便秘治療(18)(中学3年生5月)
エネマシリンジでの浣腸、排泄の描写があります。
看護師さんの手で再びお尻が開かれ、露出した肛門を軽くマッサージするように軟膏が伸ばされていく。
「お尻の中にもお薬を入れますね」
注入軟膏の容器の先端が肛門に挿されて、軟膏がチューっと注入される。そして、ゆっくりと容器が引き抜かれ、トントンと軽く叩きながらペーパーを押し当てるようにして、肛門が入念に拭われた。
浣腸に比べれば苦痛はほとんどないが、恥ずかしいことに変わりはない。
むしろ、苦痛が少ない分、自分の格好と受けている行為の恥ずかしさに意識が向いてしまう。
「お疲れさまでした。下着を穿いてください」
看護師さんに促され、診察台から起き上がると、優香は傍の脱衣カゴに入れられていた紙おむつを穿いて、身支度を整えた。
診察デスクの前に戻り、真斗と並んで丸イスに座って説明を受ける。
「お腹の痛みはどうですか?」
「…張って痛かったのが、楽になりました」
恥ずかしげに目を伏せたまま優香が答えると、
「よかった」
友井医師は頷きながら微笑んで続けた。
「下痢をしているのに、硬い便が出口を塞いでしまって、ガスもたくさん溜まって腸の動きを邪魔していたので、苦しかったでしょう」
「はい…」
「処方しているグリセリン浣腸は、下痢がひどい時には家庭での使用が難しいと思うので、下痢をしているのにお腹が張ったり、スッキリ出なくてつらい時は、微温湯で浣腸するといいですよ」
「微温湯の浣腸…。家ではどうしたら…?」
真斗が質問すると、
「鼻洗浄や腸洗浄に使う器具があります。薬局で手に入るので、エネマシリンジと言って買い求めて、浣腸の要領で微温湯を注入してください」
と友井医師は答えて、優香に向かって説明を続けた。
「肛門が腫れてしまっているので、無理に息まないようにね。便がスッキリ出ずにお尻が気持ち悪い時は、強く息んで出そうとせずに、お尻の中を洗うつもりでエネマシリンジで浣腸して。排便後には、腫れが引くまで、またしばらく注入軟膏を使ってください。以前の分はまだある?」
「もうほとんどないです…」
「ではまた処方箋を出しておきますね」
優香が頷くと同時に、お腹がグーっと鳴った。
ギュルギュルいう下痢の蠕動音ではなく、空腹を告げる健康的な音だった。
大きなお腹の音に、自分でも驚いた優香が頬を赤らめながらお腹をおさえると、
「腸が動いたので、胃の動きも活発になったんでしょう。もう食べても大丈夫だけど、しばらくはお粥や柔らかく煮た薄味のものを少しずつ食べるようにね。また3日後に診せに来て下さい」
友井医師は微笑みながら言った。
支払いを済ませてクリニックを出ると、真斗は優香に尋ねた。
「一人で帰れる?」
「うん…大丈夫」
「じゃあ、薬局に寄って薬を受け取っていくから、先に帰っておいて」
優香は、真斗が一緒に薬局に寄らずに、自分を先に帰らせようとする意図がわかるような気がした。
きっと微温湯で浣腸するための器具を購入するつもりで、購入や使い方の説明に、自分が立ち会わなくてもいいように気を使ってくれたのだろう……。
優香は素直に頷くと、一人で家に向かいながら、友井医師が言っていた「エネマシリンジ」とはどんなものだろう、と思いを巡らせずにいられなかった。
クリニックで使ったような、巨大な注射器のようなものだったら……。
そう考えると、せっかく食欲が出てきたのに、嫌悪感で軽い吐き気を催しそうだった。
家に着くと、優香はまず脱衣所に向かい、紙オムツを脱いでショーツに穿き替えた。ガスで張った気持ち悪さもなくなってお腹の調子は良さそうで、もう紙オムツじゃなくても大丈夫だろう。
新しい下着を着けて気分がスッキリとした優香は、エネマシリンジへの不安を振り払うように、勉強机に向かい、今日受けるはずだった授業に追いつくために教科書を開いた。
真斗が帰宅すると、お粥を作ってもらって、優香は早めの昼ごはんを食べた。ほぼ二日ぶりの食事だったが、食後下痢に襲われることもなく、また勉強机で自習をしながら、穏やかな午後の時間を過ごした。
昼食が早く、量も少なかったので、夕方近くになると、優香はまたお腹が空いて、今度はうどんを作ってもらって食べた。食欲も戻り、素うどんでは物足りなく、卵と刻んだ薄揚げも入れてもらった。
それが良くなかったのか、よく噛んで食べるように言われていたのに食べるペースが早すぎたのか、食後しばらくすると、優香はまた、下腹の膨満感と鈍い腹痛に苦しむことになった。
整腸剤を飲み、パジャマに着替えてベッドに入り、身体をくの字に曲げてお腹をさする。
何度か便意を催してトイレにこもってみるものの、ガスが少し出るだけで、お腹はずしりと重く、膨満感も腹痛もどんどん増していく。
優香は諦めてベッドに横たわり、お腹をさすって、眠気が訪れるのを待った。
一晩よく寝て、朝になったら消化して楽になっているかもしれない。
優香はいつしかうつらうつらとしていたが、目覚めると枕元の時計はまだ19時半だった。
そして、膨満感と腹痛は楽になるどころか、眠る前よりもずっと強くなっていて、このままでは戻してしまいそうなほど気分も悪かった。
どうしよう…。クリニックでは、微温湯で浣腸するように言われたけど…。
よろよろと起き上がり、リビングに入ると、真斗がキッチンでコーヒーを淹れているところだった。
「どうしたの…? お腹が痛い?」
青白い顔でパジャマの上からお腹をさすっている優香を見て、真斗は聞いた。
「うん…。また…張っちゃって、苦しくて……気持ち悪い…」
「下してはいない?」
「うん……。ゴロゴロして、お腹壊してるみたいなのに……トイレに行っても出ない…。お腹痛くて……戻しそう」
「微温湯の浣腸をしてみようか。今、先生にコーヒーを淹れているからちょっと待って」
先生……?
