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PHASE.4

 知られたくなかったら、書かなきゃいい。

 九王沢さんがはっきりとそう言ったわけではない。だが彼女の鋭い切り返しはそんな風に僕には聞こえた。意図するしないに関わらず、僕にとってそれはひどく挑発的な売り言葉に買い言葉だったのだ。有体に言えば、かちんときてしまったのだ。

「どうしてさ…」

 自分でもその声が、必要以上の怒りを帯びているのが分かった。でも、それを止められなかった。

「どうして君にそこまで言われなきゃならないんだ!?」

 場違いだとは分かっていた。そして相手は九王沢さんなのに。つい、僕は感情を激し、強い声で返してしまったのだ。でも、九王沢さんも九王沢さんだ。

「どうして?」

 僕の剣幕に怯まず九王沢さんは、逆に真剣な表情で挑んできたのだ。

「だって、わたし、あの『ランズエンド』から、あなたが込めたかった気持ちの欠片を見つけました。とても切ない、誰にも伝わらないと思い極めるほどに切り詰めた気持ちの痕跡を。あなたが、あれを書いたんですよ?…わたし、わたし、だから今ここにいるんです。なのに、どうしてあなたは、あの作品に込められた気持ちを誤魔化し続けようとするんですか?あなた自身が諦めたばかりに(おとし)めてしまった言葉を、自分の力で、今度こそきちんと取り戻そうとしないんですか!?」

 あの九王沢さんもついに声を荒げた。鋭く見開かれたその瞳に薄くにじむ涙さえ、今の僕の目には、うとましく思えた。

「甚だしい思い上がりだな。僕の書いたものを読んで、僕のことがみんな分かったって言うのか!?君だけは特別な人間だから、選ばれた存在だから、僕ごときの気持ちなんて簡単に分かるんだって、そう言いたいんだよな!?」

「わたしは、わたしの意志でここにいるんです。誰に選ばれる必要もないし、誰かに評価されるためでもない。わたしが、あなたを、もっと知りたいから!あなたにも、わたしのこと、分かってほしいから!それの何がいけないんですか!?」

 九王沢さんは押し殺した声で、僕に毅然と言い返した。

「へえ、そいつは良かったな。立派なもんだ」

 僕はわざとらしくため息をつくと、さらに大声を張り上げ、

「で、僕は何でも知ってる君になんて言えばいいんだ?さすがは九王沢さんだね、全部正解ですよって認めてひれ伏せばいいのか?!」

 九王沢さんはそこで、本当に哀しそうな表情をした。そんなことを僕が言うなら、もはや返す言葉は尽きたとその顔は言っていた。僕にも痛いほどに分かってはいた。僕が言うように、九王沢さんが見栄や自惚れや、たかだかエリート意識を満足させるために僕にここまで肩入れしようとしているわけないじゃないか。

 九王沢さんは必死に僕を受け入れようと思って話しているのだ。と、言うより今日一日、彼女はずっとそうだったはずなのだ。

 それが分かってなお僕は、ちっぽけな自分のプライドを守るためだけに九王沢さんを傷つけようとするためだけの言葉を重ねてしまった。いつの間にか、その乱刃(らんば)がつけた生傷は僕自身ばかりか平気で九王沢さんを傷つけてしまったのだ。

 たまらなく居たたまれない。初めから分かってはいたのだが、僕が九王沢さんとここにいる資格は、本当にとことんのレベルでないのだ。

 これ以上彼女の顔を見ることすら出来ない僕は、突然(きびす)を返して歩き出した。どこでもいい。ここからただ、逃げ出したかったのだ。言い訳すら出来ません。全力の現実逃避だった。

 九王沢さんは僕に、ついてこなかった。当たり前だ。こんなひどい男、もう金輪際、知り合いとしても願い下げだろう。

 やけに明るい月を浴びながら、僕は歩いた。途中コンビニで常温の棚に並んでるワンカップを買うと、しょっぱい聖夜の月を仰ぎながら一気飲みした。どうせならこの際、何も考えられなくなるほど泥酔して、三日酔いぐらいになりたかったのだ。だがぬるいお酒は甘ったるいだけで、みっともなくむくれた心を腐らせる以外にはなんの役にも立たなかった。


 ああああああああなんか。もうっ、なんか。

 別れて、一分以内に僕は頭を抱えた。

 なんっっっ…てことだ。今ここ、最悪の向こう側だ。冥王星の彼方だって、今の僕より光が届いている。

 なんでだ。あのとき、どうして冷静になれなかった?どうしてこうなった?誰が見ても正気じゃないぞ。九王沢さんみたいな子を、怒鳴りつけるなんて。

 いや分かってますよ。これ、全面的に僕が悪いんです。

 自分でも、一番痛いところを九王沢さんにピンポイントで突かれたの、よく分かっていた。しかも完璧な不意打ちだ、精一杯九王沢さんの前でカッコつけていいこと言っても、元々はちっちゃい人間の僕が動転しないはずがない。

 だってあの作品で僕が、本当に表現しようとしたことがあっただろう、なんていきなり核心突いてくるんだもん。

 僕にとっては重装騎兵のランスで心臓を一気に貫かれた気がした。そんなことされたら、もちろん即死だ。本人は悪気がないだけに九王沢さん、全く手加減なしだ。

(でもなぜ、九王沢さんには分かったんだろう?)

