もしホラーサスペンスを好物とする変態未確認生命体が純粋なロリを描いたら、
これあげる
以前書いた『誘拐』という短編が、思いの外多くの方に閲覧していただけたため第2弾をやろう!!と思いましたが無理でした…これはもう“ロリもどき”ですらありません。
友人が“パン(ツ)ちらシーン”をリクエストしてくださったため、入れてみたのですが…異物でしかありません。
こんなものでも見て下さるという方、ありがとうございます。
では、『これあげる』をよろしくお願い致します!!
ちょっと前に仲良くなった頼子ちゃんに、最近嫌気がさしてるの。
今は6月の半ば。いくら人見知りの激しい私でも、流石にクラスに馴染めてきたわ。もちろん、頼子ちゃんは私よりそれがずっと早かったけどね。始業式の3日後には沢山の友達に囲まれていたし、今じゃすっかりクラスのムードメーカーとしての役割を担っている。勿論それは持ち前の明るさと人懐っこさあってのもので、私だって納得せざるを得なかったの。でも、最近そんな頼子ちゃんを図々しくて意地汚く思うのよ。
頼子ちゃんは人の親切に謝意が足りないの。特に何かを貰う時とか。自分を女王様とでも思ってるのかしらって言いたくなるような態度なのよ。
最近2人きりで放課後に遊んだりするんだけど、酷いのよ。お菓子をあげたときなんて、握ったゲーム機から目も離さないでパッケージに手を伸ばしたの。それから口に入れて飲み込んだ後に「ありがとう」って独り言見たいに呟いたわ。勿論小心者の私につっかかる事なんて出来なかったんだけどね。
でもね、たくさんの友達と一緒にいるときは絶対にそんな冷たい素振りは見せないの。ただただ屈託のない笑みを浮かべて、あまーい声でしゃべっているのよ。
まぁ、どこにいたって誰といたって根本的な性質は変わったりしなかったけどね。「あげる」って声が聞こえたら誰彼構わず飛びつくもの。唯一私と2人きりの時と違うのは…そうね、リアクション。差し出された餌を食らう前にパッチリ二重の目を更に大きくして口に手を当てるの。それからこういうのよ。「え~っ!!いいの!?よりなんかにあげちゃって…」ってね。“だめだ”なんて言わない…本当は、頼子ちゃんにはそれが分かってるのよ。それでも必ず言うの。あいさつみたく癖になってるのよね。最近なんて頼子ちゃんが使う一人称の“より”を聞くだけで寒気がするの。
いつかガツンと言ってやる!!そう意気込みながらも何一つ行動に移せない日々が続いたの。
今朝、起きたら頭が痛かったの。それに体中が燃えてるみたいに熱い…。だぼついたピンクのフリルパジャマを脱いだら、今度は寒気がしたわ。頼子ちゃんの声を聞いたときよりももっと強い寒気よ!!立ち上がったらふらふらしたの。ふと先生が「学校で風邪が流行っています」って言ってたのを思い出したわ。まさかと思って体温計を脇に挟んだら、あっという間に“37.75”の数字が表示された。ピー、ピーって検温終了の音がなる頃には38℃を越えていたの。もう一度パジャマを着てから、ママに言ったわ。そしたら、すぐに学校に欠席の連絡をいれてくれたの。
それから30分後くらいにママは出かけて行ったわ。今日はどうしても外せないお仕事があるらしいの。帰りは6時過ぎるって言ってたけど、お粥とかも作り置きしてくれたから何の問題も無かったわ。
ふと鏡に映った自分の顔にびっくりしちゃった。いつも白かったほっぺたが真っ赤になってたの。こんなに赤くなったのは、大好きな健太君の前でスカートがめくれちゃったあの日以来だわ。すごく風が強かったの。大好きな健太君とのおしゃべりが楽しくて、油断してたらふわってスカートの裾が広がってそのまま…。あの時は本当に半泣きだったもの。思わず顔を手で覆ったわ。本当はスカートを抑えなきゃいけなかったその手で。でも健太君優しいのよ。丸見えだったはずのパンツのことなんて無かったかのように、面白い話の続きを再開してくれたの。
いけないいけない。思わず思い出に浸ってしまったわ。といっても、あれから半年くらいしか経ってないけどね。改めて鏡を覗き込んだら、目が潤んでいたの。あの日の私が見事に再現されていて、思わず笑っちゃったわ。
でも直ぐにまた眠気に襲われて、布団にバッタリと倒れ込んだの。
気が付くと昼の1時を回っていたわ。今日は4時間授業のはずだから、もうすぐ帰りの会が終わるって頃ね。
額に手をあてると、ちょっぴり湿っていたわ。汗をかいたみたい。相変わらず身体に熱がこもってるみたいだけどね。熱をまた計ってみたら38度を切っていたわ。それに大分寝ちゃったみたいで、凄く頭が冴えてる。これじゃしばらく眠れそうにないわ。
さて、退屈になってしまった私はテレビをつけることにした。平日のこの時間にテレビを見られるチャンスなんて、そうあるものじゃないわ!!この間見損ねちゃった“魔法少女●リカルなのはstrikerS”の再放送をやっているかもしれないわ!!
