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サイバーQ  作者: 石渡正佳
サイバーQ1 サイバーニュース編
19/66

19 アメリカ分裂とホアリゼーション

 中国は2010年代後半には購買力平価ベースGDPがアメリカを抜いて世界第1位となり、2028年にはドルベースGDPでも世界第1位となった。2030年代、中国を中心としたCUチャイナユニオンが成立し、インドシナ及びインドとサハラ以南のアフリカの諸国が参加した。これ以降、世界はCUチャイナユニオンTPトランスパシフィックユニオン,AA(北南米ユニオン)、EUヨーロッパユニオンRUロシアユニオン、GC(ペルシャ湾岸諸国ユニオン)の6ブロック(6ユニオン)体制となっている。このうちGDPでも人口でも面積でも最大規模となったのがCUである。

 こうした世界経済の枠組を大きく変える事件が2035年に起こった。アメリカ西海岸の5州(アラスカ、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア、ハワイ)の分離独立宣言である。さらには東海岸の建国時13州(コネティカット、サウスカロライナ、ジョージア、デラウェア、ニュージャージー、ニューハンプシャー、ニューヨーク、ノースカロライナ、バージニア、ペンシルベニア、マサチューセッツ、メリーランド、ロードアイランド)も分離独立宣言し、アメリカは3分裂した。

 西海岸5州(西アメリカ合衆国)はカリフォルニアを盟主としてTPに参加し、CUにも接近した。東海岸13州(東アメリカ合衆国)はニューヨークを盟主としてEUに参加した。中央32州(中央アメリカ合衆国)はテキサスを盟主としてAAにとどまった。

 3地域はそれぞれにアメリカ合衆国の正当なる承継を主張し、イギリス東インド会社旗に由来する星条旗に代わる新国旗を定めた。西アメリカ合衆国は5星旗、東アメリカ合衆国は13条旗、中央アメリカ合衆国は32星旗である。

 カナダもアメリカの分裂に触発されて東西カナダに分裂した。

 アメリカとカナダの分裂によって、TPとEUの経済力が増し、CU覇権の構図に狂いが生じた。インドがCUからの離脱とTP参加を表明し、TPはTPIに発展した。さらにはインドシナもTPIに寝返ったことで、太平洋、東シナ海からインド洋まで中国包囲網が完成し、中国の盟友はサハラ以南のアフリカだけになった。中国は巻き返しを狙って旧共産圏のロシアに接近し、CRUの構築を模索した。EUもそうはさせじとロシアにERUの構築を打診した。これに対してロシアはEU、CUを両天分にかけながら、GCに接近していた。

 中国とロシアの連合が成立し、インドがCUに復帰し、さらにはCUとTPが連合して、覇権争いは終焉し、中国中心の世界経済システムが誕生し、EUとAAの凋落、ひいては欧米主義、白人主義の終焉は決定的となった。

 世界経済は第四次グローバリゼーションを迎えようとしていた。第一次は大航海時代あるいは貿易風時代、第二次は産業革命時代あるいは石炭時代、第三次はアメリカ時代あるいは石油時代だった。そして第四次は中国時代あるいはニューシルクロード時代である。これは中国を世界の中心とする古代の中華思想の復活であり、ホアの字にちなんでホアリゼーションと呼ばれる。

 ホアリゼーションはアメリカのグローバリゼーションのような民主主義の押し付けはせず、政治と経済の多様な組み合わせを容認する。独裁国家でも軍事国家でもかまわない。支配者が財閥と癒着しようと、同族企業を財閥化しようと、後継者を世襲しようと関与しない。結果的に政治と経済が安定し、民衆の生活水準と教育水準が向上し、中国政府と中国企業の利益に反しなければいいのである。

 ホアリゼーションの共通語は簡体字中国語(北京語)である。このため多くの国の教育機関が第一外国語を英語から中国語に変更し、第一ないし第二外国語を中国語とした国は世界の90%を超えた。国連総会の演説も中国語が多くなった。2016年のトランプ大統領当選からアメリカの凋落が顕著になったとされる。それから20年後の2035年、名実ともにアメリカ時代は終焉し、中国時代となったのである。

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