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1、噂が
「ねぇ、知ってた?」
「何が?」
「噂よ〜、あの噂」
「知らない」
「危機に遭うと、魔女が助けてくれるんだって」
「ああ、あれか」
「しかも、魔法の言葉を教えてくれるそうよ」
「ふ〜ん」
クックックッ。
魔女が、笑っている。
「やりましたな、魔女殿。噂が立ちましたぞ」魔女の肩に乗っている、黒い九官鳥が言った。
「ああ、そうだな」
「愚かな人間どもめ、噂を信じて行動に移すがよい」ケキョ、ケキョ、ケキョ。九官鳥が鳴き出した。
「お前、その鳴き声何とかならんのか」魔女が顔をしかめた。
「すまない、魔女殿。昔、すずめにもらった豆を、のどに詰まらせましてな、いまだに取れなくての」
「人から物をもらうな。魔族の鉄則だろうが」
「それは、わたしが魔族に入る前の話しでして」
「だからなんだ」




