熱の夜(a)(中学3年生6月)
浣腸、排泄の描写があります。
金曜日の夜、真斗は数日ぶりに自分の部屋で眠った。
連日、優香の部屋の床で眠っていたので、自分のベッドでゆっくりと身体を休められるのは久しぶりだったが、壁を隔てた隣の部屋で眠る優香の様子が気がかりで、結局あまり眠れはしななかった。
翌朝、平日よりも少し遅い時間に起きてきた優香は、漏らしてしまったショックをまだ引きずっているようで、話しかけても反応が鈍く、ぼんやりとした様子で、表情も暗かった。
昨晩起こったことを考えれば無理もないが、このまま塞ぎ込んでしまって、登校出来なくなってしまわないかと、心配になる。
「体調はどう? お腹は痛くない?」
「うん……痛くない」
「何か少し食べる?」
「……何も食べたくない」
「全く食べないのも身体に良くないから、少しはお腹に入れないと」
言い聞かせて、バナナとヨーグルトを用意した。
表情は沈んだままで、渋々という感じではあるものの、食べ始め優香に、小さなパンケーキも焼いてやると、少し笑顔を見せて口にしたので安堵した。
しかし、まだ腹具合が良くないのか、食べ終わって少したつと、トイレに駆け込んで、水っぽい下痢排泄とガスの音を、何度も廊下まで響かせていた。
心配で様子が気になったが、ずっと廊下で排泄の様子をうかがい続けるのも躊躇われて、リビングに戻って片付けをしていると、しばらくして、ようやくトイレから出ることのできた優香が、青ざめた顔で戻ってきた。
「お腹の具合、まだかなりひどい?」
「ううん、大丈夫」
「下してるんじゃないの?」
「……ちょっと…下したけど、もう大丈夫」
「張って苦しかったり、気持ち悪くはない?」
「うん、もう大丈夫だから」
お腹の不調について聞かれた時はいつもそうするように、優香は恥ずかしげにうつむき、言葉少なに答えた。
よほどひどい下痢や便秘の時以外は、症状を隠しがちなので、本人が大丈夫と言っても安心できないのと、まだ精神的なショックを引きずっているだろうと思うと、到底一人にはさせれらない。梨沙と会う約束があったが、明日に延期してもらうことができたので、今日は一日、家で優香の側についていることにした。
午後から夜にかけても、優香は何度かトイレにこもって下していたが、こもる頻度や時間はましになりつつあり、体調が良くなってきたからか、次第に表情も明るくなって、精神的にも持ち直してきたようだった。
翌朝の日曜日。
優香は心身ともにかなり回復したようで、起きてきたときから顔色が良く、表情も明るかった。
梨沙との約束もあったし、何より、本人が大丈夫そうに振る舞っているのに、周りが気を遣いすぎるのも、かえってよくない気がして、予定通りに出かけることにした。
簡単に夕食の準備をして、温めて食べるように言いきかせてながらも、それほど遅くならないうちに帰ってくるつもりでいたが、思いがけず梨沙の体調が悪かったため、浣腸するのを手伝ったり、その後も様子を見守ったりして、帰宅した時には22時を過ぎていた。
「ただいま」
と声をかけながら、リビングの扉を開けると、テーブルでうつむいて問題集を解いていた優香が顔を上げた。
その顔が少し赤らんでいるように見えて、
「まだ勉強してたのか。熱があるんじゃない? 熱がある時の顔をしてる」
と言うと、
「え……顔がおかしい? 変な顔になってる?」
優香が真顔で言うので、可笑しくなって少し笑いながら言った。
「変じゃないよ。でもいつもと違うから、見たらわかる」
熱がある時の優香は、普段は少し白すぎる顔に赤みが差して、目が潤み、正直に言えばとても魅力的で、扇情的に見える。
「もう寝なさい」
と言うと、優香は素直にペンを置いて問題集を閉じたが、立ち上がることはせず、座ったままじっとこちらを見上げている。
「どうした? 抱っこ?」
冗談のつもりで言ったのに、優香は黙って頷いた。
立ち上がれないほどの高熱なのかと心配になり、近寄って額に手を当ててみると、確かに少し熱いものの、それほど高熱ではないように思えた。
ベッドに運ぼうと椅子から抱き上げると、優香が首に手を回してぎゅっとしがみつくので、
「そんなに、しがみつかなくても大丈夫だよ。落とさないから」
と声をかけたが、優香は力を緩めない。
部屋まで運んで、ベッドに優香の身体を下ろし、座らせようとしても、しがみついたまま離れようとしない優香の小さな背中をトントンと軽く叩きながら、
「体温計を取ってくるから」
と言うと、優香はようやく腕の力を緩めて、しがみついていた身体を起こした。
体温計を手に部屋に戻り、熱を計らせてみると、37度6分だった。
「よく寝たら、きっと明日の朝には下がっているから、ゆっくり休んで」
そう声をかけて部屋を出ようとすると、
「寝られない。熱冷ましのお薬して」
と、か細い声で懇願するので、驚いた。
「解熱の坐薬は、もう少し熱が高くないと溶けないから、今は無理だよ。浣腸をしてみる? お腹が張っているなら、浣腸でスッキリしたら少し熱が下がるから」
朝はお腹は張っていないと言っていたし、浣腸は嫌がるだろうと思いながらも、他に出来そうなこともないので言ってみると、優香は意外にも、
「うん……。してほしい」
と答えた。
「お腹が苦しい?」
