一応彼女
★
スマホが鳴り、今日もバイト先からの呼び出しがかかる。やべぇ、あいつと帰る約束してんのに。
つか、西高の奴休みすぎだし…ぜってぇサボりだろ。
……。
俺はしょうがなく、木原のクラスへ向かう。
この前も一応バイト入ったこと、伝えに行ってんだけどな。気づいてないかも知んねぇけど。
お前が喋りに夢中になってただけだろ。
あいつは今日も谷口と楽しそうに笑いあっていた。
気強い奴だけど、思いっきり笑ったり、怒ったり素直っつーか、なんかな。
戸口から俺は呼ぶ。
「谷口、木原ちょっと借りていい?」
木原は俺に気づくとすぐに駆け寄ってきた。
「今日、お前と帰れねぇから。そんだけ」
「ちょっ、え! ? 颯待ってよ」
☆
気づいたら颯がクラスに来ていて、私は嬉しくなってかけよった。
なのに…
『今日、お前と帰れねぇから。そんだけ』
それだけ言うと行ってしまう。
待ってって言ってんのに…止まってくんないし。
☆
教室に戻ると
「もう用すんだのか?」
シンが不思議そうに聞いてくる。
「うん…帰れないってさ」
私は気持ち誤魔化して笑って言ったんだけど…
「それやっぱあいつ酷くねぇか?トコ一応彼女だろ」
……。
「一応って言わないでよ」
「でもほら、久我くん…けっこう告白してくる子いるらしいのに、とーこちゃんにOKしたんだから、ね、大丈夫だよ」
もっちゃんがフォローをしてくれる。
優しい。
OKね…
『別に…いいけど』
そう答えたあん時の颯はめんどくさそうだったけど。気の迷いだったのかもね…。
だって、好きならもっと優しくしてくれるはずじゃない。




