15~1カ月半~
「さて、シロ君とウイルにアーリア様からの指示を伝えるよ~」
ウイルの部屋に移動した僕らにさっそくトウ様が切り出してくる。
「君ら二人はこれからの1カ月半、この部屋で一緒に生活してもらうよ。
一緒に生活しながら、ウイルはシロ君の護衛をするんだよ。
もちろん儂と儂の部下たちも陰から護衛を行うけども、シロ君はウイルと一緒にいる時はウイルに守ってもらうんだよ~
それからシロ君には儂と部下達が、教会の本当の歴史や真実を伝えていくよ。
それと並行して基礎的な戦闘訓練も行うよ。
これは君の適性なんかを測っていくのも目的だからね~
ウイルにはこれまで通りの訓練を続けてもらうよ~
いいかい二人とも、あと1カ月半しっかりとやることをやって旅立つんだよ。」
僕の適正か・・・
僕は何ができるだろう?
僕にできる事・・・
僕にできる事なんてあるんだろうか?
・・・今僕には自分に何ができるかはわからない。
だけどなにかができるかもしれない。
これからの1カ月半、しっかりとやることをやっていこう。
「はい、トオ様。
しっかりと励みます。
ご指導の方よろしくお願いします。」
「おう、シロの事はまかせとけ。
1カ月半しっかりと守るぜ。」
「うんうん、二人ともいい返事だね~
それじゃあさっそく二人とも訓練に行こうかね。
しっかりとやるんだよ~」
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それから1カ月半、僕はトウ様達から様々な事を教わった。
世界の事、氏族の事、本当の歴史、そして神についても。
教会の考え。
何を目指し、何を為したいのか。
その中で僕はどう生きるのか。
どう生きたいのか。
そのために何が必要なのか。
考えることも増えた。
全てに怯えて、未来に絶望していた僕がどう生きていくのかを考えられる。
自分で未来を選択することができる。
それはとても幸せな事だと思う。
また訓練を通じ僕自身の適性についても学んだ。
僕は魔人族だが魔術の才能は皆無であること。
しかし才能は無くても僕が持つ魔力量は非常に多いことも知った。
この魔力をどうすれば活かせるのか。
そのために他の氏族の技術を学ぶ。
魔術が使えないならば他の氏族の技術を学び、違う戦い方を学ぶ。
これには僕の価値観や考え方は、魔人族の観念や常識に囚われていた事に気づかされた。
魔術しかない。
魔人族としては当たり前の事だ。
そう考えていたが、そうじゃないことに気づかされた。
僕の適性を調べる内に、僕には獣人族の扱う気功術と、少しだが人族の魔導技術を扱うことができると解った。
新しい技術を学ぶこと。
これは簡単な事ではなく、とても1カ月半程度で身に付くものではなく悪戦苦闘している。
全く違うことを学ぶ。
とても難しく、1カ月半かけても最初の感覚を掴めずにいる。
厳しい訓練を受ける。
でも、とても楽しい。
できないと思っていた事。
何をしてもどうしようもないと思っていた事。
まったく違う方法であっても、できるようになるかもしれない。
そう考えるだけでとても楽しかった。
1カ月半はあっという間だった。
本当にあっという間だった。
新しい事を学び、新しい自分に出会う。
これまでの自分が、人生がガラリと変わる。
新しい自分に生まれ変わるような、そんな1カ月半だった。
僕はまだなにかを手にしたわけではない。
なにを手にできるかもわからない。
だけど前を見て歩いていける。
これからなにがあっても前を見ていける。
そういう覚悟を持つことができた。
今日僕はここから旅立つ。




