表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーQ  作者: 石渡正佳
サイバーQ2 サイバーポリティクス編
52/66

19 非武装中立宣言

 必要的国家分割論を解いて四国分離独立の主導者となった猿田遭子は、四州知事会議後直ちに大和国独立を宣言すると同時に初代大統領に就任し、建国の基礎固のため、旧同志社大学跡地に大和国独立暫定評議会を設置し、一年以内に大和国憲法を制定することとした。

 急進的な大統領を戴くにもかかわらず、大阪を首都とする大和国(旧大和州)は、四国中最も保守的な風土の国だった。国土は旧大阪府、旧兵庫県(淡路島を含む)、旧京都府(特別中立区京都市を除く)、旧奈良県、旧和歌山県、旧三重県、旧滋賀県の一部(琵琶湖沿岸地域)、旧岡山県の一部(倉敷市まで)、旧淡路島、旧徳島県である。

 国旗は桜日旗(5つの日の丸から5つの子円を切り取った形)である。大阪万博(EXPO70)のマークに故意に似せたとも言われる。

 大和国は、奈良、伊勢、熊野を擁し、京都を内包する神秘主義の国である。日本の伝統と景観を重んじ、経済的には観光・金融・食料立国、政治的には大統領を牽制するため、百人会議(国会)の議員全員が官位につく寡頭制をとることとしていた。

 福島第一原発再臨界事故以来、東京から移住した富裕層が旧兵庫県に多数住んでいた一方、旧大阪府には外国人が多かった。旧日本国の大企業の多くが大阪市に本社を有したため、法人系の税収が多く見込めた。

 観光、金融、食料に集中した経済は繁栄しており、とくに中東、東南アジアとの経済関係が深かった。エネルギー政策的には、旧関西電力の原発を国有化して温存することを決めた。通貨単位は両を採用した。ただし当面は1両=1円の固定相場制とした。

 大和国は伝統文化を重んじる一方、最先端の金融センターを持っており、大阪証券取引所、大阪不動産証券取引所、大阪外国為替取引所は、上海、シンガポールを凌ぐアジア最大の取引高があり、とくに大阪不動産証券取引所の上場不動産の時価総額は世界一だった。大阪証券取引所に上場している東シナ海油田開発権と太平洋メタンハイドレート開発権を担保とするECDFイーストコーストドリームファンドは時価500兆両(=円)の世界最大ファンドとしてギネスブックに掲載されていた。

 大阪りんくうタウンは旧日本国最大のカジノ街を有し、ラスベガス方式で暴力団や民族団体を完全排除していた。また、パチンコ店はミニカジノとして、カジノ法に包括し、換金営業を管理していた。大阪市と神戸市は旧来からヤクザの抗争が絶えない地域だったため、暴力団財産没収条例(独立後は法に昇格)を施行し大和州時代から組織及び構成員の資産の凍結・没収、不正所得の100倍の課徴金を課すこととしていた。その結果、暴力団の一掃にほぼ成功していた。それでもなお治安はよいとは言えず、旧大阪府警特殊部隊を主体とする武装警察ナスワット(NSWAT、ナニワスワット)が治安維持を担当していてもなお、犯罪率は依然として四国で一番高かった。

 猿田大統領の電撃的な非武装中立国宣言は大きな波紋を呼んだ。非武装中立は旧日本国憲法の理想とされ、旧左翼のスローガンとされてきた理想論である。四国が対峙する現状で非武装を実践することは、猿田のシンパですら思いがけないことだった。

 猿田は非武装中立国宣言の中でこう述べた。「大和国は神の国であり、軍備を持つことはふさわしくない。大和国を攻めることは神を攻めることであり、大和国が滅びることは神が滅びることである。それはありえないことである。それゆえに大和国の防衛のために軍備はいらない」

 こうして大和国の国境は無防備となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