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便秘治療(19)(中学3年生5月)

排泄の描写があります。

 プチューーー……ボチャン…ボチャン……ポトポト…ポト……


 クリニックで差し込み便器に下した時と同じで、排泄しているという感覚は薄く、浣腸で注入された微温湯なのか、水のように緩い便なのか、自分でも区別のつかないものが、堰を切ったようにお尻から噴き出して便器へと溢れていく。やがて、固くなって詰まっていた便が、腫れ上がっていると指摘された肛門を痛めつけながら頭を出した。鋭い痛みに思わず顔を歪めてうめき声を上げながらも、必死で息むと、幾つもの便塊が雨だれのような音をたてて、勢いよく水面にこぼれ落ちていった。


 激しい排泄の後、最後には長くくぐもった音をたてて、腸内に充満していた大量のガスを放出すると、優香はようやく張りが解消されて、少し楽になったお腹を撫でた。

 そして、ホッとしたところで、排便後に注入軟膏を使うように言われていたことを思い出した。以前、トイレの戸棚に入れておいた分は、使い果たしてなくなってしまっている。だから、自分の部屋に少し残っている分か、今日薬局でもらってきて、おそらくまだリビングに置いてあるものを使わなくてはいけない。


 どうしよう…。

 一度くらい、すぐに使わなくても大丈夫かな。

 けれど、お尻の穴は排便の刺激で今もヒリヒリと痛んでいて、熱をもって腫れているのがわかる。不快なだけでなく、これ以上悪化したら、と不安がこみ上げる。


 とりあえず、お尻をきれいに洗い流そうと、シャワートイレを肛門にあてた瞬間、

「うぅ……痛っ…!」

 優香は痛みのあまり顔を歪めて、思わず大きな悲鳴をあげた。


「痛む? 軟膏はある?」

 悲鳴を聞いて、ドア越しに声をかけた真斗に、

「トイレに置いておいた分が、もうなくなっちゃって…」

 痛みをこらえて、ペーパーでそっと肛門を押さえながら、優香は答えた。

「今日もらってきた分を持ってくるから、ちょっと待ってて」

「リビングじゃなくて、私の部屋のクローゼットの棚にあるのを持ってきて…」

 木下先生のいるリビングから痔の薬を持ってきてもらうことが恥ずかしく、優香は慌ててそう頼んだ。


 軟膏を持ってきてもらうのを待つ間、細く開けたドアの隙間から廊下を伺うと、さっき浣腸に使ったエネマシリンジのオレンジ色のチューブと、先端にはめられた細長いノズルが目に入った。

 そのノズルの先を見て、優香はショックで目が釘付けになった。


 肛門に挿し入れられていた白いノズルの先は、ゆるい便がべっとりとついて、薄茶色に汚れてしまっていた。

 恥ずかしさと嫌悪感でいっぱいになりながらも、優香は何故かすぐ目をそらすことが出来ず、呆然とエネマシリンジの丸い先端を見つめていた。


「大丈夫? どうかした?」

 戻ってきた真斗に、声をかけられて我に返り、優香はドアの隙間から注入軟膏を受け取ると、お礼を言ってドアを閉めた。


 和式トイレにまたがる格好でしゃがみこみ、トイレットペーパーに軟膏を少し出して、体勢のせいで少し開いた肛門に、痛みをこらえてペタペタと塗布していく。そしてチューブの先を肛門に挿し、小さな膨らみを潰すようにしてお尻の中に軟膏を注入した。誰かに見られている訳でもないが、自分の格好の情けなさを思うと優香の頬は赤らんだ。


 薬の注入を終えて手を洗い、身支度を整えてトイレから出ると、廊下のエネマシリンジはすでに片付けられていた。

 少し安心して、部屋でパジャマから普段着に着替え、廊下に出ると、ちょうど真斗も洗面所から出てきたところだった。促されてリビングに入り、奥のソファーに腰掛けていた木下先生に挨拶をして、向かいに座った。


