記憶***さくら色のシュシュ
***
☆
「木原…こないだ言ってた映画行けるようになった」
「え?だってバイトは?」
「あぁ、急遽休みになった」
思いがけず…久我とデートすることになってしまった。どうしよ…めちゃくちゃ嬉しい。
☆
付き合って初めてのデート…。
行けないって思ってたから、準備とかしてなくて…
『とーこちゃん、やっぱ可愛いかっこしてった方がいいよ』
もっちゃんは簡単に言うけど…恥ずかしいんだって。スカートとかはいてったらあいつ、引きそうじゃん。
パンツにしよう。…けど…やっぱり?…決められない。
☆
結局…デニムスカート。
これでも頑張った方だと思う…ナオくんの時は足りなかった頑張り。
スカートよりも…私の気持ちを落ち着かなくさせてるのは…髪をゆるくまとめている、さくら色のシュシュ。
『んー、スカート無理なら、アクセとか髪留めとかでも可愛いの1つするだけで違うんだよ』
もっちゃんから、力説されたアドバイス。アクセとか私持ってないし…。迷ったあげく、苦い思い出のこれを身につけることになる。
★
「いいぜ、代わっても」
西高の奴は快くバイトを代わってくれた。
そりゃそうだよな…俺、結構こいつの代わりに出てっし。
「で、何?お前が代わってとか珍しいじゃん。その日デートとか?おまえ彼女いんだってな、ユナちゃんから聞いたぞ」
ユナ?あぁ…色々誘われるのめんどくさくて、あいつには言ったんだっけ。
「まぁ…そんな感じ」
☆
駅の改札で待ち合わせして…
やっぱり…してくんじゃなかったって後悔した。
久我は驚いた表情で私を見たかと思ったら、笑い出す。普段無愛想であんま笑わないくせに…。
そんなん似合ってないのかな…恥ずかしい。
帰りたくなった。
「久我笑いすぎ。もう…とるし、別にいいよ」
はずそうとしたんだけど、彼はそんな私の手をとめて、はずれそうになったシュシュを結び直す。
「いや、悪りぃ。似合ってっから、そのままでいんじゃね?」
また彼は笑った。
久我はほんとずるい…こんなんで顔が火照って嬉しくなってる私はバカだ。
「もういい…始まるから、早く行こう」
★
スカート…髪は女っぽいゴムで結んでる。
待ち合わせた彼女の姿に思わず笑ってしまった。
すっげ恥ずかしそうに立ってんのが分かる。
不機嫌な表情…照れ隠し…。
可愛くて…笑えた。