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一応な関係  作者: aotohana
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一応初めて


『別に…いいけど』


彼は間違いなくそう言った。


なのに…






怒りの感情でつい、早足になってしまう。



「トコ、お前なんでひとりでいんだよ、あいつは?」


正門を出たところで、シンに声をかけられた。

谷口慎太郎…彼は幼馴染みだ。



「シン…私もうあいつと別れる」


私の言葉に、シンは呆れた表情とため息を1つ。


「お前、それもう聞きあきた。ったく…何回目だ」



だってさ…あいつ、ムカつく。





それは今朝のことだった。


「ねぇ、はやて今日一緒に帰ろ」


下駄箱のとこ、珍しく朝から彼を発見して嬉しくなった。そんな私とは対照的に不機嫌そうな彼の顔。


私に見向きもせず、あくびをしている彼…久我颯と私は一応付き合ってる。


「分かった…放課後な」


彼は私との会話を勝手に終わりにすると、登校してきた友達の輪に入り、行ってしまう。




放課後…待っても颯は来なくて、彼のクラスに行ってみると


「あぁ、あいつ帰ったけど」


で…今に至る。

も~頭にきたし…いつもいつも私ばっかでさ。



「シン…カラオケ付き合って」


私のただならぬ雰囲気に押され


「たくっ、しょうがねぇな」


文句を言いつつ、結局シンは付き合ってくれた。





教室前の廊下…。


はぁ…ったくめんどくせぇな。

俺の隣にいる女は酷くブスくれていた。


「ねぇ、昨日約束したじゃん、私」


「だからさ、急にバイトお願いされたんだからしょうがねぇだろ」


……。


「けどさ…メールでそういれてくれればよかったじゃん」



「は!?それはお前が…」


「颯~、ノート貸して」


教室から俺を呼ぶ晴紀の声。


「晴紀、ちょっと待ってろって…」


……。


「もういいよ」


ぷいっとそっぽを向くと、木原は隣のクラスに戻っていった。




「ほら、ノート」


俺は友人たちと話に夢中になっている、晴紀の頭にノートを乗せる。


振り向いた晴紀は少々ばつの悪い表情を見せる。


「悪い…俺なんか邪魔した?」


「いや、別に…あいつよく怒っから」


俺は笑って言った。


「東子ちゃん、けっこう気強いよな。お前がOKしたって知った時は、正直びっくりしたわ」


「何が?」


よく意味がわかんねぇ。



「いやだって、あん時お前、3組の志保ちゃんにも告られてたじゃん。志保ちゃんめっちゃ可愛いし…なんで東子ちゃんの方なんかなってさ…」



「なんでって…お前に教えるかよ」





颯の部屋


私はしわくちゃのまま床に落ちている、制服のシャツを拾いまとる。


それはしっかりと折り目がついてしまっていて、私は伸ばすように裾を引っ張った。




「なぁ、なんか東子ちゃん…具合悪そうじゃね?」


合同の体育。今日は体育館でバスケをしていた。

晴紀にそう言われて、俺は隣のコートをのぞく。

ボールが飛び交う中…あいつは動かずに立っていた。いつもなら活発に動き回ってるクセに、顔色悪りぃし…。


……。


試合が終わると、あいつは壁にもたれ座り込んでいる。


平気なのか?


「颯~、次俺らの番」


ユニフォームを渡された。


「あぁ」


……。視線を戻そうと思った時…谷口とあいつが笑い合ってんのが見えた。


なんだ…全然平気じゃねぇか。




放課後珍しく颯は私を迎えに来た。


「木原、さっさと帰るぞ」


私はそのことが嬉しくて上機嫌になる。


「あ…シン、もっちゃん…またね」


一緒にいた2人に挨拶すると、私は彼の元へ急ぐ。

隣にいる彼は不機嫌そうだけど。


「めずらしいね、颯が迎えにくるなんてさ」


……。


「お前がいつも自分ばっかりって、うるせぇからな」


めんどくさそうに、ため息まじりに彼はそう言う。

彼の言葉や態度は、私をいつも振り回す。

嬉しくて膨らんだ気持ちは、音をたててしぼんでいくようだった。




正門を出たとこで、彼は


「ちょっと待ってろ」って私を残していなくなる。

彼のそっけない言葉や態度にまた私の心は曇る。



……。


しばらくして、自転車を引っ張って戻ってきた。


「何このチャリどうしたの?」


「晴紀に借りた。駅まで歩くのしんどいだろ」


なんで…しんどいの分かったんだろ。

こんなんずるいよ。





駅のホーム


「なぁ、お前が具合悪いの…俺のせいだよな。昨日…」



「何言ってんの?ち…違うし、ちょっと寝不足なだけだよ」


慌てた様子で木原は否定すっけど、絶対そうだよな。なんつーか、やっぱさ…あんなんやめときゃよかった。


ため息が無意識にこぼれた。





そう昨日…


俺は木原を抱いた。



***



俺の部屋…



「ねぇ、颯はさ…私に何で何にもしないの?」


唐突な木原からの質問に、俺は飲んでいたコーラが気管に入り、思わず咳き込む。


「は!?お前何いきなり言い出すんだよ」



「だってさ…キス…とかもしたことないじゃん、半年も付き合ってんのに…」


ほんと何言い出すんだか。



「いや…つーかさ…お前とそんなんする雰囲気になんねぇだろ」


あ…しまった…と後悔した時には、木原は泣きそうな表情に変わっていた。


「木原…あのさ…俺は…」


!?


木原が俺にしがみつく。


「ちょっ、木原…おい待てって」


……離れようとはしない。

震える腕は俺の制服をつかむ。


「颯…してよ…お願い」




あぁ…ったくなぁ…なんなんだか。

俺は木原の唇をふさぐ。

つか…マジでこんなん望んでんのか。


1度外れてしまった箍は…


結局キスしても、木原は離れてはくれなかった。

今まで触れなかった分なのか、何度もキスをした。


そしてそのまま…。


けど…抱いた後で、木原は泣き出すし。

訳わかんねぇし、やっぱこんなんしなきゃよかったって後悔した。流された…俺。



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