「すみません。わざわざ来ていただいて、お待たせしてしまって…」

 コーヒーメーカーに出来上がっていたコーヒーを淹れて、テーブルに運びながら真斗が言った。

「いえ、急に伺ったので。…合宿からこっち、ずっと体調が悪そうだったから、少し気になって様子を知りたくて来たけど、顔を見れてよかった。思ったより顔色も良さそうで」

 前半は真斗に、後半は優香に向けて先生は言った。

「疲れのせいか、胃腸の具合を崩していて。食事も受け付けずに戻したり、食べるとお腹が張って苦しんで、ひどい下痢をしてしまうことが続いていて……。でも、ようやく少し回復してきたのと、家での処置の方法も教わったので、段々とよくなっていくと思います」

 恥ずかしげに黙っている優香に変わって真斗が答えた。


 嘔吐や下痢をしていることを先生に伝えられただけでなく、エネマシリンジでの浣腸を指す「家での処置」という言葉に、優香はますます恥ずかしくなって、顔を赤らめてうつむいた。


「来週からは学校に来れそう?」

「はい…」

「無理のない範囲でいいから、また部活にも…」

 木下先生の言葉に頷こうとして、優香は硬直したように身体の動きをピタリと止めた。


 様子のおかしい優香を、真斗と先生が怪訝そうに見守る中、優香は無言のまま突如立ち上がって、リビングと廊下を隔てるドアへと駆け寄った。

 もどかしげに開けたドアを閉める余裕もなく、廊下へ駆け出す優香の肛門からは、水っぽく、くぐもった音が漏れ出していた。


 ブビっ…! ブリューー…ブチューーー…


 浣腸で腸が刺激されたせいなのか、それとも注入されたものが残っていたのか。

 優香は前触れもなく、切迫した便意に見舞われ、慌ててトイレに駆け込もうとしたものの、ほとんど我慢することもできずに、水のように緩い便を噴出させてしまったのだった。



 優香の後を追って廊下に出た真斗が目にしたのは、リビングに背を向け、両手で下腹を押さえて、前かがみで「く」の字のような格好になっている優香の後ろ姿だった。小刻みに震え、淡い色の部屋着のスカートは、突き出した尻の辺りが茶色く染まってしまっている。そして、膝丈のスカートから覗く白い脚を濡らして、足元には見る見る間に水たまりができていった。

 下痢便を漏らしただけでなく、立ったまま廊下で放尿してしまっていたのだった。


 震えながら立ち尽くしている優香に駆け寄り、肩に手をかけて顔を覗き込むと、

「間に合わなかった…」

 優香はぼんやりとした表情で、うわ言のように言った。

 漏らしてしまったショックが大きくて受け止めかねているのか、ただ呆然と立ち尽くす姿は、むしろ平然としているようにも見える。


「シャワーで流そうか…」

 真斗の言葉が耳に入らないのか、優香は返事をせず、表情も呆然としたままだったが、突如、

「うっ……!」

と、短いうめき声を漏らしたかと思うと、苦しげに顔を歪め、下腹を押さえて、崩れるようにその場にしゃがみこんだ。


 ブブ…ブリュッ……ブリュリュリュリューーーーブボボっ!


 和式トイレに跨るような格好になると、大きな排泄音が廊下中に響き渡った。

 優香は着衣のまま、激しく下し続けた。

 そして、長い排泄音の最後に、勢いよくガスの噴出する音を響かせると、放心したような表情で脱力し、開いた足の間に尻を落として、その場にぺたんと尻餅をつくようにへたり込んでしまった。


 グチュッ。

 尻餅の衝撃で、着衣の中の軟便が潰れる音がして、廊下には一層ひどい臭いが広がっていった。


「まだ出そう?」

 放心して座り込んでいる優香の傍に屈み、片手で背中、もう片手で下腹をさすってやりながら真斗が尋ねると、

優香はぼんやりとした表情のまま、首を横に振った。

「そのままで、ちょっと待ってて」

 真斗は洗面所からゴミ袋を取って来て、グショグショに汚れてしまった優香の下半身をスッポリと覆い、抱き上げて脱衣所まで運んだ。そして、そのままゴミ袋の中で、無残に汚れたスカートとショーツを脱がせた。


