プール(中学2年生7月)
下痢、排泄の描写があります。
梅雨の間、ジメジメとした気候のせいか、優香はお腹を下しがちだった。
病院のお世話になるほどのひどい下痢ではないものの、軟便が続き、少し疲れたり、脂っこい食事をとると、その日の夜は、腹痛と下痢に襲われた。
それでも、学校の授業も部活動も、GW明けからは休むことなく出席でき、便秘で苦しむ日々よりは、優香は調子が良いようだった。
7月。
梅雨が明けると、ようやく下痢も落ち着き、夏休み最初の日曜日、優香は自宅から自転車で15分ほどの市民プールに遊びに来ていた。夏休み中も部活動は行われていたが、日曜日は練習が休みになるので、プールに行く計画を茉莉果と立てていたのだった。
午前中、プールを楽しんだ優香だったが、お昼にカップラーメンを食べ、再びプールに入ってしばらくすると、自分のお腹の不穏な雰囲気に気がついた。
プールで冷えたのが良くなかったのか、梅雨時の不調がぶり返したように、お腹がゴロゴロと下り始めていた。
「ちょっとトイレに行ってくるね」平静を装い、茉莉果に声をかけると、
「あ、私も行こうかな」と茉莉果は無邪気に答える。
この調子だと、無様な音を立てたり、臭いもひどいかもしれないのに…。
優香は一緒に行くという茉莉果の申し出を断りたかったが、そうすることもできずに、揃ってプールサイドのトイレに向かった。
トイレに向かう間、優香のお腹の具合は、ひどくなる一方だった。
もう走ってトイレに駆け込みたいくらいなのに、茉莉果と一緒では、そんなみっともない行動もできない。
あと10メートル、あと5メートル…。
自分を励ますように、胸の内で唱え、どうにかトイレにたどり着いた優香は、3つあるトイレの個室が全て埋まり、さらに順番を待っている人も1人いるのを見て、顔の血の気が引くのを感じた。
ギュルギュルギュル〜。
優香のお腹が音を立てる。
優香は茉莉果に聞かれまいと、必死でお腹を抑えた。
その時、強い便意に襲われ、優香はとっさに脚をクロスさせ、肛門を強く圧迫して堪えた。
必死で耐えながら、茉莉果の話に上の空で相槌を打つ。
「優香、どかした…?」
様子がおかしいことに気づいた茉莉果が優香の顔を見ると、顔は蒼白で、脂汗が浮かんでいる。
そして、脚をクロスさせたまま、両手をお腹にあてて前かがみになり、こみ上げる便意に肩を振舞わせいた。
「大丈夫? もしかしてお腹痛いの?」
優香は、苦痛で顔をしかめ、頷いた。
「我慢できる?」
優香がもう一度頷こうとした時、個室のドアがあいた。あと一人…。
すると、お腹を押さえて切羽詰まった優香の姿と、茉莉果とのやり取りを見ていた列の先頭の女性が、
「大丈夫? よかったら先にどうぞ」と個室の順番を譲ってくれた。
「…ありがとうございます」
お礼もそこそこに優香がドアを開けると、和式トイレだった。
3つの個室のうち、端の一つが和式、後の2つが洋式のようだ。和式は苦手だったが、洋式が開くのを待つ余裕はない。
優香は濡れて身体に張り付いた、セパレートの水着を急いで下ろすと、和式便器をまたいでしゃがみこんだ。
ブッー!
座った瞬間、思いがけず大きな音を立ててガスが出てしまって驚いたが、周りが騒がしいので、個室の外には届いていないことを祈って、優香は下腹に力を込めた。
ブリュッ。びゅーーーー。
水のような便が少し出ると、腹痛はあるものの、一旦便は止まった。
しばらくしゃがみこみ、下痢が止んだことを確認した優香は、個室を出た。
個室から出ると、自分の用は済ませたらしい茉莉果が、
「大丈夫? 落ち着いた?」と声をかける。
頷いて洗面台に向かい、手を洗いながら鏡に映った自分の顔を見て、ひどい顔してる、と優香は思った。
もともと、少し青白すぎる優香の顔は、青ざめて真っ白になり、唇は紫だ。
「冷えちゃったのかな? プールサイドで少し休もっか」
茉莉果の声に頷きながら、プールの方に戻りかけたところで、優香は急激な便意に襲われた。もうすぐにも出てしまいそうな様子に、優香は取り繕う余裕もなく、
「ごめん! やっぱりトイレに戻る」
茉莉果に声をかけ、さっき出てきたばかりのトイレに駆け戻る。
幸い、今後は空いていた洋式の個室に入ると、優香はまた水着を下ろした。
ブッ。ブリュッ。プシューーーッ。
また大きな音でガスが出て、形のない便が勢いよく溢れたが、またすぐに止まった。
冷え切った身体の肛門だけが熱い。
ハアハアと、優香は声を漏らしながら、下腹に力を込めた。
「…んーー」
お腹が痛くて、下痢をしているのは確かなのに、便は思ったほど出ずに、出した後も腹痛は治らない。
優香は思わず声をあげながら息んだが、それ以上は出なかった。
諦めた優香がトイレを出て茉莉果の元に戻ると、
「大丈夫? 随分ひどいの?」
茉莉果の問いかけに、優香はぐったりと頷いた。
「ちょっと待ってて」
茉莉果はそう言うと、熱いお茶を買ってきてくれた。
ゆっくりとお茶を口に含む優香に、茉莉果が言った。
「少し休んだら帰ろうか。自転車乗れそう? お兄さんに迎えにきてもらう?」
中学生にもなって、お腹を壊したくらいで迎えにきてもらうわけにはいかない…。
それに、真斗は今日は夜まで出かけていて、家にいなかった。
「大丈夫。自転車で帰る」
そう答えた優香だったが、数分もしないうちに、また便意に襲われることになった。
「ごめん、もう1回行ってくる」
優香は心配そうな茉莉果を残して立ち上がると、トイレに駆け込んだ。