不法侵入系乙女2
「不法侵入系乙女」の続編です
よかったら感想・評価待ってます。
相変わらず教師設定は活かされません
俺にはストーカーがいる。
勿論、一人称が俺な女の子な訳ではなく立派な男である俺にだ。ちなみにストーカーの性別は女。同性愛者ではない分だけマシ?なのだろうか。
それに美女である。
そう、美人だからこそ俺は対処に困ったりしているわけなのだ―――
…………妄想では無いということだけ弁明しておく。
「ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!!!!」」」
体育館に響く部員達の声に俺も「お疲れ」と労ってからシューズを脱ぐ。
モップがけをしている一年生の邪魔にならない場所で軽くストレッチをこなしてから体育館から出る。
「戸締りは俺がしておくから片付けてさっさと帰れよ」
いつもの確認事項に部員達各々が返事をして先輩から次々に部室へ戻っていく。
年功序列と言うほどではないがモップがけなどは一年の分担なので必然的に後輩達の帰宅は遅くなってしまう。
流石に仕方ないことだが、女のマネージャーしかいないとこういうときは不便だとあいつらは思うことだろうな。
それでも、女子マネージャーがいいと思うことはそういうことなのだろう。
むさ苦しい男子よりも清涼剤となる女子がという純粋な欲望だ。
うちの学校では男女で最終下校時刻が異なっている。女子の方が早くなっているのは、太陽も沈んだ頃に女の子が出歩いてて危ない目にあったらどうするんだという意見かららしい。
実際、稀にではあるが変質者は出没することもあるので納得するしかない。
故に女子マネージャーは男子が練習中に抜けなくてはいけないので準備はともかく片付けは男子がやらざるおえないのだ。
別に男子のマネージャーもスカウトすりゃいいのにとは思わないでもない。
次の日の授業準備などの雑事も終えたので帰宅することにする。
駅のホームで電車を待ちながらスマフォをいじっているとまた頭痛がしてきた。
【新着メール95件】
【着信42件】
そして、とどめのLINEの通知が尋常ではない数である。
留守電まで入れてあるようだが、見たくも無い。
ここ最近の日常に頭痛は酷くなる一方だ。
今からおよそ2週間ほど前のことだ。
俺の家に不法侵入してきた挙句、新婚ごっこを繰り広げようとしたアホなストーカーが現れた。
ストーカーとは陰から好きな人を見つめたり、カメラ仕掛けたりするような奴だと言う俺の中の勝手な定義は堂々と目の前に現れたその変態の手によってあっさりと崩れ去った。
なんとも恐ろしいことに俺のプライベートをほとんど知っていやがったので立派なストーカーということになるだろう。
警察に通報すればよかったと思うが、なんとなくそれは躊躇っててしまう。
理由は簡単だ。
美女だ。それも好みドストライクの。
その上、自分にめちゃくちゃ言い寄ってくる美女。
最早、最低だとは思っても心が通報は勘弁してやるかとか勝手に決め付けてしまう。
これが、ブスなら通報したかもしれない。
いや、ぶっちゃけした。
男でも女でも見た目より中身と言うが、見た目がいいとスタート地点が有利になるのは間違いないなと身を以って痛感した瞬間だった。
でも、やっぱり頭のネジは緩い、というか吹っ飛んでる。
しかし、俺のことがヤバいレベルで好きとか嬉しいに決まってる。
なんだかんだで絆されて通報もせずにメアドとかを教えたのが運の尽きだったのかもしれない。
あれ以来、メールも電話も俺が起きている間はずっとしてくる。携帯はマナーモードなのでずっとバイブがヴーッヴーッと振動している。
そう、起きている間はだ。
俺がベッドに入って本気で寝ようとするとピタッと鳴り止む。しかし、寝たフリだと鳴り続ける。
こえーよ。
下手に鳴り続けてるより何十倍もこえーよ。
本気でいらない気遣いだ。
他にもっと気が遣えるところはあるだろ。
不法侵入はだいたい三日に一回位と遠慮してるのかしてないのかよく分からない頻度だ。
気遣いとはなんだったのか分からなくなりそうだ。
そうこう考えてるうちに家に着いた……着いてしまった。
電気は点いていないようだ。
彼女が来たのが4日前。つまり、今までの周期からするといるはずである。
家の目の前まで来ておいてここまで帰りたくないと思う社会人も珍しいだろう。
葛藤も一瞬のこと。大丈夫、いても美女だと考えろ、問題は無い。
自分に言い聞かせるように繰り返して鍵をゆっくりと開ける。
そして、ドアに手を掛けてゆっくりと開けていく。恐いので目を瞑りながらになってしまっている上にへっぴり腰の自分はさぞや滑稽に他人の眼には映るだろう。
「おかえりなさい、あなた」
暗闇から声だけが聞こえた。
「―――――――――――っ!!!!!!」
声を上げないように意識しすぎてずっこけた。まさに声にならない声とはこのことだ。
