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一応な関係  作者: aotohana
15/24

彼女の記憶***初めての彼氏③


「マジで?よかったじゃん」


シンに報告すると、一緒に喜んでくれた。

やっぱいい奴…。


私は浮かれていた…ふわふわしていた。

だから、ナオくんと私の気持ちに違いがあることに気づかなかった。




「ねぇナオくん…大学って忙しい?」


ナオくんの部屋…彼はペンをくるくる回しながら考え事をしている。



「あ~いや、まだそういんじゃないけど…カリキュラム組むのに迷ってんだ、面白そうなんいっぱいあってさ…」



なんだか楽しそう…けど、かまってもらえなくて正直少しつまんない。私がため息をつくと、彼はくるくる回していた手をとめ、私の方を見る。



「あ…トコごめん、俺ほったらかしにしてた。せっかく来てんのにな…。じゃあさ、今週末どっか遊び行くか、2人で」



「2人で?」


「うん、2人で」


ナオくんとデート、ヤバイ…すごく嬉しいかも…。


「ナオくん…ありがと」




電車に揺られて1時間。

ナオくんは海の近くにある水族館に連れてってくれた。はしゃいで平気なフリしてたけど、内心ドキドキしてた。


「トコ、アイス食べる?」


「あ…あぁ、うん食べる」


「じゃ、買ってくっから、ここいて」


ナオくんって、やっぱ大人だよな。

ミホさんにもこんな感じだったのかな…。

自分で暗くなることを考えてしまい、慌ててそれをかき消す。


帰りにイルカのストラップを買ってくれた。

おそろい…すぐにつけ、こっそり眺めては幸せな気持ちで満たされた。




それからも、お花見、買い物、映画…ナオくんの部屋で過ごしたり、2人で過ごす時間が前より増えていった。



昼休み。この話題ができるもっちゃんとシンに話して聞かせていた。他の友達に好きな人のこと話すのなんて恥ずかしいし、ましてや男子は私のこんな話を聞いたら、正直ひくと思う。



「とーこちゃん、うまくいってんだ、よかったね」



最近もっちゃんにも彼氏ができて、2人で盛り上がっていたら、黙ったまま私たちの会話を聞いていたシンが遮る。



「なぁ、トコ、それってデートか?」


はぁ!?


「まぁ、2人でってのが変わったかも知んねぇけど、やってっこと前とあんま変わんなくね?」



「そんなことないし」



「そうかぁ?まぁ…とりあえず兄貴意識させろよ、じゃなきゃ幼馴染みから変わんねぇよ」



何言ってんだって思った。

シンの言葉の意味を後で知ることになる。




ナオくんの部屋で宿題中…


「ねぇ、これってどの公式使うんだっけ?」


「どれ?」


私の肩越しに問題集をのぞきこむ彼。近い…

頬っぺたくっつきそう…。


「あぁ、これはさ…この公式使って…ってトコ聞いてる?」


……。


こんなにドキドキしてんのは私だけ?

分かんない。





夏祭り…浴衣とか恥ずかしくて着てけなかった。


「あれ?トコ浴衣じゃねぇのな」


「そんなん持ってないし」


我ながら可愛くないと思う。


「じゃ、来年は買ってやっから着てこいよ」


ナオくんのこういうとこずるいと思う。

だって、すごく嬉しい…来年も一緒にお祭り行けるってことだよね。約束だ。


「何にやけてんだよ」


「なんでもない」




近頃ナオくんがぼんやりしてる。

だって、さっきからずっと雑誌のページ変わってない。


「ナオくん、なんか元気なくない?」


「いや、別に元気だよ」


笑顔を見せてくれたけど…やっぱいつもと違う。


「じゃあさ、頭撫でてあげよっか?」


「なんで?ガキじゃねぇんだから」


私の提案に呆れた様子の彼。いつものふざけ合いのはずだった。


「まぁまぁ」


私はふざけて、頭を撫でようとした瞬間腕をつかまれた。勢いでナオくんの胸に飛び込む形となる。



「あ~、悪いトコ…っておい、トコ?」



私の顔…今すごいことになってると思う。

だって…熱すぎる。


「顔痛くねぇか、平気?」


私の頬触ってる。

私はこんなにドキドキしてんのに…ナオくんは、いつもと変わらない口調。



『兄貴意識させろよ、じゃなきゃ幼馴染みから変わんねぇよ』



シンの言葉だ…。



「ねぇ、ナオくん…あのさ…」


私はナオくんをじっと見つめた。伝わるように…

なのに…


彼の手は私の頬から離れ、頭を優しく撫でる。


「トコ、ごめんな…」


それはとても優しくて…残酷な言葉だった。

あんなに頭を撫でられることが嬉しかったはずなのに、今のこの行為はまるでただをこねる子どもを諭すかのようで…恥ずかしさだけが込み上げてきた。




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