期待はチャンネルをまわす度に小さくなっていくの。もう3周はしたように思われた。画面の中ではどこにでも居そうなおじさんが難しい言葉を並べてたわ。のっぺりした平坦な口調だったから、なんだかお経みたいなの。目も潤んできたから消そうと思って、テレビの側面にある電源ボタンに手をかけたわ。そしたら突然、おじさんの言葉が電撃みたいに頭に流れてきた。“あげる”、確かにおじさんはそう言ったの!!引き上げる、繰り上げる、押し上げる…どんな意味で使った言葉かなんか解らなかった。ただこの3文字だけが頭の中を反響していたわ。
良いことを思いついた――。
くいっと口角があがるのを感じた。
あぁ、きっと今私すごい悪い顔してる。
心臓の鼓動がうるさいのは、ここが静かだからでも、風邪で熱に浮かされているからでもないのよ。
私は迷わず受話器に手をかけた。
プルルルル、プルルル――、
随分と長いコール音が続いている。お互い電話番号を把握しているんだから、無視するはずはない…と思う。どこかへ出かけたゃったのかもしれない。諦めて受話器を戻そうとしたその時…
『もしもし』
いたいた!!
「莉音だけど…頼子ちゃん?」
『なんだ莉音かぁ!!てっきり莉音ママからかと思って緊張しちゃったじゃない。莉音から電話なんて珍しい。どうしたの?』
風邪の心配はしないのか、など一瞬頼子ちゃんに優しさを期待しちゃったのは内緒の話よ。
「ごめんね。あのさ、今日お家に来ない?熱下がってきたら退屈になっちゃって…」
嘘だけどね。さっきまでテレビを見ていたせいか、むしろ上がり始めているわ。
『莉音からのお誘いなんて珍しい。どういう風の吹き回しよ?』
「お菓子がいっぱいあるの。それに――。」
『それに?』
興奮で声が上擦りそうになる。なんとか平静を装って言葉を絞り出したわ。
「あげたいものがあるの」
『あげたいもの?』
当然のオウム返しに、思わずひるみそうになっちゃった。
「来てからのお楽しみよ!!」
いつになく強気な私に不信感を抱くのは当たり前なのかもしれない。
『分かった、すぐ行くわ。』
受話器を置く音がした。プー、プー。無情な音を聞きながら、先ほどの会話の余韻に浸ったわ。達成感でいっぱいだったの。でも問題はこのあと。気を引き締めて受話器を下ろした。
ピンポーンピンポーン。
来た。38度の熱があるなど決してバレちゃだめ。精一杯の明るい声と笑顔で頼子ちゃんを招き入れたわ。
案の定、頼子ちゃんは身体1つでやってきたわ。「熱は下がった」って言ったんだから、見舞い品を期待していたわけじゃない…と信じたい。しかもマスク1つつけてないの。無防備も良いトコ。
予め準備しておいたお菓子とコップ2つと麦茶を持って、私の部屋に向かった。無論、換気なんてされてないわよ。
座ると同時に頼子ちゃんは口をひらいた。
「ねぇ、“あげたいもの”ってなんなの?」
やはり病人を労る気持ちはゼロだ。私は全力の笑顔と人生初のマシンガントークで上手く交わしたわ。普段わりと大人しい方の私の勢いに、流石の頼子ちゃんも圧倒されていたわ。火事場の馬鹿力ってやつかしら。自分でも驚くほどに次から次へと言葉が口から溢れ出る。高熱で頭もクラクラしたけど、頼子の唖然とした表情を見ていたら辛くは無くなった。
ヘックション!!遠慮なくくしゃみをしたあとジュースの入ったコップに手をかける。一気にしゃべったものだから、口の中は完全に砂漠化してたの。頼子ちゃんはもう何度か口をつけているみたいで、コップの中のお茶は半分ほどになってた。私もコップのお茶を半分くらいになるまで飲んで、テーブルに戻したわ。うん、これで瓜二つね、コップも同じなんだから。
部屋の空気は二重の意味で完全に私のものだった。優越感さえ覚えたほどだもの。
さて、今度は頼子に話を振る。
「今日は学校どうだった?宿題とかは?」
