噂(中学2年生9月)
8月。
週1回の通院で、浣腸の処置を受けるようになり、優香の体調は安定していた。
自宅でも週に数回の排便があり、腹痛やお腹の張りの体調不良を自覚することは少なくなった。
それでも、クリニックで浣腸をしてもらうと、粘土のような便が大量に出るのだった。
直腸診で詰まりを指摘され、さらに浣腸でお腹の詰まりを自覚して、なかなか解消されない自分の便秘に落ち込む優香を、
「焦らないようにね。うまく浣腸を使いながら、排便をよくしていきましょう」
と、友井医師は励ました。
9月になり、授業が再開されると、優香は友井医師の厚意で、月曜日の部活帰りに、時間外の診療を受けることになった。
優香は時間外の対応に感謝しつつも、毎週月曜日、茉莉果と別れた後、こっそりと友井クリニックを訪れて直腸診と浣腸を受ける習慣は、やはり恥ずかしく、後ろめたく感じていた。
ある日、部室の準備室で優香が楽器の準備をしていると、棚の向こうから同級生の彩奈達の話し声が聞こえてきた。
「ねえ、B組の莉緒ちゃん、この前、立川君と下校してる時、お腹が痛くなって倒れちゃったんだって」
「えー、そうなの? そういえば今日もお休みだったかも」
「それで、病院に運ばれて、レントゲン撮ったら、お腹にびっしりウンチが詰まってパンパンになってたんだって!」
優香は、噂話や詮索が好きな彩奈が少し苦手だったが、聞こえてきた話に思わず聞き耳をたてた。
「何それ、便秘ってこと?」
「うん、重症の便秘だったみたい。うちのママ、莉緒ちゃんのママと友達だから、莉緒ちゃんのママから聞いたみたいよ」
「そうなんだ、まだお腹痛いのかな。かわいそー」
「ちょっと幻滅だよね、莉緒ちゃんって可愛くて、彼氏が途絶えなくて、学年のアイドル的なポジションじゃない?」
「うん、でもまあ、アイドルも時には便秘くらいするでしょ」
「便秘になっただけならそうかもだけど、便秘で倒れて病院に運ばれるなんて、きっと浣腸とかされちゃってるよ」
「嘘!? 浣腸? それはちょっと、無理かも…。浣腸って、SMの人がするやつでしょ?」
「SMじゃなくても、便秘の薬でも使うよー」
「えー! 病院で四つん這いになって、女王様お願いします、みたいな感じで、してもらうってこと?」
「いや女王様じゃないでしょ。四つん這いで、お願いしますって言うかどうかはわかんないけど」
賑やかな笑い声が聞こえ、彩奈は続けた。
「重症の便秘になると、病院で浣腸してもらわないと出なくなっちゃうんだって」
「そうなの? 怖っ。 じゃあ莉緒ちゃんも浣腸されちゃったのかな? かわいそー。莉緒ちゃん、可愛いから、お医者さんの趣味で、飲み薬でもいいのに浣腸されちゃうとかもありえそう」
「あるんじゃない、そういうことも。おばさんの患者は看護師さんに任せるか飲み薬で、お尻を見たい若い可愛い子の浣腸だけ自分でするとか、医者ならやりたいようにできるもんね。それに、浣腸すると我慢できないらしいから、トイレに行けずにみんなが見てる前で、オマルにさせられるかもよ。それを全部立川君にも見られちゃったとか。だからショックで学校に来れないんじゃない?」
好奇心と面白半分で繰り広げられる彩奈たちの会話に、優香はいたたまれなくなって、準備室を後にした。