 だって実は、あの作品に描くはずだったもののことは。

 本当に自分以外は誰も、通じないことだと思っていたことだった。いや、誰にも分からなくてもそれでいいと思っていたことだ。物書きは最低だ。もしそんなことだとしても、どこかで自分を手放しで分かってほしいと言うスケベ根性があるせいで、つい随所でそれらしいことを書いてしまうのだから。

 九王沢さんが言うように、心の底から知られたくないなら、それは書かなきゃいいだけのことじゃないか。

 さっきは素直に認められなかったが、何から何まで九王沢さんの言う通りなのだった。

『ランズエンド』の中で僕は何も表現できていない。それは僕が伝えることを諦めたから。いや、僕が抱えている本質的な問題について無駄に思わせぶりな、ひどく煮え切らない姿勢でいたから。その卑怯な中途半端さを、九王沢さんは感じたはずだし、本人はその気はなくてもあれは徹底的な糾弾だった。開き直って逆ギレと言う最悪すぎる反応をしてしまったが、あれは正しく僕の断末魔の叫びだったのである。

 いやなんと言い換えようとそれは、言い訳に過ぎないのだ。別に誰も真剣に読みはしない自分の作品のことなんかで本気で逆ギレする僕が人間ちんまいのだ。

 少しでも疑問に思ったことは、ロケットスタートな直感力でどこまでも物事を突き詰める恐ろしい性癖がある九王沢さんとは言え、超絶純粋培養のせいでおっぱい以上に頭脳と直感力が究極進化してしまってるんじゃないかとかつい悪口言いたくなる九王沢さんとは言え、リアル聖処女で天使な九王沢さんに悪気があるはずはない。ねえ、九王沢さん。

「…って」

 ここはどこだ?て言うか九王沢さんは?


「あれ?」

 僕は前後左右を見回した。言うまでもなく、九王沢さんの姿はどこにもない。

 なんと。

 気がつくと僕は一人で大分歩き始めてしまっていた。

 つまり僕は、九王沢さんを置いてきたのだ。

 真夜中の横浜だぞ!?あの九王沢さんにもし何かあったら、全面的に僕の責任だ。じゃあ責任をとって結婚…じゃなくて、僕の人生のすべてをかけても責任は取れないだろう。万が一、九王沢さんを傷物にしてみろ。その瞬間から僕は依田ちゃんはじめ周囲の人には絶縁され、社会的にも抹殺。存在があった痕跡すら残らない人生を終えるしかないかも知れない。

 いやそんなことより、神聖にして犯すべからずの九王沢さんを夜行性動物が闊歩するサバンナに放置してくるなんて、我ながらどういう神経してるんだ!?って言うか、僕はどこまで彼女にひどいことしたら気が済むんだろう?

 どっ、どどどうしよう?酔ってるし、暗くて風景変わってるし、ここどこだかわかんないし!

 パニくってると、ここで最悪のタイミングで着信が。

 やっぱり依田ちゃんだった。

「な、なに依田ちゃん?」

 恐る恐る僕は着信に出た。酔ってるはずの依田ちゃん、なぜかいつものしらっとした声。

『あ、先輩、もしかしてこれから一発って言う感じですか?間に合って良かったです。みんな先輩を心配して電話しろしろうっさくて』

 後ろでカラオケっぽい音がする。たぶん納会の二次会辺りから(九王沢さんを)心配して掛けてきやがったのだ。心配だって?誰かが大声で失恋ソングのメドレー歌ってるの聞こえるけど。えっ、失恋ソングってそんな皆で楽しそうに大合唱するものだったけ。

『あ、ちなみにBGMはもちろんあてつけです。みんな、さっさとフラれちまえ!って言ってますよ』

「わざわざ解説しなくても分かるよ」

 て言うかうるさいわ。こっちはそれどころじゃねえんだっつの!