黙って頷いた優香の傍にかがみ、下腹に手を触れて少し押してみると柔らかく、心配したようなひどく張りはないし、激しい下痢の時のように、腸が異常に動いている様子もなかった。
「用意してくるから、少し待って」
自分の部屋に戻り、クローゼットにしまってある箱から、グリセリン浣腸を一つ取り出す。
重症化してしまった便秘の治療のため、毎日浣腸するように言われて処方された大量の浣腸だったが、ここ数日は下痢がひどく、ほとんど消費できていなかった。
ひどい下痢の時はグリセリン浣腸はせずに、エネマシリンジを使った微温湯の浣腸で張りを解消するように指導されていたが、今日の様子を見る限り、下痢はもうひどくなさそうなので、微温湯ではなくグリセリン浣腸を施すことにした。
エネマシリンジではなくて、グリセリンの浣腸を選んだのは、もう一つ理由があった。
一昨日の夜、エネマシリンジ で浣腸した時、微温湯を注入しながら見守っていた優香の表情が、苦痛から恍惚に変わる瞬間があったように思えたのだった。
熱を帯びた吐息を漏らしながら、頬を上気させ、うっとりとした優香の表情は、苦痛から解放される安堵だけでなく、どこか性的な快感の片鱗を思わせるものだった。
浣腸されて苦痛で顔を歪める姿にはいつも胸が痛んでいたが、常習的に浣腸しているせいで、いつしか優香が浣腸に苦痛よりも性的な快感を感じるようになっていたとしたら、と考えると恐ろしかった。
特に、微温湯の浣腸は刺激が穏やかなので、グリセリン浣腸に比べて苦痛を感じにくい分、快感を感じやすくなるのかもしれない。
それが性的な感覚と結びつかなければいいが……。
「準備が出来たよ」
当然のように自分では立ち上がろうとしない優香の身体を抱え、トイレの前に敷いたタオルの上に寝かせる。
パジャマのズボンとショーツを腿の辺りまで下ろしてお尻を出すと、優香は身体を丸めて、お尻を突き出す浣腸の体勢になった。
白く柔らかな尻肉を持ち上げるようにして、尻の割れ目を開き、あらわになった肛門にワセリンを伸ばす。浣腸器のノズルの先端にもワセリンを塗って、
「浣腸器のノズルを入れるからね。口から息を吐いて、お腹を楽にして」
ノズルの先端を肛門にピタリと押し当てると、優香は、
「うっ……」
と固い呻き声を漏らして、身体を強張らせた。
「薬を入れるから、力を抜いて。口から息を吐いて、お腹を楽にね」
浣腸器の丸い膨らみを潰して、ゆっくりと薬液を注入していく。
つらそうに顔を歪める優香に声をかけながら、快感を感じる余地もなく苦痛を感じている様子に、自分が安堵していることを自覚する。
「薬が全部入ったよ。ノズルを抜くからね」
ノズルを抜き、トイレットペーパーで肛門を拭っていると、優香が呻いた。
「…うぅ……うっ……お腹痛い。……もう出ちゃいそう……」
もともと下痢気味だったせいか、優香の下腹からはギュルギュルとつらそうな蠕動音が響き、急いで引き抜いたノズルには、緩い便がべっとりと付着して汚れていた。
「少しだけ我慢しよう。自分で押さえられる?」
重ねたトイレットペーパーを肛門にあて、優香の片手を添えさせると、優香はすぐにもう片方の手も重ねて、両手で肛門を押さえつけた。
手を拭い、便で汚れた浣腸器が優香の目に触れないように素早く片付ける間も、
「うっ…! うぅーー……出ちゃう……」
優香の悲痛なうめき声が響き、自分の安心のために、刺激の強いグリセリン浣腸を選んだことが、とんでもない間違いに思えて、胸が痛んだ。
「もう大丈夫だよ」
優香が肛門を押さえている手に片手を添えて、もう片手を身体の下に滑り込ませて抱き上げ、トイレのドアを開けて、便座に腰かけさせる。
押さえていた手を話した途端、
ビュッ! ビチューーーーーーーーっ。ぐちゅっ。ビュびゅっ。クチューーーーーーーー。
浣腸液と水様便、ガスが混ざり合って、勢いよく便器へと叩きつけられていった。
「…ハアハアハア……んー…んーー」
優香は激しく下しながら息を荒げ、便器の上で上体をかがめて苦しんでいた。
「強く息んだら駄目だよ」
背中をさすりながら声をかけるが、優香は早く出し切って楽になりたいのか、目に涙をためながら、何度もうめき声をあげて強く息み続ける。
「…うぅ……うっ……うっ…うぅーー……んーーんーー!……ハアハア……痛いよお…」
うめき声とともに絞り出される便は完全に液状で、強く息んでも少しずつしか出せないらしく、断続的に便器に溢れていく。
その横に膝をついてかがみ、片手で下腹を、もう片手で背中を必死でさすりながら、グリセリン浣腸を選んだことを悔やんだ。
もう、浣腸に快感を感じていようといまいと、どちらでもいい。一刻も早く、この苦痛から解放してあげることが出来たら……。
ブチュッ……ブチュブチュ……ブリュッ……ブリュッーー……ブシューーーーーーーー。
水っぽい排泄音を何度も響かせた後で、ようやく落ち着いてきたのか、うめき声がやみ、荒かった呼吸も次第に静まって、優香がゆっくりと上体を起こした。
「少し落ち着いた?」
頷き返すのを見て安堵が広がり、下腹と背中に添えていた両腕で包むようにして抱き寄せると、
「……ありがとう」
優香が耳元で囁くように言った。
罪悪感と安堵が入り混じって言葉が出ないまま、これ以上力を込めると壊してしまいそうな、小さな身体を抱きしめていた。