10~閑話~
~シロ退室後の執務室~
「さて、アス、ベス、トオ。
話はきいていましたね?
彼を中央に送ります、同志と連絡を取り準備をしておきなさい」
「はい、了解であります。
・・・しかし、本当に彼は我々の同志なのですか?」
「ベス、失礼でしょう。
アーリア様の判断に疑問があるというのですか?」
「いやアスよ、そうは言うが。もっともな疑問だろう。
俺にはあの子が我々の同志足りうるとは思えん」
「・・・確かにあの子の資質という点では私も疑問はありますが、あれは神託です。
ならばそこに疑問の余地はないでしょう」
「・・・たしかにあの言葉神託だ。だがそれでもやはり疑問なのだ。
なんの力も持たず、戦えず、ひとりでは生きていくこともできない者が本当に同志足りうるのか?そのような者が我々の戦いに加われば犬死するだけではないのか?そのようなことを聖霊は本当に望むのか?
俺には理解できんのだ」
「ふむ、2人にはあの少年はそんなに問題があるように見えるのかね~?
儂はあの少年を今日初めて見たのだが、問題のある様には見えなんだがね?
むしろちょっと感じ入ったところもあったんだがね~」
「トオ・・・あなたは知らないのですか、あの子は魔人族でありながらまったく魔術を使えない落ちこぼれの欠陥品として有名な子なんですよ」
「ほお、そうなのかね?儂にはかなり有望な、い~い使い手になりそうな子だと見えたのだがね。
有名な落ちこぼれだったのかい?
ん~とてもそういう風には見えなかったんだけどね~」
「ふむ、トオよ。お前はあの子の何を見て有望だと思ったのだ?私もあの子は落ちこぼれだと思うのだが、お前はあの子に何を見たのだ?」
「私もそれは訊きたいですね。トオ、教えてくれませんか?」
「ああ、それはかまわないよ。しかしアスもベスも本当にあの子に対して何も感じなかったのかい?
あの子に感じるものがあったのは儂だけなのかね~?」
「ああ、俺は何も感じなかった。全く魔力を纏っているようにも感じなかったし、なんの力の感じなっかった」
「私も同じです。あの子からは何の力の感じませんでした」
「・・・・実は私も同じです。
なぜあの時神託が下ったのか、口にした私自身がわかりません。
なぜ聖霊があの子を必要とされたのか、なぜ神託を下されたのか全くわからないのです。
トオ、あなたがなにを見、何を感じたか私にも教えて下さい」
「おや、アス、ベスだけじゃなくアーリア様もですかね。
あ~これはあれですかね、儂が魔人族ではなく獣人族なんでそう感じたんですかね~
魔人族のお三方にはあの気配は感じられないということなんですかね~
ま~あの子の気配は、見た目は魔人族ですが、中身は獣人族に近いようですからね~」
「む、トオよ中身が獣人族に近いとはどういうことだ?
あの子のあの瞳、真紅の瞳は魔人族のものであろう?」
「そうなのよ~あの子の瞳は魔人族の真紅で、獣人族の琥珀色ではないね~
でも儂が感じた気配は、不思議なことに獣人族に近いものなのよ~
獣人族の使う内に力をためていく気功術の使い手の気配に近いのよ。
あの子は例えるなら、噴火寸前の火山のようだったね~
ただ、かなり大きな火山なんだけど、内側にある力を外に向け使うことができず、ただ内側で力がマグマみたいにドロドロと渦巻いている感じだね~
あの子は力の使い方を学べばかなりの使い手になりそうだとそう儂は感じたんだよね~」
「トオ、しかしそれはおかしいでしょう。あの子の真紅の瞳は間違いなく魔人族のものです。なのに魔術ではなく獣人族の気功術の使い手というのはおかしいでしょう。」
「うむ、アスの言うとおりだ。トオよあの子は魔人族だ、他の氏族の術の才があるなど道理に合わんのではないか?」
「いやいや~アス、ベス、儂はそう思わんのだよ。
確かに魔人族に気功術と聞けばそう思うかもしれないけどもね~気功や魔術と言ったって同じ魔力を使うものだし、元々は同じ魔法の劣化版なんだしね~氏族に関わらずに使えてもおかしくはないものでしょうよ~
それにね儂はにはね、これこそが劣化神共が打ち込んだ古き楔から解き放たれた、新たなる変革の兆しなんじゃないかと思うんだ~
劣化神共が我々人類を、自らの駒として、そして贄として搾取し続けるために使ってきた、氏族という壁を超えるものの先駆けなんじゃないかと思ったんだ~
劣化神の楔が消え、人類が解放される、我々が望むものの到来への変革の始まりなんじゃないか、だから聖霊は神託を下したんじゃないかって、そう思ったんだよ~」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・トオ。貴方の感じたとおりなら素晴らしい、とても喜ばしいことでしょうね。
ですが、アス、ベス、トオ。今の話はここだけにとどめておきなさい。他者に話すことを禁じます。
あの子が変革の始まりであり、兆しであるならば使命があるということです。いずれは他の同志たちにも知られることでしょうが、今は沈黙をしなさい。
どこに使徒共の、あの忌々しい劣化神の奴隷どもの耳があるかわかりません。如何なる使命を持とうとも、今は何の力も持たないあの子では抗うこともできずに命を落とすでしょう。
沈黙することも、あの子を守る術と考えなさい。
アス、トオ。あなた達2人に中央までの護衛を命じます。影から同行し護衛をしなさい。シロとウイルの2人を確実に中央に送り届けるのです。
そしてトオ、あなたは今話したことを我らの主たるあの方に直接伝えるのです。白の守護者の一人であるあの方ならば上手く取り計らって下さるでしょう。」
「はっ、主命承りました。」
「はい、確かに承りましたよ~」