『あれ、もしかしてやっぱり、だめだった系ですか?(後ろ、大歓声)ちなみに無理やりはアウツですからね。そんなことしたら、九王沢さんの代わりにうちの文芸部でカンパを募って先輩を強制わいせつで告訴することになってますから』

「いやあのね。依田ちゃん、それどころじゃないんだよ。(背後の音で聞こえないようだ)いい!?…あのさ、とりあえずまずは怒らないで聞いてほしいんだけど…」

 僕は現状を話した。その一、今ホテルじゃなくて外だ。その二、僕は、九王沢さんを泣かせた上に置いてけぼりにしてきた。その三、それから、酔っ払って歩いてきたのでここがどこだか分からないし、九王沢さんをどこに置いてきたのかも分からない。

「でさ…悪いんだけど九王沢さん、どこにホテル予約とったとか聞いてないかな。もしかしたら、彼女、今そこに」

 その瞬間。

 ブツリ、と音を立てて電話が切れた。問答無用だ。そしてそれからはいくらかけても繋がらなかった。

 本格的に終わった。依田ちゃん、ブチ切れたなんてもんじゃないだろう。さあ、明日からは大学二年にして新生活だぞ。僕は学内で誰もが認める透明人間だ。

 一分後だった。

 今度はメールが入ってきた。依田ちゃんからだった。そこには用件もなく、切羽詰まった感じでぽつんと一言だけこう書かれていた。


 待ってろ絶対そこ動くな


「いっ、今殺される!?」

 執行猶予すらくれないのか!?

 依田ちゃんならやりかねない。でももうさすがに横浜まで行く電車ないだろ。

 それよりそのまま動くなって、九王沢さんはどうするのだ。僕は依田ちゃんに電話を掛け直したが、やはり繋がらない。ばっちり着信拒否にされていた。九王沢さんほっといたまま、どうしろってんだ。

 寒さに震えていると、また新たな着信が。

 見慣れない番号だ。僕は反射的に出てしまった。

「はい…?」

 電話を取った瞬間、全く聞きなれない声で誰かがこう言った。

「Go straight from here(そのまま真っ直ぐ歩け)」

 えっ、英語?しかもそれがハリウッドのスパイ映画に出てくるような、無駄に渋い押し殺した男の声なのだ。

「だっ、誰ですか!?もしかして間違えてます?」

 文学部なので英文テキストの授業出てるとはいえ、とっさに英語が出るわけない。僕はとっさに日本語で返した。

「Keep talking(切るなよ)」

 男は、一文節ごとに区切るような言い方で命令してきた。

「Keep walking right now(いいから、そのまま歩くんだ)」

 言い残すと電話がぶつりと切れた。なんだこの人!?て言うか誰!?

 知り合いと言う知り合いの顔を思い浮かべ、あらゆる可能性を検討したが、僕には今の着信が入った理由が理解出来なかった。

 もしかして依田ちゃん、本物のエージェントに僕の始末を頼んだのだろうか。元SASとか、そう言う人を。いや、そんなはずないって。

 一体、僕に何が起きようとしているんだ?


 仕方なく僕は、言われた通りにそのまま真っ直ぐ歩いてみた。そうして見慣れないビルの谷間を縫って歩くうちに、なんといつしか見慣れた風景に。あれっ、ここ、中華街の近くだ。左手をずっと行くと山下公園の通り、大きなマンションやビルに囲まれた谷底のような場所だった。

「あっ」

 何気なく目の前のコンビニ明かりを吸い寄せられるように見ていて、僕は声を上げそうになった。なんと九王沢さんだ。こんな偶然ってあるのか。誰だか分からないけど、電話の人、本当にありがとう。

「九王沢さ…」

 と、安易に声をかけようとして、僕は口ごもった。

 コンビニ明かりの中、一人でぽつんとたたずんでいる九王沢さんを見て、僕がどれだけ彼女を傷つけてしまったか、一目で分かったからだ。

 僕を追いかけて迷子になってしまったのか。九王沢さんは途方に暮れた表情で、じっとうつむいて時をやり過ごしていた。

 泣き顔のままだ。泣き腫らした後の瞳は伏し目がちになり、憔悴(しょうすい)した頬は淡く血の気を帯びてしどけなく濡れた気配を放っていた。半分開いた唇のあわいは、まだ言い残したことを探すかのようにかすかに震えを帯びていた。その姿を見ていると、僕は本当に罪悪感を禁じ得なかった。

 あれだけの暴言を吐いた上、慣れない日本の夜の繁華街に置き去りにしたのだ。本当に、寂しい思いをさせたに違いない。心細い気持ちでいるに違いない。

(全力で謝ろう)

