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副作用(2) 薬局で(中学1年生9月)

このエピソードには、浣腸されたり、排泄する描写はありません。

薬局でプライバシーの配慮なく浣腸の説明をされ、恥ずかしかったエピソード。

「佐伯さん、佐伯優香さん」

 受付で名前を呼ばれた優香は立ち上がった。

 先ほど受けた浣腸と、浣腸がもたらした激しい排泄のダメージで、元々色白な顔は青ざめ、憔悴から表情もげっそりとしている。


「今日は診察と処置で****円になります。こちらは処方箋ですので、調剤薬局で受け取ってください。近くですと、すぐ向かいに調剤薬局があります」

 受付台に置かれた処方箋の「グリセリン浣腸」という文字が目に飛び込んできて、優香は顔を赤らめ、慌てて隠すように折りたたんで、カバンにしまうと、友井クリニックを出た。


 教えられた通り、クリニックの向かいの薬局に入り、受付の女性に折りたたんだままの処方箋を手渡す。

「お預かりしますね。待合のソファで少しお待ちください」


 優香がソファに腰掛けて待っていると、白衣の中年女性が近づいてきて、声を掛けられた。

「佐伯優香さん。今日はグリセリン浣腸、3回分の処方ですね」

 周りのお客さんにも筒抜けの大きな声で話しかけられ、優香はびっくりして顔をあげた。


「大きくて容量が多めの浣腸の処方ですね。便秘はかなりひどい? 何日も出ないと、お腹が張ってつらいでしょう」

 白衣の女性は、優香の動揺に気づかないのか、声のボリュームを落とすことなく続ける。

「友井クリニックさんね。今日は友井さんの所でも浣腸してもらったの?」

 優香は顔を真っ赤にして頷くのが精一杯だった。

「じゃあ、少し楽になったかな? 浣腸は恥ずかしがったり、抵抗がある人も多いけど、浣腸するとすぐにスッキリして楽になるでしょ。正しく使えば、飲み薬よりも癖になりにくいし、使いやすい薬ですよ。今日はグリセリン浣腸を3回分ですね。自力で出せなくて苦しい時に使うように、という指示かな?」

「…明日から3日間、毎日使うようにって…」

「あら、そうなの」

と中年女性は少し気の毒そうに眉をしかめた。

「それじゃ、かなり重症の便秘症だね。浣腸で刺激しないと出せないんじゃ、しんどいでしょう? 早く自然なお通じに戻るといいわね。そのためには、指示を守って、毎日浣腸かけて、まずは詰まっている便をしっかり出してしまうこと! 3日間、浣腸を頑張って、しっかりお通じをつけて、これ以上便秘がひどくならないようにしないとね。便秘を甘く見てはダメよ。ひどい便秘で命を落とすことだってあるのよ」

「…はい」

 恥ずかしさと恐怖で、優香は顔を引き攣らせながら頷いた。

「朝の方が腸が活発になるから、朝ごはんを食べたら、まずトイレに座って、自力でしっかり頑張って、その後で浣腸をかけましょう。それが1番効果がありますよ。浣腸かけた後は、何度ももよおしたり、急に出ることがあるから、学校に行く直前は避けて、ちょっと早起きして余裕を持って浣腸するとか、どうしても無理そうなら夜にするとか、生活に合うように工夫してみてね。それじゃあ、グリセリン浣腸3回分、用意してきますね。もうしばらくお待ちください」


 便秘。お通じ。浣腸…。


 そんな言葉を大きな声で言われるたびに、恥ずかしくて逃げ出したくなる。

 中でも「浣腸をかける」という聞きなれない言い方が、なぜか余計に優香の羞恥心を刺激した。


 コの字型に配されたソファには、大学生くらいの若い男性、小学校低学年くらいの女の子とお母さん、スーツ姿の男性が座って薬が準備されるのを待っている。さっきの説明の時から、周りのお客さんが自分の方を好奇の目でチラチラ見ているように思えて、優香は恥ずかしくて、うつむき気味に、自分の足元に視線を落としていた。


