彼女の記憶***初めての彼氏②
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☆
シンに言われてから、私は内心落ち着かなかった。
ナオくんに告う?
ううん、だって…私が彼女になれるはずない。
☆
ギリって言ってたナオくんも、無事志望大に合格した。
シンと私…そしてナオくんのお祝いをするはずだった…。なのに、ほっとした私は普段絶対出さないであろう、高熱をだしてしまった。
今思えば…あの時高熱だしてなかったら、ナオくんとは幼馴染みのままだった気がする。
☆
扉を叩くノックの音…
「トコ、具合どう?」
「ナオくん、今日お祝いしてたんじゃなかったの?」
「まぁ、親父たち酒入ったし、俺いなくてももういいだろ」
優しく頭を撫でてくれる…
「シンは?」
「あぁ、シンがトコに持ってけって、食えんなら食えよ、ここ置いとくから」
テーブルに置かれたのはカットフルーツ。
「あ…忘れてた、ナオくん合格おめでとう」
「ありがとな…トコもおめでとう。けど、トコも春から高校生かぁ…俺ん中じゃまだガキのままなんだけどな」
ナオくんにとっては意味を含まない言葉…。
けど、私にとっては…
「ねぇ…ナオくん。ミホさんはガキじゃない?」
ナオくんの顔色が変わった。
「なに言ってんだ、ミホは関係ねぇし。フラれたからな」
そう言って少し辛そうに笑った。
そんな彼の表情を見たからか、熱がまた上がったからなのか…のどの奥が熱くなった。
「いいから、寝とけ」
ナオくん…
「…じゃダメかな?」
「え!?」
部屋を出ていこうとしたナオくんが立ち止まる。
「だから、私じゃダメかな?ナオくんの彼女になりたい」
☆
……。
しばらくの沈黙。固まったままのナオくん…そして笑った顔。
「トコ、お前何?俺フラれてなぐさめてくれてんの?」
私の精一杯の告白は…伝わってなかったらしい。
「違う…ちがくて、本気!!ナオくんのこと好きなの」
手が自分でも震えているのが分かった。恥ずかしい…うつむいてナオくんを見れない私に、彼は…
「あ…あぁ、うん…分かった。じゃあさ…トコ、春から俺の彼女な」
びっくりして顔をあげた私に、ナオくんは優しい表情でそう言った。
小さな頃からの想いがようやく実った瞬間だった。