 もう許してくれないかも知れない。

 でもまずはちゃんと謝って、とにかく今夜は無事に部屋まで送り届けよう。

 僕が意を決して声をかけようと思った時だ。ちょうどげらげら笑いながら出てきた、パーカー姿の若い男たちの三人組がゴミ箱の隣で泣いている九王沢さんを先に見つけた。もちろん、九王沢さんに目をつけないはずはない。こっちがまごついているうち、あっという間に九王沢さんは、三人の男たちに取り囲まれた。言い方は悪いが、これ、ハイエナの前の松坂牛である。こんな連中の生息域に絶対いない九王沢さんが目をつけられないわけないのだ。

「なになに!?ええっ、て言うかなんで泣いてんの!大丈夫!?なーに?暇ならさ、おれらと、飲みに行こうよ!いーじゃん、ね、ね!?」

 場違いな大声がこっちまで聞こえてくる。まずすぎる。いくら九王沢さんでも、こんな無遠慮なテンションの連中にはかなうはずない。泣き顔の九王沢さんは何も言い返さなかったが、まるで三人に寄って集っていたぶられているように見えた。

「つーかこの子、おっぱいでかくね!?おれら、ハッピークリスマスじゃん!プレゼント巨乳ちゃんじゃん!?」

「ほらこっち!すぐそこだし!絶対楽しいから!お酒飲もうよ、いいじゃん!?」

 相手は三人だ。もちろん喧嘩最強不良でもなく、格闘技経験とかなしひょろい文系酔っ払いの僕に、勝ち目はない。でも、そう言う問題じゃなかった。九王沢さんがこんな目に遭っているのは、全面的に僕のせいなのだ。ここで何があっても、九王沢さんを無事にホテルまで送り届けなくてどうする?

 怖かった。が、今の一瞬で僕は死ぬ気で覚悟を決めた。

「九王沢さん!」

 僕は、あらん限りの大声を張った。声は上擦っては、いないはずだった。

 僕の声で九王沢さんは、はっと顔を上げた。

 同時にへらへらしてた三人組がぴたりと動きを停める。う、怖い。

 でも、行くしかない。僕は問答無用で三人の輪の中へ入って行って、彼女の腕を掴んだ。

「待たせちゃってごめん。じゃそろそろ行こうか」

 平静を必死で装った。そう言って一気に九王沢さんを奴らの中から引っ張り出す。

「ああ!?つーかなんすかあんた!?」

 九王沢さんの傍にいたウォッチキャップの男が、甲高い声を張り上げた。たぶん十代だとは思うが、まだらひげで顔を覆った見るからに日中活動してなさそうな男だった。

「おれら先話しかけてんすけど!?邪魔しねえでくれます!?」

 うう、とにかくこう言うのは無視するのが一番だ。殴られてもいい。まずは、九王沢さんを安全に逃がさなきゃ。

「九王沢さん、大丈夫?」

 僕は小声で囁いた。九王沢さんは強張った表情で静かに頷いた。

「はーあーあーあーっ、なにシカトっすか!?彼女にオレつええアピールすか!?」

 嘲笑に堪えて僕は九王沢さんを庇った。

「早く行こう」

「んだこの野郎こっち向けよ!!」

 振り向いた瞬間、そのひげの男が拳を振りかぶっているのが見えた。問答無用で殴る気だ。勝てるはずない。僕が思わず目をつむりそうになったその瞬間だ。

Boysガキども!!!」


 それは場の空気を一変するような声だった。

 問答無用の強制力と言うのだろう。その場にいた、全員の動きが時間を停止したみたいに、ぴたりと静止した。

 ええっ?

 目を開けるとそこに、黒いスーツの男が立っていた。恐らくはイングランド人だと思う。三十代後半と見える。ライオンのような縮れた金髪を短く刈り上げ、綺麗に髭を剃っていた。身長は一九○センチくらいだろうか。それがサッカー選手を思わせる締まりきった分厚い筋肉に鎧われた身体から、凄まじい殺気を放っていたのだ。それでいて目は、眠たそうに醒めているから、ただものじゃない。

 げらげら笑っていた三人が一瞬で恐怖に凍りついた。

 通りの向こうにいた男は、無言で近づいてくると僕と九王沢さんを助け出し、少し離れたところに庇った。

「サガッテ」

 拙い日本語は僕に言ったのだろう。それで気づいた。あ、この人さっきの電話の人だ!?なんか怖いと思ってたけど、こんな人だったんだ!?でもえっ、なんで!?スーツ姿の白人はゆっくりと男たちのところへ戻ると、静かな声で言った。

