一応OK?
☆
高1の夏…
照りつける太陽が眩しくて、暑くて…体も心もどこか重苦しさを感じた。その頃…私は気持ちが酷く落ち込んでいて…。小さな頃からの片想いがようやく実ってうかれてた。
けど、結局すぐにダメになった。
悲しいのに泣けなくて…しんどくて。
屋上でぼんやりしてたら…スマホがなった。
『トコ…傷つけてごめんな』
彼からのメール…謝られたらなんか我慢してた気持ちが溢れてきて、涙がこぼれた。
誰もいないはずだったのに…
最悪のタイミングで入ってきたのが、あいつ…久我颯だった。
私のことを見て、驚いた表情に変わる。
私は泣き顔を見られたくなくて…顔を隠すようにうずくまる。
「あ…悪い、俺行くから…泣いてていいよ」
……。
彼はそのまま屋上のドアを閉めて降りていった。
私はようやく顔をあげることができた。息苦しさと、恥ずかしさで顔が火照る。
最悪…。
☆
廊下にたまっている男子の集団の中…久我の姿を見つける。弱いとこなんてホントは誰にも知られたくなかった。だから、彼を見ると泣いた自分を思い出して嫌になる。
彼は笑ってた。
ホント男子ってバカだなって思うぐらいの話題で。
「あ~、早く彼女欲しいよな、そんでさ…」
「やっぱ胸だよな」
「1組の松山とか、女と遊びまくってるらしいよ」
「なぁ、颯…お前もモテんだから、遊ぶのできんじゃね?経験つんどけば?」
最低…大きな声で話してるから聞こえてくるし。
耳をふさぎたくなる。
「バーカ、俺…好きな奴としかやんねぇよ」
私は意外な久我颯の答えに、思わず振り向いてしまった。
「マジで!?颯なに女みたいなこと言ってんだよ」
「うるせぇ」
彼はからかわれて、じゃれあい笑っていた。
☆
渡り廊下。
久我が1人で歩いてくるのが見える。
私は気づかれないように、うつむいて歩く。
「元気?」
すれ違いざま、彼に声を掛けられ驚いて顔をあげる。
瞳が重なって…
でも彼は一瞬笑っただけで…そのまま歩いて行ってしまった。
★
気の強い奴だって友だちは言ってた。
隣のクラスの木原東子。
けど…ここであいつ、泣いてたんだよな。
「颯…何ぼけっとしてんだよ」
晴紀に声を掛けられた。
屋上でつるんでる奴等と昼飯を食いながらだらけていた。
「いや、別に」
★
次に見た時、木原は笑っていた。
友だちはたくさんいるっぽい。男の前でも怯まないし、思ったこと言うタイプだから、気強ぇって言われるんだろうな。
★
高2になって木原と同じクラスになった。
普通に話したりはしたけど、あの屋上でのことにはお互い触れなかった。
「ちょっと、ぶつかったんだから謝ってよ」
木原は田中のグループに文句を言ってた。
「 とーこちゃん、別に平気だよ」
ぶつかった拍子に倒れた持田の方が逆に慌てて立ち上がる。
「けどさ…もっちゃん、腕今机にあたったし…痛くない?」
「木原…ちょっとかすっただけだろ、いちいちうるせぇな」
田中たちはめんどくさそうに言った。確かにあんな風につっかかってこられると、うぜぇよな。
俺らは窓際の席からその様子を見ていた。
「木原も、あんなんつっかかんなきゃいいのにな」
「マジ強ぇ~よな」
「そうだな」
俺もそん時はそう思ってた。
けど…廊下水道んとこ、タオル濡らしてて…持田の腕冷やしててさ…心配そうなんだよな。そんなん見てしまったからか…?
屋上での泣き顔に、あいつの心配そうな顔…。
なんでか調子狂う。
★
高3になってクラスが別になって…。
すっげ仲がいいわけでもなかったから、かかわりもなくなった。
けど…木原に告られた。
俺のこと好きな様子なんか全くなかったから、正直驚いた。
「なぁ、なんでお前泣いてたの?」
俺はずっと気になっていたことを聞いてみた。
……。
「ちょ…今それ関係なくない?」
「別に…つかちょっと気になってさ」
彼女は一瞬泣きそうな表情になる。
……。
「幼馴染み…付き合ったけど、すぐフラれて…」
「ふーん、で、もうそいつはいいの?」
「…うん」
小さく木原はうなずいた。
こいつが泣くとかよっぽどだよな。
……。
「まぁ、別にいいけど、俺お前と付き合っても」
俺の返事は意外だったのか、木原はすっげ驚いた顔をした。