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一応な関係  作者: aotohana
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私たちの関係



最初に付き合ってから11ヶ月が経つ。

けど私たちの関係はずっと曖昧だった。




「谷口、木原ちょっと借りていい?」


颯が教室のドアから顔をのぞかせた。

無愛想な態度は相変わらず。


私はそれでも、彼がクラスまで来てくれたことを素直に嬉しく思う。



「なに?」


「ん…あぁ悪りぃ、バイト入って帰り一緒ムリになった」



え~、最近またちょくちょく颯はバイトに呼び出される。西高の子は補習が入るとバイトに間に合わないらしい。



「…分かった。バイト頑張ってね」


残念だけど、バイトならしょうがないし…。

手をふって、戻ろうとしたんだけど、彼に背を向けたとこで、肩をつかまれる。



「かわりに日曜、お前言ってた店行くか?」


「え!?いいの?」


「あぁ…ってもう機嫌直ったのか?」


颯は私の顔を見ると、吹き出して笑った。

最近、颯は以前より笑ってる気がする。まぁ、バカにしてる感じもあると言えなくもないけどさ…。

そんなことを考えながら、彼の顔を眺めていると、ぽんと頭を叩かれた。



「じゃ、俺行くわ」



用件が済んだ颯はそのまますぐ行ってしまった。

相変わらずそっけない…けど…

私の顔は、にやけてしまう。日曜デートだ。




お店…それは、こないだもっちゃんとシンが2人で行ってきたというパンケーキのお店。隣町で放課後行くにはちょっと遠いんだよね…。


もっちゃんは…仲良さげに見えた彼氏と別れてしまった。最初は楽しかったけど、一緒にいると疲れちゃうとか…。もっちゃん告われて付き合ったけど、好きにはなれなかったのかな…。


シンは…どうすんだろ…。

シンは自分の恋愛とか話さないし。



席に戻ると…

シンともっちゃん…笑い合ってた。自然なかんじ。

何か2人も変わっていくのかもね…。



「トコ…何にやけてんだよ」


「別に~」


「とーこちゃん、久我くん何の用だったの?」


「あ…もっちゃん、颯一緒に帰れないってさ」


「…のわりには、機嫌いいよな」


ぼそっとシンがつぶやく。

…相変わらずするどい。


「お前…一応ちゃんと『彼女』に見えるわ、最近。お前らなんか雰囲気変わったよな。あいつも笑ってっし…前はすげぇ不機嫌そうな顔してたけど…」



一応ちゃんと?

違うし…今はちゃんと『彼女』だ。





…不機嫌になったと思ったら、すぐ嬉しそうな顔するし…なんかやっぱ素直っつーか、単純つーか。あぁいう顔されっと…調子狂うんだよな。


他の女には湧かない感情。


俺の中で変わったこと…

それは…

あいつが谷口と楽しそうにしてんの見ても、あんま苛つかなくなったこと。


その分優しくできっかも。

つか、勝手に誤解して前はやっぱ俺冷たい態度とってたんだよな…。


口が悪くなったり、態度とかあからさまに変えることができないのも事実だが…。


単純は俺の方か?





日曜日のデートはすごく天気でそれだけで嬉しくなった。窓の外…陽の光でなんかきらきらしてる。

目の前の彼に視線をうつすと、


顔を強ばらせながら、飲み物と一緒流し込んでるっぽい。あんま甘いの好きじゃないくせに、付き合ってくれてるんだよね。気づいてしまったら、心がじんとあったかくなる。



周りには数組のカップル…その中には高校生もいた。彼氏はピアスしてて、一見クールな感じだけど、彼女に笑いかける雰囲気がなんか優しげだ。2人のつくる雰囲気から仲良しなのが伝わってきた。


それに…

繰り返される二人の会話が聞こえてきてしまった。

花…蒼叶…いいなぁ、名前で呼び合うって。



「木原?」


ぼんやりそんなことを考えていたら、彼に声をかけられた。木原…か。黙ったまま、私は生クリームのついた欠片を口に入れる。


……。



「なに、怒ってんの?」



「別に怒ってないけど…さ、颯は私のこと『木原』のままだよね」


彼は私の言いたいことを理解したようだった。

ばつが悪そうな表情に変わる。


「クセっつーか、ずっとそう呼んでたし…あんま気にしたことなかったんだよな」


……ヤバイ。込み上げてくる感情をひとつ息を吐いて落ち着かせる。颯はモテるくせに女心とか全然分かってない。



「じゃあさ…『トコ』でいいから呼んでよ」


「……。」




谷口のこと前ほど苛つかなくなったとはいえ、幼馴染みのあいつと同じ…正直呼びたくねぇ。


前に1度付き合い始めた頃、今日みたいに言われたことがある。あん時は谷口が元カレだと思ってたし

今以上に呼ぶ気にはならなかったが…。




颯はなんか誤魔化した。結局変わらないみたい。

私、やっぱ怒ってんのかな…なんか胸がもやっとする。


……。


けど、せっかくのデートだし、ケンカしたくない。

私はもやもやを心の奥にしまい、誤魔化した。





「これからどうする?」


颯が聞いてくる…まだ一緒にいれるってことだ…。

うん、それだけで嬉しいのはずだよね…。


「えっとね、颯がこないだ言ってた靴…」



店を出たとこで話してたら、さっきのカップルがでてきて、会話を遮られる。



『花…これから俺んち来るか?健叶がうるせぇんだ』


『うん、私も会いたい。蒼叶んち久しぶりだね』



やっぱ仲良しだよ…この2人。彼氏彼女ってかんじ、どっからどうみても。私たちは?…どうみえてんだろ…。


心がまた少し曇ってしまった。



……。


……。



また黙りこんでしまった私と…たぶんそういう私の態度をめんどくさそうに思ってるだろう颯。

そんな彼の不機嫌な顔を見たくなくて、うつむく。




「ぼけっとしてんなよ、ほら行くぞ…東子」



え!?


呼ばれて顔をあげると、照れて不機嫌な表情になっている彼がいた。状況がよく分からなくて…颯の様子を伺う。



「見んなよ」



「あ…あぁ…うん…」



私が笑うから、彼はますます不機嫌な表情になった。





私たちの関係はやっぱり曖昧で…。

うまく伝えられなかったり、伝わらなかったりを繰り返してる。



けど…少しずつ、何かが変わっていく予感。

そう感じられる2人距離…今日この頃。



『いいなぁ、高校生カップル…』



ふいに近くから声が聞こえて、振り向くとOLさんたちと一瞬目が合った。周りをみても…もう高校生カップルはいなくて…



彼の横顔を見上げる。



「俺ら?」


「たぶん…」



私たちは目が合い、そして…笑った。



end


1つだけ残るまだすれ違いの『東子が泣いた理由』は…短編で書けたらな…と思います。


ありがとうございました。




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