はっきり言うとどうでも良かった。でも私は喋ることに疲れていたし、何より沈黙を避けなきゃいけなかったの。
頼子はそんな私の策略も知らず、やっと私の番かとばかりにしゃべりだしたわ。昼休みに起きたアクシデント、授業中の突然の説教……どれも右から左だったけど、うんうんと相づちをうったわ。しばらくすると、やっと頼子が席を外しだの。トイレだって。部屋の扉が閉まり、頼子の足音が遠くなるのを聞いたわ。そして私はコップに目をやった。緊張感も罪の意識も恐怖もない。ちょっと大袈裟かもしれないけど、殺人鬼の気持ちが分かった気がするの。
私は戸惑うことなく2つのコップをすり替えた。私のコップの飲み口を頼子の座っていた方に向けて、頼子のコップがあった位置においたわ。それから私は、頼子のコップの中身を一気に飲み干したの。
流石に身体に限界を感じた。だるい感じがしたし、頭も痛い。
トイレから戻ってきた頼子は、なんの疑いもなく私の飲み口に口をつけた。
それを一瞥して切り出したわ。
「ごめん、また身体だるくなってきちゃった。風邪移ると申し訳ないし…」
後者は真っ赤な嘘。思わずにやけそうになるのをなんとか抑えて続けた。
「そろそろ帰ってもらってもいい?」
今までの私からは考えられない言動だと思う。自分から誘って自分から打ち切る。
「う、うん。そろそろよりのママも帰って来る頃だし。」
私の潤んだ瞳を見てなのか、明らかに普段と違う私に困惑しているのか頼子はあっさりと承諾したわ。
「お大事に」
頼子もまた、普段とは考えられないような言葉を残して私の家から出て行った。
コップとお菓子を片付けて、布団に戻った。身体が鉛みたいに重くって辛いの。あっという間に、私の意識は薄れていったわ。 誰かが身体を揺する感覚に目を開くと、ママの顔が大きく映ったわ。びっくりしたぁ…呆気に取られてたら、ママが心配そうな口調で問いかけてきたわ。
「おかゆ全く食べてないじゃない。食欲ないの?」
おずおずと頷いた。取りあえず、お菓子を食べたことはバレてなさそうね。安堵した表情をなんとか隠すために、俯いて目を擦ってみたわ。
「じゃあ窓の閉まった家に、カラスさんが合い鍵を使って忍びこんできたのね。そしてお菓子を袋ごと盗んでいたってことね。そうなのね?」
前言撤回。バレてるわ、完璧に。優しい口調の裏にフツフツと怒りが沸き上がっている。
それでも私は動じないわ。更に嘘を重ねる。
「ごめんなさい、ママ。どうしてもクッキー食べたかったの…1枚だけにしようとは思ったのよ。でも、1枚食べたら止まらなくて……」
幸いこっちの嘘はバレなかったわ。それに、私が病人だからかあんまり怒られることもなかったの。
その後は、2人で仲良くおかゆを食べたわ。すごくおいしかった。
食べたあとはすぐに寝ることにしたわ。明日は絶対に学校に行きたいもの。絶対によ!!
朝起きたら、すごくすっきりした気持ちだった。熱も36度と上々よ。嬉々として学校に向かったの。
「えーっと、頼川さんは今日は風邪でお休みです。」
先生の言葉に、思わずガッツポーズが出そうになったわ。だって頼子がちゃんと“あげたいもの”を受け取ってくれたんだもの。嬉しくてにやけが止まらない。机に顔を突っ伏して笑いを堪えたわ。
“ザマアミヤガレ”ってね。
さて、放課後はどら焼きを持ってお見舞いに行こうかな。4日くらい前に買っておいたんだよね。
あ、でもちゃんとシールを剥がさないといけないわ。だってあのシールには書いてあるんだもの。
“今日中にお召し上がり下さい”ってね。
賞味期限なんて、
いちいち見ないよね?
閲覧ありがとうございました!!
駄文…とかというレベルではないですね……。文のまとまりの無さが以上です。
「頼子ちゃんに風邪菌でもあげようかな」という小さな悪戯心が、少女の腹を真っ黒に染め上げてしまった訳です。
小心者の少女が、ひと皮向ける様を楽しんで頂ければ幸いです。
貰い物には注意して下さいね(笑)