「あなた?」
心配するように掛けられる声は目を閉じっぱなしでびびりまくっている俺には追撃にしか感じられない。
「あ……藍彩。勘弁してくれ、心臓が止まるかと……」
「すいません、電気は不法侵入なのに点けちゃダメかなって思ったんです」
「その前に不法侵入はしちゃダメかなって思えよ!」
不法侵入には慣れないものだ。毎回、死ぬんじゃねぇかって位驚く。
訂正、慣れたら終わりだ。
「それより、早く上がってください。ご飯できてますよ」
「それよりってそんな些細な問題か!?不法侵入って!」
何も言わずに奥に行く彼女に俺はなんか負けた気がした。
ご飯、美味しかったのが本当に悔しかった。
「なぁ、いい加減不法侵入止めろよ」
「いやです」
にべもないその返事に俺は少し大きな溜息をついた。
そんな返事をした当の本人である藍彩十和はカチャカチャと食器を洗って片付けている。
そんな動作ももう慣れたようでまるで自分の家で食器を洗っているかのようなスムーズさだ。一応、俺がやるとは以前言ったことがあったのだが、自分がやると頑として聞かなかった。
『家事って妻の仕事ですから』
そう言って、台所から退くどころか押しのけられた。
最近は家事も夫婦で分担するんだ、と言ってやっても聞き入れなかった。
『家事のデキル女ってポイントアップだと思いませんか?』
確かに出来て欲しいけども。
そんなこともあって、このおよそ2週間でこの女は言い出したら聞かない強情女ってことが分かってきた。
よって、不法侵入を止めろと普通に言っても聞かないことなどお見通しである。
ここからが正念場だ、と気合を入れて深呼吸をする。よし。
「そうか、それは残念だ。せっかく合鍵をお前に渡そうと思っていたのに」
ピタッと藍彩の動きが止まった。
ここで不用意に間を置いたら俺の負けだ。彼女が何か言う前に全て言い切ってから迎撃する。
「ほら、不法侵入してくるような人って信じられないだろ?それに、俺は信じるに値しない人間なんかに合鍵なんて渡したくない。最近の藍彩は侵入してこなくなったからちょっと悩んでいたんだがな」
残念だ、とでも言うかのように溜息をつく。
藍彩が何か言いたげな表情をしているので、更に言葉を続ける。
「まぁ、今日の様子を見る限りやめる様子は見られないからやっぱりダメだよな」
決まった、完璧だ。
これで藍彩も反省して泣きついてくるかもしれない。そしたら、後は簡単なことだ。今までのストーカー紛いの奇行をやめるように諭せばいい。それに承諾したら頑固な彼女はきっと奇行を起こさなくなるだろう。そしたら、頃合を見計らって告白して普通の清い男女交際をしたらいい。
彼女のことは決して嫌いではない。むしろ好きな部類だ。2週間は俺に彼女の好意を理解させるには十分すぎた。疑ってたわけではないが。
そこまでの好意を寄せて貰って答えないのも失礼な話だ。
そうやってこれからの事に思いを馳せている俺は一瞬で現実に引き戻されることになったのだった。
「嬉しいです」
ポツリと呟かれたその言葉を俺は聞き取れなかった。
「ん?」
「もうわたしたちの未来を考えて下さっていたなんて嬉しいです!!」
「げふっ!!?」
いきなり突進してきた彼女の頭は綺麗に俺のみぞおちに突き刺さった。
そのまま俺を抱きしめ始めたので男として嬉しい状態にはなっているのだが、今の俺にはその感触を楽しむ余裕は存在しなかった。
「…………何をする」
「合鍵を下さるなんてもうわたしのことを認めてくれたんですね!わかりました、これからは毎日来ます!通い妻って奴なんでしょうか。すばらしい響きだと思います!」
辛うじて紡いだ俺の言葉は意味を成さなかった。
何も言えない俺にどんどん彼女は話を広げていく。
あぁ、なんて浅はかだったんだろう。出会ったその日から知っていたはずだったのに……この暴走女がまともに話が通じる人なんかじゃなかったってことくらい。
こいつ、俺が合鍵を渡そうと思っていたのにって過去形の言葉を脳内で勝手に合鍵を渡そうと思うって現在形に変形させやがった。
……どうにも付き合うかどうかって話はまだまだ先の話になりそうだ。
「式はいつがいいですか!?」
「しねぇから!!」
いや、俺が本気で抵抗しないと一瞬で終わりそうだ。
設定
教師の人
主人公・24歳・男
名前は考えてない
ストレートで教員採用試験まで辿り着き、なおかつ合格した頑張りもの
ちなみに趣味というのは二次元関連
かなり重症
昔は気弱だったが生徒に好かれて、舐められないようにと頑張って矯正した
趣味を隠すのは生徒にばれて舐められたくないから
藍彩十和
二十歳・女・ストーカー・ヤンデレ予備軍
とにかく主人公大好き
割と完璧超人な子
感想・評価いただけたら幸いです。
あと主人公の男に名前のアイディアあったらリクエスト欲しいです
ありがとうございました