2、噂を
「やってみようよ」
「は?何が」
「だから、昨日言った、噂が本当かどうかよ」
「え?まさか……」
「そう、危機に遭ってみるのよ」
「本気?」
「うん」
「やりましたな、魔女殿。あの者たち噂を本気にいたしましたぞ」九官鳥がまたしても、ケキョ、ケキョ鳴きながら、魔女に話しかけた。
「そのようだな」魔女が、ニヤリと笑った。
「これで、あの方が許してもらえるか」九官鳥が、確かめるように魔女に聞いた。
「それは、難しい。この前、少年を一人やったばかりだからな。少なくとも、あと五人は必要か」
「さようか」九官鳥は大きなため息をついた。
「まあ、仕方あるまいな。もともとは、我らが悪いのだから」気を取り直したように言った。
「まて、カラス」魔女が言った。その言葉には怒りが混じっていた。
「魔女殿。何度言えば分かっていただけるのです。私は、九官鳥であって、カラスではありません」九官鳥の言葉にも、多少怒りが混じっていた。
「そんな事はどうでも良い。あの方を怒らせたのは、お前があの方に『のどに詰まった豆を、取っていただけませぬか』などと、ふざけたことを言ったからだろう!」
「ひっ。さようか。わたしは、てっきり魔女殿が、あの方から頼まれた事を(おつかい)忘れてしまったものと考えておりましたが」
「……………」
「………魔女殿?」
「忘れてはいない」魔女がぽつりと言った。
「魔堂に、買いに行ったのに売り切れていたんじゃないか!」
九官鳥は思った。
(この話、不思議な雰囲気から、ギャグの世界になってない?)