 今までにも何度もしてきたように、バスタブの縁に腕を掛け、胸元を預けるように四つ這いの体勢で優香をもたれかからせて、軟便まみれになった下半身をシャワーで洗い流していく。

「もう少し足を開いて、お尻を上げられる?」

 無言のまま、素直に従って突き出された尻を、片手で開いてシャワーをあてて汚れを流し、泡だてた石鹸で股間をきれいに洗う。もう一度シャワーで流して、タオルで軽く拭ってから抱き起こすと、優香の目から音もなく涙が伝っていった。


「まだ、お腹痛い?」

優香が黙って首を振るのを見て、

「着替えと薬を取ってくるから、身体を拭いて」

真斗は言った。



 言われた通り、洗ってもらった下半身の水分を拭い、拭い終えたタオルを巻きつけて下半身を覆うと、優香はふらふらとした足取りで、風呂場から脱衣所に出た。


 廊下でおもらしをしてしまったことも、リビングにはまだ木下先生がいることも、現実感のない夢の中の出来事のように思える。

 けれど、シャワーで洗い流してもらっても、まだヒリヒリとするお尻の痛みも、廊下で立ち尽くしたままお尻に広がっていった熱い軟便の感触も、現実だった。


 洗面所の壁際には、汚してしまった服と下着が入ったゴミ袋が置かれ、口は固く結ばれているものの、かすかに下痢の臭いが漏れ出して漂ってくる。

 そしてゴミ袋と並んで置かれているのは、水が張られたバケツだった。そこには、消毒中なのか、さっき浣腸に使ったエネマシリンジが、プカリと浮かんでいた。茶色く汚れていたノズルの先は、きれいに洗われて元の白色になっていたが、オレンジ色の長いチューブも、卵のような丸い膨らみも、バケツの中でぐにゃりとして、一層いやらしくグロテスクに見えた。


 エネマシリンジを見つめながら、優香がぼんやりと立ち尽くしていると、廊下から足音が聞こえ、脱衣所の扉が開いた。


「お腹は落ち着いた? 廊下を片付けているから、一人で薬を塗って、着替えられる? ゆっくりでいいからね」

 新しい部屋着と紙オムツ、注入軟膏を優香に手渡しながら、真斗は言った。


「うん…。片付け、ありがとう……。ごめんなさい」

「何度も言うけど、謝らなくていい。先生をお待たせしているから、着替え終わったら、一緒にリビングに戻ろう」

 優香は黙ったまま、拒絶するように首を強く横に振った。


 リビングのドアを閉めることも出来ず、お尻から響いたひどい音も臭いも、きっと先生まで届いてしまっただろう…。

 もう、どうやって先生に顔を合わせていいか分からなかった。

「今会わないと、もっと顔を合わせづらくなるから…。わざわざ来てもらったんだから、お礼を言って」



 扉を閉めた脱衣所で、優香はタオルを外して下半身だけ裸の姿になり、洗面台の前でしゃがみ込んだ。さっきも塗ったばかりの軟膏をもう一度お尻に塗って、痛みをこらえ、ノズルをお尻の穴に挿す。痛みは耐えられないようなものではないが、惨めさと情けなさで涙がこぼれた。


 脱衣所の扉をノックする音で我に返って立ち上がり、優香は手を洗って、下着の代わりにパンツ型の紙オムツに足を通した。おへその上まですっぽりと覆うオムツが見えないように、シャツを上に出して覆い、顔を洗って涙の跡を流した。


 廊下を片付け、手を洗い終えた真斗に促されて、リビングに戻った優香に、木下先生は言った。

「具合が悪かったのに、無理をさせて悪かったね…。今日はもう帰るので、ゆっくり休んで」

「…はい……今日は、ありがとうございました。来てもらったのに…すみません」

震えるようなか細い声で優香が言うと、

「続きは、また学校で話そう」

木下先生は言った。






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[一言] 今絶賛入院中で、楽しみの一つとして何度も読み返してます。 ゆっくりでいいので更新楽しみに待ってます。
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