アース・ドラゴンとダンジョン·コア
ここマリアガ王国の王都から徒歩で8時間ほどの距離に、この惑星で最大最強のダンジョン。
サランドル·ダンジョンが鎮座していた。
王都が置かれる数千年も前から存在し、このダンジョンから人間たちが鉱物や魔獣からの素材を
得ることで付近の村が栄え……やがて町となり……やがて領となり、そして国となった。
マリアガ王国がこの惑星でも指折りの国家と言われるようになったのもサランドル·ダンジョンの
恩恵だと言っても過言ではない。
豊富な資源を獲得するために人間たちはダンジョンへと潜っていった。
下層へと行くにしたがい魔獣はより大きく強靭になり、魔法さえ行使するものまでが現れる。
下層の貴重な鉱物や素材を獲得するために人間たちの攻撃魔法が進化し、武器も進化していった。
そうして鍛えられた人間たちが近隣の領地に攻め入り領地を広げていったのがマリアガ王国の始まりである。
サランドル·ダンジョン最下層50階のボス部屋
サランドル·ダンジョンの長い歴史のなかで、この部屋の扉を叩いた者は一握りも存在しない。
そしてこのボス部屋の主を倒したものもついに現れなかった。
このボス部屋の主である“アース・ドラゴン”がその数千年にも及ぶ生涯を閉じようとしていた。
普段ならばボス部屋の最奥で鈍い光を放つ”ダンジョン·コア”が、アース・ドラゴンの目前で浮遊する。
「お前には世話になったな……いまさらだが、名前くらい付けておくべきだったな」
地面に伏せているアース・ドラゴンの口角がわずかに歪み、ダンジョン·コアが2回点滅して応える。
「そうか必要ないか?お前のおかげで長い生を退屈せずに済んだのだからな……感謝しているぞ」
ダンジョン·コアが1度だけ点滅する。
「さまざまな異世界を旅して、我よりも巨大な存在が居る世界があること、我らが存在することさえ
許されない科学の発展した世界があること今となってはすべてが楽しい思い出だ。」
アース・ドラゴンが苦しそうに重い咳をする。
「我が死んだら、このダンジョンはどうなる?伝え聞くように決壊するのだろうな……?
溢れ出た魔獣たちが付近の村や町を飲み込み更地へと戻す……のか?」
1度だけ長く点滅するダンジョン·コア
「そして世界各地から、このダンジョンの主となるべく強大な魔獣どもが集まってくると……
町どころか国までが更地に戻るというわけだな……すまんなこれまでのようだ。」
ダンジョン·コアが激しく明滅しアース・ドラゴンの眼の前で踊るように飛び跳ねる。
「……ありがとう……」
静かに目を閉じるアース・ドラゴンが最後の長い吐息を漏らす。
巨大な空間からすべての音が消える…………………
発光していた壁面もアース・ドラゴンの鼓動の消失に合わせ沈黙し、ダンジョン·コアの明滅だけが
唯一この空間が存在した証となった。
そして上階の魔獣たちは、生存本能という衝動に突き動かされるかのように我先にと地表を目指す。
何も知らぬダンジョン探索者である人間は魔獣たちの暴走に巻き込まれ多くが命を散らした。
永遠とも思える静寂が突然の終わりを迎える。
アース・ドラゴンの巨体が浮き上がり、反転しねじ曲がっていく……巨大な生物が獲物を咀嚼する
耳を覆いたくなるような破壊音……骨が砕け、筋が引き千切られ、筋肉が圧縮して弾ける音
アース・ドラゴンの身体を手で捏ね回すように玉へ……玉へと圧縮していく。
それは一瞬の出来事だったかもしれないし1年だったかもしれない……時間の概念など存在しない空間で
超·超高密度の球体……新たなダンジョン·コアが誕生した。
そして先代のダンジョン·コアに挨拶でもするかのように初めての点滅をすると、役目を終えた先代が
激しく点滅を始めその小さな身体に猛烈な勢いで、すべての大気を取り込んでいく。
巨大なダンジョンが一瞬で真空状態となり、先代のダンジョン·コアにすべて収束された後に一気に爆散し
上へ上へと向かって階層も壁も柱も何もかもを押し上げ地表へと向かっていった。
猛烈なエネルギーが空へと向かい噴き出されると、数kmにもおよぶ砂埃と粉塵が舞い上がる。
階層の無くなったダンジョンを上から覗くと、ただただ巨大な穴が口を開けていた。
そしてこの爆発の余波は、この惑星を包み込みサランドル·ダンジョンの再誕を伝えるとともに
先代ダンジョン·コアの蓄えられてきた莫大な記憶をも伝播するのだった。
その情報は魔獣たちが命を賭けるのに十分な魅力を備えており、力に自信のある魔獣たちがマリアガ王国
サランドル·ダンジョンへと向け歩みを始める。
そしてサランドル·ダンジョンの上空、噴煙が空を覆う中を空間に赤い亀裂が走り無数の小石が吐き出される。
それらは砂埃に混じり、地表へと振り注ぐのだった。
近隣の村では立っていられないほどの地揺れが襲い、サランドル·ダンジョンを見上げた村人が
「ダンジョンが噴火したーーーー!!」
そう叫びながら家族の元へと駆け出し、王都へと避難するための荷造りを始めるのだった。
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