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コンクール(5) 詮索(中学2年生2月)

体調不良や、坐薬を使ったことを同級生に詮索されて、気まずく恥ずかしかったエピソード。

少しだけ下痢排泄の描写があります。

 コンクールの日から1週間が経ち、優香の体調はようやく回復しつつあった。

 夜中に高熱でうなされることもなくなり、ひっきりなしだった下痢排泄も、1日に数回程度まで減った。

 トイレまで間に合わず、オムツが必要なほどのひどい状態から、ようやく脱したのだった。


 月曜日。

 ようやく体調が落ち着いて、毎朝の通院と点滴が必要なくなった優香は、1週間ぶりに学校に登校した。


 給食のメニューはまだ無理なので、栄養ゼリーと温かい番茶を持参していた。

 それを少しずつ、ゆっくりと口にしていたが、やはり少しでも食べると腸がギュルギュルと蠢いて、食後は腹痛と便意に襲われた。

 しかし、学校のトイレで排便することに強い抵抗がある優香は、冷や汗を浮かべながら固く肛門を閉じ、じっと便意に耐えた。

 幸い、午後の授業が始まる頃には、お腹も落ち着き、優香は自分がひどい下痢から回復しつつあることを実感して安心した。


 水曜日。

 優香は、まだ給食のメニューは無理でお弁当持参ではあったが、月曜日から欠席せずに登校できていた。

 ただ、激しい下痢と高熱が1週間も続いた後で、身体が弱っているため、体力が回復するまで、少なくとも今週いっぱいは、体育と部活動は休むようにと、友井医師から指示を受けていた。


 体育の授業を見学するため、制服のまま体育館に移動した優香が、体育館の舞台裏にある体育倉庫で、見学中に座るパイプ椅子を探していると、体操着に着替え終えたクラスメイトたちが続々とやってきて、体育館はだんだんと賑やかになってきた。


 不意に、彩奈の大きくよく通る声が、体育倉庫まで聞こえてきた。

「優香、学校は来れるようになったけど、当分部活も体育も無理らしいよ」

「そうなんだー。フルート上手なのに、身体が弱いから、可哀想だよね」

 答えるのは、彩奈と仲の良い未央の声だった。


「細いし、胃腸が弱いんだろうね」

「太らないのは羨ましいなー」

「胃腸が弱いせいで、太りたくても太れないんじゃないかな? 合宿の時も熱出して、夕飯全部戻して病院に運ばれてたし……。かわいそうに、坐薬まで入れられちゃって」

「えー!? 坐薬ってあのお尻の薬? 嘘ー? あれ痔の薬だよね!?」

「もー、痔なんて大声で言わないでよー!」

 そう言って笑いながらも、彩香自身も大声で続けた。


「痔じゃなくて、熱が出た時にも入れるんだよ。あと、吐いちゃって口から薬が飲めない時とか」 

「そうなの!? 打ち上げの時、優香が吐いちゃって病院に運ばれてたのは覚えてるけど、お尻の薬なんて使ってたっけ?」

「病院から帰ってきたとき、木下先生が、坐薬が溶けないようにって、ホテルの人に保冷剤とかもらってたよ」

「えー!! じゃあ木下先生に、お尻の薬を入れてもらったってこと!? お尻を出して?」

「そうじゃないかな、顧問だし。木下先生、優香のこと気に入ってるから、坐薬だって喜んで入れてあげたんじゃない? いつも、優香がちょっと具合悪そうにしたら、すぐにお姫様抱っこして運んであげたり、車で送迎してあげてるし」

「そういえばそうかも。二人を見る目が変わっちゃいそう…。莉緒ちゃんの浣腸の話以来の衝撃かも…。まあ浣腸よりは坐薬の方がまだましかー」

「いや中学生にもなって坐薬もきついでしょ。小さい頃なら親に入れられたことあるけど、幼稚園児でも大概恥ずかしいのに、今更、人前でお尻出して、モーモーして坐薬入れてもらうとか……親でも無理だよ」

「そうだよね、なんでわざわざお尻に入れるんだろう」

「吐いちゃって、口から飲めないからじゃない? それに効き目が強くてすぐ効く、とかじゃないかな。熱が高い時とか、小さい子じゃなくても使うみたいだよ。従姉妹のお姉ちゃんも、高校受験の前日に熱出して、坐薬入れたって叔母さんが言ってたもん。しかもその後、お腹ピーピーになっちゃったんだって。最低だよね」

「えー、最低ー。かわいそー。座薬って、小さい子じゃなくても、お尻出して四つん這いで入れてもらうの?」

「そりゃそうなんじゃない」

「恥ずかしすぎ…。じゃあ、木下先生も四つん這いになった優香に入れてあげたのかなー。なんかエロくない?」

「うん、優香は結構エロいと思うよ。だって血の繋がってないお兄さんと二人暮らしなんだよ」

「えー、そうなの!? じゃあ家では、お兄さんにしてもらったのかな? エロ過ぎー!」

「きっとそうでしょ。もしかしたら、優香、コンクールの時も坐薬入れたのかも…。前の日から熱高くてしんどそうだったし、相当無理してたんじゃないかな。コンクールの後もお兄さんが迎えに来て早々と帰って行ったよね。今日もまだ給食食べられないみたいだったし、優香も坐薬でお腹ピーピーになっちゃったんじゃない?」

「コンクールからずっとお腹壊してるってこと? もう2週間くらい経つよね、かわいそうに…。本当に胃腸弱いんだね、気の毒…」

「でも、身体が弱くてすぐにお腹壊すっていうのも、なんかちょっとエロい気がする」


 無遠慮な二人の会話を聞いてしまい、優香の顔は羞恥のあまり、赫らむのを通り越して、血の気が引いて青ざめていた。身体から血の気が引くと同時に、小康状態を保っていた下痢がぶり返してしまったようで、下腹がギュルギュルと大きな音を立てて痛みだした。


 トイレに行きたい…。

 でも、今、体育倉庫から出たら、さっきの会話が聞こえていたことを彩奈たちに知られてしまうかもしれない…。

 優香は倉庫でしゃがみこみ、必死で下腹をさすって、便意をこらえることしかできなかった。


 やがて体育館にチャイムが鳴り響くと、賑やかだった声が静まり、体育の山川先生の声が聞こえた。

 班分けをしてバレーボールの授業が始まると、再び体育館にざわめきが戻り、ボールを打つ音で賑やかになった。

 優香はようやく体育倉庫から出て、山川先生に体調が悪いので体育を見学をする許可をもらい、そのまますぐに体育館の隅のトイレに入った。


 遠くからボールを打つ音や掛け声が聞こえる中、薄暗く寒い個室に入って和式便器を跨いでしゃがみこみ、優香は泥のような軟便を勢いよく噴出させた。


 ブシュッ! ブリューー。ブリュリュ。クチューー。


「うぅぅ…」

 熱い下痢が噴き出す肛門は、ヒリヒリと鋭く痛んだ。

 静かなトイレには、優香の痛々しい排泄音とうめき声が、長い間響き渡っていた。




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