「Tonight your party time is over.Go back your home(さあ、今夜のパーティは終わりだ。とっとと家へ帰れ)」

「Ahh!?Who the f**k are you!?(んだよ!?てめえ、誰なんだよ)」

 さすがは横浜だ。相手も英語圏人だ。ハーフっぽい顔立ちの、ひと際背の高い男が、食って掛かった。その途端だ。

 いきがる相手に不快げに顔をしかめた男が構えたかと思った瞬間、突然、鋭い左ジャブを放った。スピードも角度もタイミングもただものじゃないことは、誰の目にも明らかだ。もし殴られていたら、自分でも気づかないうちに鼻を折られていたろう。

 パンチはその男の頬を掠めた。と言うより外したのだ。その人はナックルを開くと、背後の壁に思いっきり手を突いていた。

 ドン、じゃすまないほどの大きな音がした。

 あれっ!?この態勢、壁ドンだ。くしくも男同士の壁ドンが成立した。ちなみに言うまでもなく壁ドンされると、相手は身動きとれなくなる。これが恋人同士ならキスするほど顔が近くなるのだが、野郎同士の喧嘩だと、その態勢から頭突き(パチキ)入れたり、膝ぶっこんだりとやりたい放題になるのだ。軍人の気配を持ったこの男ならたぶん五秒で人を殺すだろう。そんな剣幕で男はもはや抵抗できなくて背筋が伸び上がっちゃってる相手を上から下まで眺めまわすと、

「Suck my ball!(黙れ)」

 百獣の王の面構えで威嚇した。

「F**k your nuts,or get away from here!!!」


 そんなわけで、三人は全力で夜の街に消えていった。蜘蛛の子を散らすよう、と言うがほとんどパニック状態だ。何しろ相手は映画から出てきたような特殊部隊っぽい人だ。むしろあの三人が気の毒になってしまうほどだった。

 ちなみにその恐ろしい外人さんだが。

 三人が逃げた後、なぜか九王沢さんにめっちゃ怒られてた。

「なっ、那智さんの目の前でなんて汚い言葉を使うんですか!?失礼じゃないですか!ちゃんと那智さんに謝ってください!」

 そう英語で言ってたらしい。しつっこく言ってたし、このくらいの英語は僕にも分かった。ちなみに、さっきまでの会話の内容は後で聞いて全部九王沢さん訳である。に、しても九王沢さん、最後に三人を追い払ったキメの言葉は、絶対に訳してくれなかった。よっぽど汚いスラングだったのかな。

 凄まじい殺気を放っていた外人さんはどうもロジャーさんと言うみたいなのだが、九王沢さんに怒られて困った笑顔でぺこぺこ謝っていた。

 やっぱりだ。この人、九王沢さんの関係者だったのである。

「あ、あの九王沢さん、僕はいいから。危ないとこ、助けてもらったんだし、逆にお礼言わなきゃじゃないか」

 あんまり九王沢さんがぷりぷり怒るので、僕は頃合いをみて助け舟を出した。

 だってこのロジャーさんがいなかったら、僕は九王沢さんを発見出来なかったし、あの三人に連れ去られる前に声もかけられなかったのだ。早口の英語全開ですっごい怒ってた九王沢さんだが、

「那智さんがそう仰るのなら…」

 と、何とか沈静化した。

以後(イゴ)気ヲツケマス」

 ロジャーさんは拙い日本語で言うと、僕に向かって片目をつむって見せた。お前のお蔭で助かったぜ、とか言ってるのだろうか。にしてもこの人、どこで僕と九王沢さんを見ていたのだろう。まさかデートの最初から?モニターシステムとか搭載されたバンとかでチームとか率いて、ずっと九王沢さんを見守っていたのだろうか。こわっ。でも九王沢さんの家庭環境なら、有り得る。

 しかしそうだとすると、この人、本当にどこまでお嬢様なんだ?

 それからロジャーさんは自分の携帯を取り出すと、迎えの車の手配をしていた。するとたちまち、スモークガラスの怪しい黒塗りバンが到着した。やっぱこの人、元SASとか、特殊部隊だった人なのだ。そんなロジャーさん、去り際、わざわざ僕に近づいてくると、二の腕の辺りをぽんぽん叩いてきて、

「Good luck(上手くやれよ)」

 と一言、捨て台詞を残し夜の街に消えていった。上手くやれって何を、とは怖くて突っ込めなかった。

 そして九王沢さんである。ロジャーさんがいなくなった途端、ここぞとばかりに僕の腕にぎゅううっ、としがみついてきたのだ。今夜一番僕の腕に食い込んでくるよ、Hカップのおっぱいが。いやそしてそんなことより何より、

「那智さんが、助けてくれた…」

 九王沢さん、僕を見つめて本当に嬉しそうにしみじみと言うのだ。

 この世で一番かわいい涙目である。思わずくらっときた。無間地獄から極楽王土へ、極端すぎる逆戻りだ。

 でも。ええっ!?