「ママ、かんちょうって何? かんちょうって恥ずかしいの?」

 不意に、女の子が母親に聞く、無邪気な声が響いた。

「大きな声を出さないの。浣腸って、お腹痛のお薬よ」

「どうして恥ずかしいの?」

「浣腸って、お尻にするの。こら、ジロジロ見ないの」

 無遠慮に優香に興味を示す女の子を、母親が小声でたしなめる。


 優香はいたたまれなくなり、顔を真っ赤にしてうつむいたまま、一刻も早くこの場から離れたいと願っていた。


 5分ほどして、先ほどの店員が、大きく膨らんだ紙袋を手に戻ってきて、再び優香に声をかけた。

「佐伯優香さん、お待たせしました。はい、こちらが3日分のグリセリン浣腸です」

 やはり周りに筒抜けの、大きな声で女性は言った。


「おうちで浣腸したことはある?」

「ありません…」

「それじゃ、浣腸の仕方を説明しますね」

 白衣の女性はそう言って、優香の隣の席に腰を下ろし、紙袋から透明の袋に包まれたグリセリン浣腸を1つ取り出した。

「はい、これがディスポーザブルのグリセリン浣腸器。このノズルを肛門に挿入して、浣腸液をチューッと注入して使います。自分でできそう? 浣腸は、正しく使えば危なくないけれど、うまくできないようなら、最初はおうちの人にしてもらうか、手伝ってもらいましょうね」


 浣腸の容器は思ったよりもずっと大きくて、丸い膨らみいっぱいに透明な液体が満たされ、長いチューブが伸びている。優香は恥ずかしさよりも、急に怖くなってきた。

「まず洗面器などにお湯を張って、袋に入ったままの浣腸器をつけて温めます。温めたほうが注入するときに刺激が少なくて、気分よく使えますよ。でも熱すぎるとやけどしてしまうから、お風呂の温度くらいにしてね」

「はい…」

「浣腸液が温まったら浣腸器を袋から出して、このストッパーのメモリを5から6に合わせます。ストッパーが肛門に当たって、そこで止まって、それ以上お尻の奥に入らない仕組みになっているからね。ストッパーを調整したら、このつまみを回して開けて、チューブの先のキャップを外します。これで浣腸の準備ができました。

 グリセリン浣腸を指差しながら、女性は説明した。

「準備ができたら、浣腸します。浣腸するときの体勢は、身体の左側を下にして横になって、膝をぐっと曲げて、身体を丸めるようにして、お尻を突き出します。病院でもしてるからわかるわね? そうしたら、あとは利き手と反対の手でお尻を開いて、利き手で浣腸器のチューブを持って、この先端を肛門に挿したら、肛門内にゆっくりチューブを入れていきます」


 生々しい説明に、優香は周りを気にしながら無言で頷いた。向かいのソファの若い男の人が、手元のスマホから顔を上げ、好奇の目をチラチラとこちらに向けているのが、はっきりとわかった。


「肛門にチューブを入れるときは、お口で息を吐きながら、ゆっくりとね。もし入れるときに肛門が痛いようなら、チューブの先にワセリンかオイルを塗ると、するっと楽に入りますよ。ストッパーが肛門にあたるところまでチューブがお尻の中に入ったら、その位置で、この膨らみの部分をぎゅーっと潰すように押さえて、ゆっくり浣腸液を注入します。全部入るまで、何回かぎゅーっと容器を潰してね。お薬が全部入ったら、お尻からゆっくりチューブを抜いて、お尻を締めて、できれば5分以上我慢します。我慢は辛いと思うけど、我慢の時間が短いと、効く前にお薬だけ出ちゃって肝心の便が出ないから、しっかり我慢することね。トイレットペーパーや脱脂綿でギュッと肛門を押さえると我慢しやすいですよ」

 優香が頷くのを見て、説明は続けられた。

「トイレが遠い場所で限界まで我慢するとその後が大変だから、浣腸かけるときはトイレの前でお座布団やバスタオルを敷いて注入すると安心ですよ。横になる前に、お尻を押さえるトイレットペーパーや脱脂綿だけ用意しておいてね。それから、立ったまま浣腸するのは、危ないから絶対ダメよ。間違った使い方で浣腸すると、お腹の中でチューブが突き刺さって、腸に穴があいてしまう事故も起きているから、十分気をつけてください」


 優香は恐怖と不安で顔を引きつらせながら頷いた。


「それから、このストッパーが肛門にあたるところまで、チューブをしっかりお尻の奥まで入れること。怖がって少ししか入れないと、お薬が奥まで届かなくて、すぐトイレに行きたくなって、薬だけ出てしまって大変よお。そうなると、お腹は痛いし便は出なくて、余計に苦しむことになるからね。だから、しっかり、ここまでお尻の穴に入れます。ストッパーで止まるから、怖くないからね」

 浣腸容器のノズルにつけられた突起物を指差しながら、白衣の女性は説明を続けた。


「ここまでしっかりお尻に挿してから、浣腸液をゆっくりチューっと注入して、あとはお薬が効いてくるまでしっかり我慢。あとはトイレで頑張ってスッキリよー。これ以溜め込まないように、早めに便秘症を治しましょうね。使い方の説明書も入っているから、使う前によく読んでね」

「はい…」


 羞恥心と恐怖でいっぱいになった優香は、消え入りそうな声で返事をして支払いを済ませると、逃げるように薬局を後にした。

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