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記憶***名前と優しさ
***
☆
「ねぇ、久我…」
「なに?」
「あの…さ、名前で呼んでもいい?」
驚いた様子の久我。少しの間があって…
「別に…いいけど」
「えっと…じゃ…颯、私のことも名前で呼んでもいいけど…」
というか呼んで欲しい。
「あ…『トコ』とかでもね…全然いいよ」
私は恥ずかしさを誤魔化すように笑って言ったんだけど…彼は少し怒ったような表情をする。
「トコ?…そんなん呼びたくねぇし」
私の願いは叶うことはなかった。
付き合う前も、後も『木原』のまま。
ひどくない?
颯は私のこと全然好きじゃないし、彼女と思ってるかさえ謎だ…。
☆
颯は全然優しくない。
ほんとに…優しくなくて…酷くて…
けど…
バイトない日、一緒に帰る時はいつも家の近くまで送ってくれたっけ…。
「じゃあな」
別れる時はそっけないんだけどね。
彼の後ろ姿を見てたいのに
「いいから、早く行けって、風邪引くだろ」
そうやって、いつも怒る。
無愛想だけど…ほんとは優しいこと知ってたはずなのに…。