 いやそうじゃなくて。ちょっと待て。今の全然僕、助けになってないだろ。

「声かけて、わたしのこと連れ出してくれたじゃないですか」

「それは…そうなんだけど」

 今こうして二人、無事でいるのは本当に良かったんだけど、この結果に至るまでに僕の一般常識じゃ考えられない事態があった気がするんだが。

「ロジャーのことは見なかったことにして下さい」

 見たよ!あの人の名前まで知っちゃったよ!

「でも那智さん、ちゃんと自分の意志で戻ってきてくれて、助けてくれたんですよね?」

「う、うん…」

 そこは全然嘘じゃない。嘘じゃない、けどさ…

「それなら後のことはいいと思います。…だって那智さんが、最初にわたしを助けてくれたのは、紛れもない事実ですから」

「そうかな…」

「なんの問題もありません」

 と、九王沢さんは天下御免の天使の笑みで押し切るのだった。


 そして僕たちはついに、ホテルに泊まることになった。入ったのはもちろん、ラブホではない。横浜港が間近に見える観光客用のホテルだ。そこは僕が九王沢さんを見つけることが出来た場所からほど近いところにあったのだ。

「先にチェックインしておいたのでコンビニで買い物をしてたんです。那智さん、まだお酒飲むかな、と思って」

 と、九王沢さんはお酒を乾きものを買ったビニール袋を掲げて見せた。

 これ、じわっときた。九王沢さん、僕にあれだけひどいことされたのに、自分は手配したホテルで段取りをとって、僕が戻ってくるのをずっと待っていてくれたのだ。元・特殊部隊なSPがいるとかあんなにお嬢様なのに、なんていい子なんだ。

 ちなみに部屋はダブルを一室。え、僕たち夫婦じゃないよ?いや、待て。ベッドが二つあるってことは、九王沢さん的には夜は別々に寝る、ってこと、だよね…?

「飲み直しましょう。ここなら酔いつぶれても後は寝るだけですから」

 九王沢さんはお酒の用意をしながら言った。ルームサービスも頼んでくれたのか、アイスペールにグラスまで置いてあった。

「まだ、わたしたちのお話は終わっていませんよね?」


 それからは本当に色々な話をした。テレビをつけてみたり、他愛もない話をしながら、九王沢さんとずっと話し続けた。焼酎のボトルも買ってきてくれたのだが、飲んだのは彼女と同じお酒だった。

 九王沢さんが選んだのは、ウイスキーと並ぶヨーロッパの地酒、真水のように透き通ったジンだ。円筒形のダンジョンに頭から尻尾まではまり込んだドラゴンのロゴ。一八七五年創業のギルビー社のジンだった。

「このデザイン、個人的に好きなんです」

 まるでハンドガンの銃把のように無骨で肉厚なガラス瓶のデザインに、九王沢さんは並々ならぬ愛着があるようだった。

 ちなみにジンと言えば、近代労働者のお酒だったとされる。

「イギリスでは不道徳の象徴、と言うイメージがありますね」

 イギリスに持ち込まれたのは十七世紀に入ってからだ。安価で製造・入手出来るせいか、ジンは永らく貴族階級や表街道を歩く資本家たちからは敬遠されてきた。マティーニやギムレットなど誰もが知ってるカクテルに使われることでも分かる通り、強いアルコール度数の割に口当たりのいいお酒なのだが、そのポピュラーさが仇になったのだろう。

 ちなみにジンはウイスキーと同じ、麦を原料の一つとしている。口にしたとき香る、レモンに近い柑橘系を思わせる匂いは、セイヨウネズの球果によるものらしい。ヨーロッパでは本来、癖の強い野生獣肉(ジビエ)料理に使う香辛料なのだと言う。

「しかし、かの地ではジンも紛れもない『精霊』のお酒なのです」

 アルコールを純化するために余計な不純物を気化させて作った強烈なお酒を、蒸留酒と言うが、英語ではこれにスピリッツと言う表現を使う。spirits,大地に住まう精霊を意味する言葉と同じスペルなのだ。

 そもそもラテン語では、『大いなるものの息吹(いぶき)』を意味するのだが九王沢さんによれば、今日、良くも悪くも世界中に存在するお酒は、人智の手を介しながらも結局は神の手に委ねられた、人と神の間で育まれたいわば私生児なのではないかと言うのだ。

