想い★颯と東子☆
☆
下駄箱んとこでたまってる男女の集団。
その中に颯の姿を見つけたとたん、心がズキズキと悲鳴をあげる。笑い声…そして、彼の隣には女の子。腕触ってるし…。
颯は一瞬こっちを見たから、絶対私に気づいたと思う。けど…目…そらした。さっきまで、楽しそうに笑ってたクセに、ひどく不機嫌な顔をしている。
……。
「どしたトコ?持田待ってっから、早く行こうぜ」
立ち止まったままの私にシンが声をかける。
放課後、もっちゃんとシンのうちで宿題するんだった。
★
「颯くん、晴紀がね…」
「ちげーよ、マユあれはケンがさ…」
いつものバカ話。晴紀の奴が最近仲良くしている5組の女とその友だちが通りかかって俺たちの話に加わっていた。
つか…腕勝手につかんでんなよ。
こういうの、相変わらずダメだわ、俺。
けど、晴紀の好きな奴の友だちだし、何も言えねぇよな。
あ…何気に視線を向けた先にあいつがいた。
俺は木原からすぐに目そらす。
正確には…木原と谷口から。
別れてから、いくらなんでも早くねぇか?
俺と一瞬でも付き合ってたことが嘘のように、2人で楽しそうに笑ってた。
「颯くんも、今日放課後遊びに行かない?」
……。
「行かねぇ」
☆
「あ…トコ、いらっしゃい」
難しそうな本を片手に優しげな笑顔で笑う、メガネの彼。
「ナオくん、今日大学休み?」
「あぁ、レポート提出せまっててさ、まぁ、ゆっくりしてって」
「うん」
私とナオくんはお互いに笑いあった。
☆
「シンくんのお兄さんってカッコいいね」
「シンと似てないでしょ、もっちゃん」
「うっせぇよ、お前ら」
シンは3個のグラスを乱暴にテーブルに置いた。
☆
ナオくんとこんな風に穏やかな気持ちで笑いあえるなんて、あの頃は思ってなかった。
小さな頃から憧れだった、優しくて大好きな人。
私の幼馴染み…そして…私の初めての彼氏。