一応別れ話
★
「久我くん、私…ずっと好きだったの」
俺の前で、瞳を潤ませ頬を染める女。
確か隣のクラスの奴だったっけ?
話したことすらねぇんだけどな…。
「俺、付き合ってる奴いんだけど」
こいつ木原と一緒のクラスだし、俺らのこと知ってんじゃねぇのか?分かんねぇ。
「でも…木原さんと久我くん…あんま仲良くなさそうだし」
俺…こいつダメだわ。平気でズケズケ言う奴。
「お前に言われたくねぇし、つかお前と付き合うとかないから。」
俺の発言に女は泣き出す。
こんな風に泣くのってどうなんだ?
苛立つ気持ちを抑えその場を乗り切る。
「悪い…言い方キツかっ…」
!?
一瞬何が起こったか分かんなかった。
ふいに制服を思いっきり引っ張られ、俺はバランスを崩す。
「最悪な女」
俺は唇をぬぐう。
「もう諦めるから。これぐらいいいでしょ」
★
帰り道…。
「ねぇ…あのさ…」
木原が珍しく黙りこんでいたかと思うと、俺の様子を伺うように聞いてくる。
「何?」
「あの…藍沢さんと…キスなんかしてないよね?」
は!?
藍沢って…今日の奴か?信じらんね。
思わずため息がこぼれる。
「なんで知ってんの?あいつが言ったのか?」
あ…ヤバイ。木原の表情がみるみる曇っていく。
「藍沢さんに…『久我くんとキスしちゃってごめんね』って言われて。したの?」
「したっつーか、あんなん事故みてぇなもんだし、意味ねぇよ」
……。
☆
藍沢さんから聞いた時…頭真っ白になった。
嘘だと思ったのに…
私だって、やっとこないだしてもらったばかりなのに。目頭が熱くなる。
『バーカ、俺…好きな奴としかやんねーよ』
前に颯が友達に言ってたセリフ。
嘘つき…だって私のことだって好きじゃないじゃん。私がお願いしたから…あん時だって。
「木原…お前さ」
「谷口と付き合った方がよくね?」
彼の言葉が私の心を突き刺す。
頭また真っ白になった。