9~転機~
「いいですかシロ君、現状の確認です。
この大陸を出たいといってもあなたにはその手段がない。
そうですね?」
「・・・はい・・・僕にはその手段はなにもありません・・・」
・・・っく、わかってはいるが言葉に出すとつらい。
自分で自分の死刑判決でも読んでいる気分だ。
「そうですね、シロ君にはその手段はありません。それは理解していますね。」
「シロ君にはこの大陸を出ていくことはできません。
ではシロ君がこのままこの大陸に居続けた場合どうなるか、私なりに少し考えてみました。」
「シロ君がこのままこの大陸にいた場合、そうですね、あまり良いことはないでしょう。
なんとおりか考えましたが、どれも良い結果は考えられませんでした。
大半は若くして亡くなるか、良くてどこかで奴隷のような暮らしをしているか。
どう考えてもそのような、ろくでもない結果しか思いつきませんでした。」
・・・はっきりと言われた・・・・
想像はしてた、わかっているつもりだった・・・・
でも司祭様の口からはっきりと言われるとショックが大きい・・・
僕は顔を上げることすらできずに俯いてしまう。
「ああ、シロ君。
すいません、落ち込まないでください。
私の話には続きがあるんですよ。
せめてそれを聞いてから落ち込んでください。」
司祭様が声をかけてくださるが、僕は顔を上げることができないでいた。
「シロ君・・・
正直に言います、私は君の気持を正確に理解しているかと言われれば、理解はできていないでしょう。
私は君のように魔術が使えないというようなことはなく、むしろ人並み以上に魔術が扱えるほうです。
ですので魔術が使えない君の苦労は正直わかりません。」
「ですがシロ君、君がこのままこの大陸にいた場合どうなるか?
それを考えたとき、君には明るい未来はほとんどない。
それは理解できたつもりです。
私は君がこんなに悩んでいたのも、今日初めて気づきました。
私が直接見ていたはずの孤児院で、こんなにも悩み苦しんでいる子がいたことに気付けずにいたとは、私の不徳と未熟さによるものなのでしょうね。」
「・・・私は君を救おうと考えます。
私の愛する子供達、そのうちの一人であるシロ君を救うこと。
これは私が果たすべき使命でしょう。
愛する子を救うこと、これはあなた達の親である私が果たすべきこと。
これは聖霊に使える私にとって、その御心とその愛にそうことのできる使命です。
そしてこれは私の贖罪でもあります。
私の不徳から君をこんなにも苦しめてしまった。
君の苦しみに、私は今まで気づくこともできなかった。」
「シロ君、私の贖罪を受け入れ、私に聖霊の愛を示す機会を与えてはくれませんか?」
司祭様が僕に近づき、跪き僕の手をとる。
「シロ君、私は君をこの大陸から旅立たせます。
君を不幸にしないため。
君に少しでも明るい未来が開けるよう、君をこの大陸から旅立たせます。
聖霊の御名の下、その愛を示すため。
君を旅立たせましょう。」
俯いていた顔をあげた・・・
目から涙がこぼれている・・・
とまらない・・・・
とまらない・・・
お礼を・・・お礼を言わなければいけないのに、言葉がでない・・・
言葉を出そうとしても、言葉にならない。
ただ、涙だけが流れ続けていく。
「シロ君、どういう理由になるかはまだわかりませんが、君を必ず旅立たせます。
そしてシロ君、君はこの大陸を出て、中央大陸に行くのです。
そして神学校に通うといいでしょう。
そこでしっかりと学び、未来を掴みなさい。」
涙が止まらない・・・・
言葉も出せず、ただひたすらにうなずいていた。
・・・・・僕は今日、生きていくことを許されたのだ・・・・・




