってお腹を壊し、3日ほど前にようやく下痢が止まるまでは、息まなくてもトイレに座れば溢れ出るようなゆるい状態が続いていた。そのせいで、もしかして、下痢ではない普通の便を出す筋力がなくなってしまったのかもしれない…。
そんな不安に襲われるほど、下腹の張りと便意に反して、肛門付近の便は全く動く気配がなかった。
これ以上時間をかけていたら、学校に遅刻してしまう…。
優香は諦めて、排便がないままトイレを出た。
肛門にはヒリヒリした痛みだけでなく、出口のすぐ手前まで押し寄せて、肛門から出かかって刺激している便塊のせいで、気持ちの悪い異物感が残っていた。
立っていても座っていても、歩いている間も、常に肛門の痛みと不快感がつきまとい、便意と軽い腹痛が何度となく押し寄せる。
登校後も何度か便意に襲われたが、学校ではゆっくり排便できない優香は、時折強くなる便意の度に、冷や汗を浮かべながら、お尻に力を入れ、下腹をさすってやり過ごした。
そうしているうちに、便意の頻度も下がり、その強さも徐々に弱まっていった。お腹の痛みもだんだんと和らいでいくように思えたが、一方で、膨満感は一層ひどくなり、直腸にズシリと重い鉛を詰められているかのようだった。
早く家に帰って、落ち着いて出してしまいたい…。
ようやく部活が終わり、茉莉果との会話も上の空で帰宅した優香は、制服のまま、すぐにトイレに駆け込んだ。
「うっ……んーー…うーーーん…」
お尻に走る痛みを堪えて息んだが、
ブッ!ブーーーっ。
と大きな音を立ててガスが出ただけで、下腹とお尻の不快感は残ったまま、便意だけが消えてしまい、どうすることもできなかった。
翌朝。
やはり朝食後に軽い便意を催し、優香はすぐにトイレに入った。
お腹は昨日よりも一層重く、張っているのがわかる。
今出さないと、また詰まってしまう。
詰まりがひどいと、またあの浣腸以上に恥ずかしくてつらい摘便の処置をされるかもしれない…。
「うっ……んーー……んーー!…うーーーん…!!」
優香は思わず声を漏らしながら、力一杯息んだ。
何度も息んでいると、肛門が裂けそうな強い痛みとともに、便塊が肛門から少し顔を出した。
優香はうめき声をあげ、便座の上で前かがみにうずくまったり、のけ反ったり、少し腰を浮かせて勢いをつけて座り直したり、何度も体勢を変えながら必死で息んだ末、水分を失った硬い便を必死の思いで押し出すと、括約筋で少しずつ断ち切った。
10分以上にわたる格闘の末、乾いた粘土のような小さく硬い便が、ポチャンと音を立てて、ようやく便器に落ちた。
お腹の張りに対して量は少なかったものの、どうにか無事排便できたことに安堵した優香だったが、シャワートイレで流した後もお尻の穴は痛み、気持ちの悪い残便感があった。
まだ、お尻に詰まっているみたい…。
そう感じてもどうしようもないまま、とりあえずお尻を拭い、拭った後のトイレットペーパーを見ると、真っ赤な血がついていて、優香はギョッとした。
何これ…。もしかして、お尻の穴が裂けてしまったの…?
それって、もしかして痔…?
それとも、何か別の病気で、お尻の中から血が出ているのかも……?
その上、ほんの少ししか排便できなかったために、お腹は重く張ったままだった。
お尻には不快な残便感があるが、いきむと痛いし、出血が怖くて、もう自力では出せそうになかった。
優香は、友井クリニックを受診することを決意し、今日部活の後で診察してもらえるよう、お願いするために電話をかけた。