優香が怪訝な顔をすると、
「私は後でいいので、先にしてあげてください」
思いがけず、奥のソファー方から木下先生の声が聞こえた。
優香は心臓が止まりそうなほど驚いて声が出ず、真斗の顔を見た。
「心配して来てくださったんだよ。今、挨拶できそう?」
木下先生がいるのに腹痛や浣腸の話をしていたことや、自分の無防備なパジャマ姿が恥ずかしくて、優香は頭が真っ白になり、到底先生に顔を合わせられる状況ではなかった。
呆然としながら首を横に振ると、
「じゃあ、後で落ち着いてから。準備してくるから、ここで待ってる?」
と真斗は言ったが、浣腸の準備が出来たと呼びに来られるまで木下先生の側で待っているのも耐え難く、優香はリビングから逃げるように、真斗と一緒に廊下に出た。
いつものように真斗がトイレの前にバスタオルを広げ、ワセリンやトイレットペーパーを並べて浣腸の準備を整えるのを、優香はぼんやりと見守っていた。
洗面所に行って、洗面器を持って戻ってくるのもいつも通りの手順だったが、いつもならお湯を張った洗面器にグリセリン浣腸器が浸されているはずが、今日は洗面器の中には微温湯で満たされたコップと、もう一つ、初めて目にする奇妙なものが入っていた。
優香の視線は、その奇妙なものに吸い寄せられるように釘付けになった。
ぐにゃりとしたオレンジ色のゴムのような長いチューブ。その中央の辺りが卵のように丸く膨らんでいて、チューブの先端には、細長いノズルのようなものが嵌められている。
あれで、浣腸するの…? あのノズルをお尻から入れられて…。
そう察すると、優香の胸には恥ずかしさと強い嫌悪感が沸き起こった。
ぐにゃりと長いオレンジ色のチューブは、どこか毒々しくていやらしく、中央の膨らみは卵を飲み込んだ蛇を連想させて、グロテスクで不気味だった。
初めて見るエネマシリンジは、見ているだけで嫌悪感が湧いてくるのに、何故か目が離せない。
「これを使って、浣腸みたいにお腹にお湯を入れるからね。少し入れるだけだから、大丈夫だよ」
優香の視線に気づいて真斗が言った。
「横になってお尻を出して」
優香はちらりと、リビングと廊下を隔てるドアの方を振り返った。
ドア1枚隔てた所に木下先生がいるのに、浣腸されようとしている。それも、こんないやらしくグロテスクな道具で……。
それでも、午前中のクリニックでの浣腸を思い出すと、お湯を注入されてからほとんど我慢できなかったので、トイレの前でするしかなさそうだった。
優香は覚悟を決めてタオルの上に横たわると、モゾモゾと動いて、パジャマのズボンとショーツを太ももまで下ろして、むき出しのお尻を突き出した。
下腹から太ももにかけてタオルで覆ってから、
「先にワセリンを塗るからね」
と声をかけ、真斗はいつもの浣腸の手順で、優香のお尻を開いて肛門にワセリンを薄く伸ばしていった。
クリニックで指摘された通り、優香の肛門はかわいそうなほど赤くなって腫れ上がっていた。
「痛くない?」
問いかけに、優香は切なげな表情を浮かべ、黙って頷いた。
「ノズルを入れるよ。楽にして…」
肛門を広げるように、エネマシリンジのノズルの先端が押し当てられ、気持ち悪い感触とともに、ゆっくりとお尻の中に挿入されていく。
「うっ…」
優香はいつものように苦痛の声を漏らした。
「力を入れると苦しいよ…力を抜いて……。今からお湯を入れるからね。口を開けて、ゆっくり息を吐いて…」
グチュッ…グチュッ…という、シリンジが微温湯を汲み上げる音が廊下に響く。
優香がハアハアと息を吐くと、お尻からビュッと温かいお湯が入って来る感覚があった。
エネマシリンジのゴムの力のせいか、いつもの浣腸よりも勢いよくお湯が入ってくる。それでいて、グリセリンのような刺激と灼熱感はなく、温かなお湯が直腸を満たしていくのは、不思議な心地よさがあった。
「はぁー……あぁーー……」
優香は、口呼吸のために開いた唇から、吐息とかすかな声を漏らした。
「熱すぎない?」
吐息を漏らしながら頷いた優香の顔は、ノズルを入れた時の固く緊張した表情から穏やかになり、温かいお湯のせいか、少し上気しているように見えた。
「全部入ったよ。少し我慢できそう?」
優香が切なげに眉をしかめてかむりを振るのを見て、真斗はノズルを抜いて優香のお尻を拭うと、新しいトイレットペーパーを重ねて肛門をしっかりと圧迫した。
太ももに下ろされていたパジャマのズボンとショーツを足首まで下げて脱がせ、
「起き上がろうか」
片手で肛門を押さえたまま、もう片手を優香の背中に添えて身体を起こすのを手伝うと、そのままトイレに入るのを手伝った。
「廊下にいるからね」
トイレから出てドアを閉めた瞬間、
ブチューーー……ボチャン…ボチャン……ポトポト…ポト……バチャッ…バチャーーー…ブボッ…ブボッ…ブシューーーッ
溢れ出たものが便器の水面を打ち付けていく激しい水音と、くぐもったようなガスの音が、廊下中に響き渡った。