「そう言えば世界でもっとも多くの文化圏で飲まれているとされるワインも、人が『作った』ものでなくシュメール語で『出来た』が語源と言います」

 この辺りは酒に神意が宿るとし、神棚を祭って奉納の文化を固持し、現代科学が発展した今でも酒は神の『授かりもの』であるとする文化を守る日本の酒造りにも通底する。

 日本語で酒は、『(かも)して』作るものとされる。

 そこにある空気や雰囲気を醸し出す、と言う表現としても使われるように、醸す、と言うのは計画通りの完全な製品を、間違いなく産み出す、と言うものでは決してないのだ。

 極端なことを言えば、世界中のあらゆる酒は、同じ酒であっても、わたしたち人間のように年々違う顔ぶれが産まれ、その年に産まれたものと全く同一のものは厳密には二度と産まれないと言ってもいいのだ。

「生まれてきたその違いを、これほどに感謝して愛する世界共通の文化は他にないのではないでしょうか」

 九王沢さんが言うワインにしても、ボジョレーヌーボーに代表的だが、お酒の原料となる農作物の産地はシーズンには大々的にその年の酒が大地に産まれた感謝祭を行うことになっている。

 例えばもし、現代の醸造学(じょうぞうがく)や分子生物学が十全(じゅうぜん)(完全でぬかりがないもの)であるとするならば、地霊に感謝することを目的としたこれらの祝祭や信仰は、これから全く必要のないものだと言うことになる。

 どころか、あらゆる文化圏の人間の嗜好(しこう)に通底する、ただ一つの酒が存在するならば、飲酒の文化と概念は洋の東西を問わなくなるのだ。人類を超えた人工知能が産み出す、世界で唯一のいわば神酒(ソーマ)が誕生するならば。それがこの世で無二(むに)(他には存在しない一番)の酒だとするならばだ。人智の及ばぬあらゆる疑問に解答を出してくれる人工知能が誕生したならば、自然現象を(たの)みとしたあらゆる酒文化は、理論上不要になるはずだ。

 でもこれ、酒飲みとして考えてみれば、これほど寂しい話はないと思う。

「イエスかノーか。不全か、完全か。必要、不要か。わたしたちは果たして、その二元論で全てを決めて本当にいいんでしょうか?」

 まるでそれが完全に唯一無二であるかと思えるような美しい眉をひそめ、九王沢さんは僕に、訴えかけるのだ。その言葉は強く、確実に僕の中の不全を溶かしていった。

「わたしたちは相対的に、調和的に考えるからこそ、想像力を発揮させることが出来たんではないでしょうか」


 ちなみに当時の厳格なキリスト教の階級社会から飛び出して、日本に大地に住まう精霊の本来の姿を求めてやってきた男が一人いる。

 それがラフカディオ・ハーン、日本名は『小泉八雲(こいずみやくも)』だ。

 のっぺらぼうや、ろくろ首と言った、今では日本人なら誰もが知っている日本の妖怪を生み出した八雲は、大地の精霊が息づくケルト文化の中で産まれた。この小泉八雲こそが、九王沢さんが日本にやってきた本来の研究の対象なのだと言う。

「八雲にはすでに文字によって学ぶ前から、自分の周りに確かに存在する精霊の姿が見えたと言います」

 それが周囲の人との感覚の違いに、ただただ戸惑う思春期を過ごさせたようだ。

 プロテスタントにして軍医少佐だった父と、地元でギリシャ人系の名士だった母親に育てられたハーンは地元で有力な神学校に入学させられ、生まれ持ったその感性を尊重されるどころか強制的に矯正されそうになったのだ。

 ちなみに彼が名乗ったラフカディオ、と言う名前はファーストネームではなく、生地だったレフカダ島から採られたものだったのだが、キリスト教の聖人になぞらえてつけられた、パトリックと言う本名を彼は生涯、忌避したためだとされる。

 無論、それほどに躍起になってキリスト教そのものを否定したのではない。彼は自分の生まれた感性にあった地霊を愛し、求めたがこそゆえ、いわば本能的に日本に渡ったのだ。

「神学校から逃げ出した彼は考え続けます。那智さんが話してくれた、ゴッホのように。自分が生きるに適した場所を求めに求め続けて、彼はついに江戸期からの迷信の闇がまだ冷めやらぬ、明治の日本にたどり着くのです」


「この日本には、私が幼い頃にみた精霊たちがいる」

 八雲はことごとに、周囲の人にその感動を語ったと言う。自分は白人など見たことない日本人の農民たちに、本当は化け狐で、裸になったら尻尾が生えてるんじゃないか、とまで疑われ、入浴までのぞかれてなお、である。

「ケルトの自然信仰と、日本の古神道には共通点があります。彼らはいずれも今ある自然の風景を愛するばかりではなく、自分が気に入った風景を、手をつけずに尊重しますよね?」

 近代世界の植民地主義を反映し、偶像崇拝の気配さえまとった神道の本来は、ごく素朴で単純な精霊信仰(アニミズム)である。

 それは例えば今の僕たちで言えば、気に入った風景を写メしてずっと保存しておきたくなるようなごく分かりやすい感動から発生したものなのか。

 つまり洋の東西を問わない、古き信仰の風韻とは。

 他を圧する征服理論を持たず、いたずらに唯物偶像主義を主張せず、世界が相対的に在ることを望む、人類がお互いに自分が住まうのと違う世界を認知し、相対的に考えたからこそ獲得した平和への祈りなのではないか、と九王沢さんは言う。

「古神道の考え方は違う宗教世界の違う行為にこめられた同じ祈りへも、つながると思います。鹿児島、出雲、熊野、奈良、まだ、それと知られた地ばかりですが、わたしは日本の人がそれと尊重する、愛された神の宿る風景がある場所に行きました」

 九王沢さんが言ってるのは僕たちの間でも話題のパワースポットと言われる場所ばかりだが、本来地霊の住まう土地は、日本のそちこちにある。日本の田舎家が点在する区画の一角、地元で管理を任された宮司や有志の人たちが、季節のことごとの行事の中で清げに保ってきた、それこそが本邦の精霊が住まう場所なのだ。

 そこにあるのは数百年年経た森の大木、または河川の痕、そして僕たちが生きる世界を途絶さえさせる河岸を象徴する大きな海に臨む岬の風景。

「そこへ行って思いました。旅行に行って携帯の写メやデジカメで風景を撮る人って、海外共通ですよね。わたしたちは皆昔からそうやって、そういう場所に出会ったら気に入った風景を必死で心に保存しておくんです。古くからあった信仰のやり方でも、その場で思って構えたカメラや写メでも。方法は違えど、気持ちの出発点は、同じことではないしょうか。わたしたちが気持ちを留めるのは、何らかの形でそこに気持ちを『とっておく』ことで実現するのです。なぜなら愛することで、そこに自分が生きている、これから生きるわたしたちの人生への祈りがこめられているから」

 九王沢さんは自信たっぷりに言う。

「だからこそ、わたしたちは彼岸(ランズエンド)でだって、ちゃんと繋がってるはずなんです」


 ここまで話した時点で、すでに午前二時を回っていた。眠らない開港、横浜と言えど、今は束の間の静寂に沈む時間帯だ。

 それでも全く眠気を帯びない僕たちは、まだずっと話し続けていた。話の跡切れに気まぐれな静寂が訪れるのを恐れるまでもなく、お互いの下手な気遣いが、相手の気持ちを(くじ)くことを危惧(きぐ)させるまでもなく。そうして僕たちは、どちらからともなく、言語で表しがたい共感を、言語によって結びつけようとしていた。

 午前三時になろうとするときだ。

「わたしそろそろ、那智さん自身の、本当のことが聞きたいんです」

 ついに言うと九王沢さんは僕にあの小冊子を預けてきた。僕の最低の駄作、『ランズエンド』が掲載されたあの会報誌だ。

「これ…」

 さすがに尻込みした。

 僕はちゃんと、こいつと向き合って九王沢さんと話が出来るのか。

 今もって判らない。

 確かにまだそこにあるはずの気持ちと言葉の容量への不均衡を、僕ははっきりとまだ心の中に感じてはいた。でもそれは不思議なことに、折角ここまで寄り添ってくれた九王沢さんを前にしたなら、その提案を蹴るほどに、不可解でいて頼りないものではなくなってきているのだ。

 僕は即座に決意した。

(話そう)

 それしかない。

 いやむしろ、僕は語りながらでこそ、九王沢さんと向き合わなくちゃならないのだ。

 論理と直感を積み重ねて、地の果てから。

 こんなていたらくの僕にまでたどり着いた、九王沢さんのために。

「じゃあ、まず、二人で読み合わせをしましょうか。いつもする、サークルの合評会みたいに」

 初めからそのつもりで用意してきたのか、手提げの中から九王沢さんはいそいそと同じ一冊を取り出す。それから本当に嬉しそうに身震いすると僕の隣に座りこんだ。そこはベッドの傍、カーペットの上のほんの狭いスペースだ。

 テキストを持つ自分の肩越しに、九王沢さんの存在が確かにあることを感じ、思わずそれが信じられないように見返すと、彼女はその驚愕ごと受け止めようとするように、ふんわりと笑った。

「読みましょう」

 そんな九王沢さんに言われて。

 僕は実際はそこに存在しない、二度と開くことはないはずのないその一ページ目を、心の中で開いたのだ。

 全く、何から何まで九王沢さんの言う通りだった。

 この世ならぬ彼岸(ランズエンド)に、僕は確かに自分自身を置いてきたままにしてしまっていたのだ。

 今、そこへもう一度。

 僕はもう一度、物語をこころみた。


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